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将軍王のココロザシ  作者: TAK
第一部第六章~ケントAU団始動
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女傑王の手紙

(ふう…、臭いわ重いわで今日は散々だったわ…。明日も同じ訓練するのかしら…?)

湯上りしたアジューリアがジビエラの家に着くと、ジジョッタとユリアが傷ついたメフレックスを介抱していた。メフレックスは安らかに眠っている状態だった。

「!!…メフレックス様…!ジジョッタ、どうしてこうなったの?」

アジューリアはジジョッタにメフレックスに起きた異変について尋ねた。

「わかりません…。ただ一つ言える事は、腹部の強打による痣があった事です…。もし、筋肉の量が並以下だったら間違いなく死に至っていました…。つまり、メフレックス様は筋肉に救われたという事になりますね…。一晩眠れば大丈夫でしょう。メフレックス様の身体はとってもしなやかですから。」

ジジョッタはアジューリアにメフレックスの状態等を説明した。アジューリアも命に別状はない事に胸を撫で下ろした。


一夜明け、メフレックスの寝床には一通の置き手紙と一本のヒッタイトアックスが置かれていた。一行が手紙を読んでみると、こう書かれていた。

『ケントAU団へ。みっともないところを見せてしまってごめんなさい。そして、手当てをしてくれてありがとう。ジジョッタ、ユリア、花を育てる事は互いの魂を育む事です。慈しみの心を忘れなければきっと美しい花を咲かせるでしょう。ムスタン、先の訓練で斧が折れてしまったと聞いて、ヒッタイトアックスを持って来ました。是非お使い下さい。アジューリア、ヴァリギッドがあなたに科した訓練は誰もしたがらない事であると同時にして貰ったら喜ばれる事です。皆に喜ばれるような事をしていけば、彼らもきっとあなたの力になってくれる事でしょう。本当の美しさはそれと相反する物ともきちんと向き合う事にあります。それらを忘れずに今の訓練に励みなさい。最後にケント、先のアヤカシとの戦いでの活躍聞き及んでおります。これからもカムイが喜んで力を貸してくれるような心ある者でいて下さい。但し、訓練もしっかりこなしましょう。この二つが未来を切り開く(つるぎ)となる筈です。それでは、あなた達に炎の加護を。鉄騎士団団長メフレックス。』

「メフレックス様…、有難うございます…。」

「わたし…、目先の事に囚われる余り大切な事を忘れていたわ…。」

「…新たな斧…、感謝致す…。」

「メフレックス様…、綺麗な花を咲かせてみせます…。」

「ユリアも頑張る!」

手紙を読んだ一同は決意を新たに訓練に臨むのだった。


馬車で鉄騎士団に帰還する途中のメフレックスは大勢のブリジット族の女性に取り囲まれていた。彼女達は力強さと気品を併せ持ったメフレックスとは打って変わった野蛮な出で立ちで斧や槌に籠手等それぞれ得物を携えていた。

「あんた、焔の里のヴァリギッドの姐ちゃんに殺られかけたんだってねぇ!」

「ヴァリギッドの姐ちゃんには勝てなさそうだけど、今のあんたになら負ける気しないねぇ!」

「これからは、あたし達『PB(ピービー)団』の時代だって事をPB団首領、『女傑帝(エンプレスアマゾン)バンディッタ』が教えてやるよ!」

「『パワフルビューティー団』ね…。あなた達のような『蛮女(ばんじょ)』にわたしを儚げに出来ると思って!?」

「ああ、そうさ!あんたの血を抜いて剥製にして売り飛ばしてやるよ!!」

「ねえ…、知っているかしら…?花は摘んだらただ枯れるのみという事を…。つまり、剥製にしたら美しくなくなるという事よ。」

「難しい事はいいからおとなしくくたばっちまいな!!者共、かかれ!!」

バンディッタはメフレックスに子分達をけしかけた。子分達は雄叫びを上げながらメフレックスに迫って来た。

「そんなにわたしを儚げにしたいのね…。いいわ…、出来るのならね…。ELアーツ、『ブレイジィィィィィィィィィィィィィィィィィィング、ストォーーーーーーーーーーーーーーーーーーム』!!」

メフレックスはヒッタイトアックスを構えると身体が赤く光り始めた。そしてアックスを振りかざすと炎の形をした赤い閃光が発生し、火属性ELアーツ『ブレイジングストーム』で、自分の周囲に火柱を発生させ、子分達全員を返り討ちにした。子分達は火傷のあまり気を失った。

「ちっ…!覚えときな!!」

バンディッタはメフレックスに吐き捨てて退散していった。

(PB団…、おととい来なさ…!!…まだお腹が疼くのね…。でも…、この痛みも何故か心地良いわ…。)

メフレックスは腹部の痛みを抱えながらも心地よく感じ、満面の笑顔で鉄騎士団に無事に帰還していった。


パワフルビューティー団…レッドガルドの『スルトヘイム』を根城とし、女傑帝バンディッタを首領とするブリジット族の女性だけで構成された賊集団で、略して『PB団』。「力こそ美しさ」と言わんばかりに略奪や殺戮等何かと蛮行を繰り返す事から『蛮女団』とも呼ばれる。根城にいる男性は奴隷や捨て駒等道具として扱われる事が多く、傭兵稼業では見返りに男性を要求する事も少なくない。レッドガルドのブラック組織として、鉄騎士団管轄の白き女傑も哨戒にあたる程。

蛮女…野蛮な女性の蔑称で『蛮者』の女性版。大抵はパワフルビューティー団の女性構成員の事を指す事が多い。

スルトヘイム…パワフルビューティー団の根城があるレッドガルド内のヘイム。ブリジット族の女性が大半を占めており、『ブリジット族の女性でなければ人ではない』と揶揄される程、他のヘイムと比べて他の種族や男性への待遇が良くないと言われている。

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