月日は流れ…
ケントAU団はメフレックスの言葉を胸に日々ヴァリギッドが科す様々な訓練に勤しんでいった。ジジョッタとユリアはヒノハナの世話、ムスタンはヒッタイトアックスで狩猟や伐採等に勤しみ、アジューリアは初めは難色を示した例の訓練で里の人々から感謝され、お礼としてブリジット族の女性達から『マッスルアーマー』の訓練を彼女に科してあげたいという申し出からフィジカル面の強化に移行された。ケントもアジューリアと共にその訓練を受けた。
マッスルアーマー…『屈強の肉体』を指す言葉。鍛え上げられた肉体はしなやかで打たれ強いだけでなく、甲冑のような物々しさと美しさも兼ねる事からこう呼ばれている。
ケントとアジューリアの身体が比較的精悍になった頃にはヒノハナも大輪の花を咲かせるに至った。そして、一年が経ち…。
里の広場では里の人々全員にメフレックスも交えて、ケントAU団の別れの挨拶が行われた。
「里の皆様、一年間有難うございました。」
「本当に…、色々有難うございました…。」
「…一年間…、世話になったな…。」
「一年間お世話になりました。」
「みんなありがとう!ユリア、楽しかったよ!」
一同は里の人々にお礼をした。
「ケント、里の皆からお前に渡したい物がある。おい、例の物を…。」
「はい。」
ヴァリギッドに促され、一人の里の民が持って来たのは、赤地に『志』の刺繍が施されたマントだった。
「一年間の訓練に耐え抜いたお前達に里の者達が織った労いのマントだ。団長のお前に纏ってもらいたい。」
「ジビエラも手伝ったの!」
「ユリアも!」
「刺繍はわたくしがしました。」
マント織りにはジビエラにジジョッタとユリアも秘密裏に携わっていた。
「有難うございます。」
ケントはマントを受け取りその場で羽織った。その姿は精悍な身体と相まってケントAU団団長に恥じない堂々たる物だった。
「ふふ…、とっても素敵よ。」
ケントの姿にメフレックスは恍惚とした。
いよいよ焔の里に別れの刻が来た。
「里の皆様にも風の加護がありますように。」
「この焔の里にも水の加護がありますように…。」
「この里にも…、風の加護を…。」
「里の皆様方に…、真の業を…。」
「みんなー、本当にありがとー!」
「ケントAU団にも炎の加護を…。」
ケントAU団はメフレックスと共に馬車で焔の里を後にした。
「メフレックス様…、これから僕達はどこに向かうのでしょうか?鉄騎士団とは違う方向のようですが…。」
「リンカヘイムよ。そこのカルデラの上の火口にわたしの相棒のQGがいるの。」
向かった先はリンカヘイムのカルデラの上にある火口だった。




