不慮の事故
マッスルゴーレムコンテスト開催まであと二週間の事だった。その頃にはケントとアジューリアの身体もより大柄かつ力強さも併せ持った感じになり、ムスタンも様々な力仕事をそつなくこなし、このまま順調に行けば三人とも入賞は間違いないだろう。しかし、そんな彼らに思いもよらぬ悲劇が降りかかる事となる。
この日、ムスタンは採掘の依頼で坑道に赴いた。彼を見送った一行は普段通りトレーニングルームで訓練に勤しんでいた。その数h後の事だった。受付の女性型ゴーレムがジジョッタの元にやってきて、両眼を明滅させて彼女に何かを知らせた。受付の報せにジジョッタは大いに動揺した。
「団長、副長!わたくし、至急この場を外します!ユリア、あなたも一緒に!」
ジジョッタはケントとアジューリアにこの場を離れる事を伝え、ユリアに同行するよう伝えた。
「ケント兄ちゃんとアジュ姉ちゃんはどうするの?」
ユリアは二人が気になった。
「二人ならきっと大丈夫です。わたくし達がいなくても自主的に訓練に勤しむ事でしょう。」
「うん、そうだね!」
「では、失礼致します。」
「訓練頑張ってね~!」
「ああ。」
「ええ。」
ジジョッタはユリアと共にトレーニングルームを後にした。
「…何か大変な事があったのかな…?」
「とにかく今は…、訓練に勤しみましょう…。」
二人はいつも通り訓練に勤しんだ。
訓練を済ませた二人が伝言板に向かうとこう書かれていた。
『ケントAU団へ、受付までお越し下さい。』
「今日の事かな…?」
「ええ…、どこか気になるわね…。」
二人は即座に受付に向かった。
受付では女性型ゴーレムがELボードをケントに渡した。
「!!…え…、そんな…。」
「何て事…。」
ELボードにELメールとして出力された文章は二人、いやケントAU団にとって極めてショッキングな内容だった。
『団長、副長。あなた達に申し上げにくい事ですが、ムスタン様が採掘の依頼の最中、落盤事故に巻き込まれ右腕を失う重傷を負いました。わたくしとユリアは彼につきっきりでケアをする為、施設に戻ってこれないどころか大会の観戦も出来そうもありません。それで、比較的簡単な料理のレシピを書き記しておきます。それでは残りの二週間しっかり訓練に勤しみ下さい。あなた達に真の業を。ジジョッタ、ユリア。』
料理のレシピにはサラダスープとサラダソテーにフレッシュサラダの三点が書かれていた。
「アジューリア、ムスタンの事は辛いけど、二人で頑張ろう。」
「ええ、皆の想いを無駄に出来ないわ。」
二人は決意を新たに残りの二週間に臨むのだった。




