歯車騎士団
歯車騎士団本拠の応接室でケントAU団一行は歯車騎士団団長サターナと相まみえた。
「メフレックスの親書によれば、あなた達はこの歯車騎士団でAUとしての訓練を受けたいという事ね。」
「はい。」
「その訓練の内容として…、同封されていた書類にはうちが来年開催する予定のマッスルゴーレムコンテストの推薦状もあったの。対象はケント、アジューリア、ムスタン…、以上の三名よ。」
「マッスルゴーレムコンテストって…確かあの広場の二人から聞いたような…。」
「ええ…、でも…、何故わたし達が…。」
「…メフレックス殿が何故我々を推薦したかは…、大方見当がつく…」
「残りの二人については…、そうね…、例のイベントに参加する三人を支えて欲しいの。三人が最善を尽くせるようにね。」
「承知しました。」
「ユリア、良くわからないけど、ジジョッタ姉ちゃんと一緒に頑張る!」
「それで…、マッスルゴーレムコンテストとは一体どんなイベントでしょうか?」
ケントはサターナにマッスルゴーレムコンテストについて尋ねた。
「毎年恒例のロードガルドのイベントよ。日頃から鍛えてきた身体をアピールして競うの。身体だけじゃないわ。心も大切なの。『真の力は心ある者に宿る』、歯車騎士団の団訓よ。推薦された三人の身体を見た限り、まだまだ伸びしろがありそうね。開催される来年までしっかり鍛えておきなさい。」
「わかりました。喜んで参加します。」
「こんな素敵な大会に出られるなんて…、夢のようね…。」
「…出るからには…、最善を尽くす…。」
「このジジョッタ…、皆を支えます!」
「ユリアもジジョッタ姉ちゃんと一緒に皆を支える!」
一行はマッスルゴーレムコンテストへの意気込みを語った。
「ふふっ…、これで決まりね。では、AU会館に案内するわ。」
サターナは一行をAU会館に案内した。
ロードガルドのAU会館の受付にはやや細身で丸みを帯びた胸部をはじめ曲線的なフォルムのゴーレムが立っていた。一行は少し動揺気味だった。
「AU会館のゴーレムは殺伐感を和らげる為に女性的なフォルムなの。気になる事があったら彼女達に聞きなさい。では、わたしは公務に戻るわ。あなた達に土の加護を。」
サターナは女性型ゴーレムの事を説明した後、一行に一礼して公務に戻った。
ケントは受付の女性型ゴーレムに尋ねた。
「会議室を使いたいのですが、宜しいでしょうか?」
女性型ゴーレムは両眼を明滅させた。
「『ご案内します』と仰せです。」
ジジョッタは女性型ゴーレムの意思を一行に伝えた。女性型ゴーレムは一行を会議室に案内した。
一行はAU会館内の会議室を借りて、マッスルゴーレムコンテストの訓練について話し合う事にした。
「まず、このAU会館内の設備について調べてみたところ、生活に必要な設備は勿論、トレーニングルームと購買部に自炊用厨房がありました。トレーニングルームについてはシュバリア族に対応しておりませんので、ムスタン様には…、採掘や鍛冶等の力仕事の依頼で鍛える事になります。購買部には各ガルドの食材が定期的に流通しているため食には事欠かないでしょう。自炊用厨房もありますので、トレーニングのメニューや食事に関する事はわたくしとユリアにお任せ下さい。」
ジジョッタはAU会館内の設備について一同に説明した。
「僕らは焔の里で受けたマッスルアーマーの訓練をこなせばいいんだね。」
「ええ、これだけサポートされたら応えないわけにはいかないわ。」
「…依頼で鍛えるか…、それも一興だな…。」
「うん!ユリアに任せて!」
こうしてケントAU団のマッスルゴーレムコンテストに向けた訓練が始まった。果たして三人は入賞を果たせるのか?




