広場の二人
ロードガルドはケイブガルド同様陽の当たらないガルドで、森林資源に乏しく、作物も育たない過酷な環境だが、鉱物資源に恵まれおり、鉱業や工業等の重産業が盛んである。中でも目玉はゴーレムで、ゴーレムを扱うにはその技術を管理する歯車騎士団の許可が必要という、いわゆる『狭き門』だ。
ケントAU団一行はロードガルドのシーマヘイムの歯車騎士団に向かう途中、職人街のあるグランヘイムに差し掛かった。
「この職人街の先に歯車騎士団の本拠があるのか。」
「あちこちに響き渡る槌の音が心地よいわね。」
「…ケイブガルドよりはましと言うべきか…。」
「街の中…、という事は…、ユリア、ムーンエムブレムでELアビリティ『サイコカムフラージュ』を!」
「うん!サイコ…、カムフラージュ!」
ジジョッタはユリアに自分の肌の色を生前と同じ色に変える闇属性ELアビリティ『サイコカムフラージュ』を唱えるよう促し、ユリアはムーンエムブレムをかざして唱えると紫色の月の形の閃光が発生した後、肌がニュートラルと同じ色になった。
「これで安心して街に入れます。」
「うん!街の中ってワクワク~!」
一行は街の中に入って行った。
ケントAU団一行が街の広場に差し掛かった時、小柄ながらも屈強の老人二人が何か言い争っていた。
「今度の『マッスルゴーレムコンテスト』の優勝はわしが頂くわ!」
「何を!今度こそわしが優勝してみせるわ!」
二人が睨み合っている傍ら一方が意表を突くように人差し指を横にさして何かを言い放った。
「あっ、ゴーレムだ!」
「何っ!…うっ…。」
相手にゴーレムがいると言われて指さした方向を向くとケントAU団一行の姿が見えた。二人はムスタンの大柄かつ屈強な身体にゴーレムのような威圧感を感じた。更に、両脇にいるケントとアジューリアも自分達より比較的大柄かつ精悍な身体である事も拍車をかけていた。一方が一行に声をかけた。
「お、おう、あんた達!今度のマッスルゴーレムコンテストに揃いも揃って参加して賞を総なめしようって腹かい!?」
「マッスルゴーレムコンテスト…?何ですかそれは…?」
ケントはマッスルゴーレムコンテストが気になった。
「良くぞ聞いてくれた!マッスルゴーレムコンテストとは、日頃鍛えた肉体を皆と競い合うロードガルドのイベントじゃ…」
「皆行ってしまったようじゃ…。」
「!…なっ…。」
ケントAU団一行は関心なしと言わんばかりにそそくさとシーマヘイムに向かって行った。
「まあ、一行は参加せずという事で、優勝の倍率が上がらずに済んだって事じゃな…。」
「ああ…、…って…、お前さんにだけは負けぬぞ!覚えておくがいい!」
シーマヘイムの歯車騎士団本拠の正門には二体のゴーレムが門番として護っていた。それぞれのゴーレムの左胸には橙色の歯車の紋章が施されていた。
「唐突の来訪失礼致します。それがし共はケントAU団です。歯車騎士団団長サターナ様にお目通り願えませんか?鉄騎士団団長メフレックス様からの親書を預かっております。」
ケントは一体のゴーレムに親書を渡した。ゴーレムは目を光らせて親書をスキャンし、中に入って行った。暫くすると戻って来て、一行に目を明滅させながら親指を入口の方に向けて合図をした。
「中に入って良いとの事です。」
ジジョッタはゴーレムの意思を一行に伝え、一行は中に入った。
ゴーレムは一行を応接室に案内した。暫くして応接室に手袋とローブ等で首から下の肌が見えず、左目が橙色、右目が茶色でやや短めの髪の女性が入って来た。
「初めまして、あなた達がケントAU団ね。わたしは歯車騎士団団長サターナ。」
「こちらこそ初めまして…、それがしはケントAU団団長のケントと申します…。」
「私は副長のアジューリアと申します…。」
「…我は風の部族シュバリア族のムスタンだ…」
「わたくしは参謀のジジョッタと申します。」
「ユリアは諜報のユリアって言うの!」
サターナとケントAU団一行は挨拶を交わした。これからどんな話をするのだろうか?




