訓練開始
いよいよ来年のマッスルゴーレムコンテストに向けての訓練が始まった。
「…では…、行って参る…。」
「行ってらっしゃい。」
「行ってらっしゃいませ。」
「行ってらっしゃ~い!」
ムスタンは力仕事の依頼の為AU会館を出た。一同は彼を見送った。
「僕らは留守番だね。」
「ムスタンが仕事の間、わたし達はマッスルアーマーの訓練よ。もう一年でどんな身体になるのか楽しみだわ。」
ムスタンを見送った一同はトレーニングルームに向かった。
トレーニングルームには身体の特定の箇所を鍛える様々な器具があった。
「ここでのマッスルアーマーの訓練についてお話しします。まずは柔軟運動をしてから本題の訓練に移ります。但し、焔の里でした同訓練以上の負荷をかけます。そうしないと訓練の意味がありません。あと、訓練の終わりも柔軟運動をします。それから、わたくしが料理等で部屋を離れている間はユリアがあなた達を見張ります。絶対にごまかしはききませんので、心してお臨み下さい。」
ジジョッタはケントとアジューリアに訓練の内容と注意すべき点について説明した。
「はい。(ジジョッタも意外と厳しいな…、でも相手の立場を考えたら仕方ないね…。)」
「ふふっ…、わかりました。(ここまで徹底されると尚更頑張らないわけにはいかないわね。)」
二人は承諾した。
初日の訓練が終わり、ムスタンも仕事から戻って来て食堂でジジョッタの手料理で食事をした。彼女の手料理は野菜と魚に重点を置いており、訓練の後をしっかり考えた献立だった。
「うん…、美味しい。しかもマミーカフェよりも。」
「ええ…、わたし達の事を考えた料理ね。」
「…美味しい限りだな…。」
「ふふっ…、有難うございます。」
三人に感謝されて嬉しいジジョッタだった。ただ…、彼女は多く作り過ぎてしまったのだ。
「あっ…、作り過ぎてしまいました…。どうすれば…。」
「他の方にも分けるのはどう?」
ケントは他の人にも分ける事を提案した。
「悪くないけど、ただってのもちょっとね…。」
アジューリアは無償だと些か不当なのではと考えた。一同は食堂のスタッフに尋ねてみる事にした。
「作り過ぎた料理は小分けして一品5ゲルダでご提供下さい。ご提供の際は必ずこちらに届け出が必要です。また、売上も必ず台帳と共にご提出下さい。なお、売上の二割を施設に納める事になっております。」
スタッフの許可を貰った一同は喜び、他のAU達も金を支払って美味しくいただいた。
それ以来、ジジョッタの手料理が美味しいと館内の話題となり、奥ゆかしく見眼麗しい容姿と相まって彼女自身も館内の話題となっていった。トレーニングルームでユリアと共に二人を監視する様だけでなく、アジューリアの精悍で美しい身体にも惹かれ、トレーニングルームに来るAUも次第に増えていった。
そして月日は流れ、開催まであと二週間…、ケントAU団に思いもよらぬ悲劇が降りかかった。




