表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
将軍王のココロザシ  作者: TAK
第一部第六章~ケントAU団始動
81/159

女傑王 VS 女傑君

焔の里の外れの荒野にヴァリギッドを呼びつけたメフレックスだった。二人はアジューリアへの訓練について口論を繰り広げた。

「アジューリアにあんな物を扱わせるような訓練を科さないで!」

「私に訓練の内容を任せると言ったのは誰だ!?」

「見眼麗しい女性に汚物を運ばせる訓練なんて聞いてないわよ!どうしてあんな訓練を科すの!?」

「それは、アジューリアが先の狩猟訓練で糞人形やトグロイド等の汚物由来のアヤカシに悲鳴を上げたからだ。」

「彼女が苦手だとわかっててさせてるなら…、あなたデリカシーってのがあるの!?」

「生憎だがそんな物私は持ち合わせていない。私は彼女に苦手を克服して貰いたいだけだ。」

「苦手の克服…?」

「確かに彼女は美しい。だが、相反する物に対する拒絶心を抱くようでは真の美とは呼べぬ。私は彼女に自分の考えと相反する物とも拒絶する事なく向き合って欲しいからあの訓練を科したのだ。」

「…あなたの言う事も一理あるわ。でも…、わたしがあなただったら…、あんな訓練は科さない!」

「ならお前はどうするのだ!?苦手を『個性』と捉えてそのままにするのか!?それでは訓練の意味があるまい!そんな甘さじゃお前が束ねる鉄騎士団も…、たかが知れてるな!」

「!!…構えなさいヴァリギッド!わたしの考えを『甘い』と言うのはともかく、鉄騎士団を侮辱するのは赦さないわ!」

メフレックスはヴァリギッドが鉄騎士団を蔑ろにした事に怒りを露わにし、両手に拳を握りしめた。

「そうか…、そう来るか…。じゃあ、私も拳で主張させて貰うぞ!」

メフレックスとヴァリギッド…、遂に殴り合いの喧嘩の火蓋が切って落とされた瞬間だった。


一方、ミドルガルドのラピス山脈の雪原では漆黒将軍とベムがそれぞれ得物を構えて向き合っていた。二人の間には女性騎士がいた。

「戦の申し子よ…、今回の訓練は我が眷属である漆黒将軍と死合いだ。光栄に思うが良い。では…、『バトルフィールド・エクササイズ』展開!」

女性騎士はベムを『戦の申し子』と呼び、『訓練用バトルフィールド』を展開した。

「始め!」

女性騎士の合図で死合いが始まった。ベムは先手を取らんと霧仕掛けで漆黒将軍を撹乱し、鎧の隙間を狙おうとするも、漆黒将軍の斬撃で潰され、彼の剣がベムの右腕を捉え、彼の手にした短剣も落とした。

(くっ…血は出ていないのに斬られたような痛みだ…。しかも右手の感覚が…。)

ベムは漆黒将軍の斬撃で斬られた筈なのに痛みだけでなく右手の感覚も奪われた事に驚いた。

「…我に小細工は通用せぬ!霧に巻かれようがお見通しだ!」

漆黒将軍はベムに小細工は通用しないと言い放った。

「くっ…、やっぱ通用しないか…。なら正々堂々と勝負するに限る!」

ベムは残った左手で漆黒将軍に突進していった。漆黒将軍はベムの左胸を斬り付けるとベムは前のめりに倒れた。

「ぐっ…!やっぱ強いな…!まさかこんな強い奴がいっぱいいるとは…。」

ベムは這いつくばった末に意識を失った。訓練用バトルフィールドが展開されていなかったら間違いなく死んでいただろう。

「これからもこの調子で彼奴を鍛えてやってくれ。」

「…御意。」

漆黒将軍は倒れたベムを抱え、女性騎士と共に山荘に戻って行った。



訓練用バトルフィールド…ヴァルキリーによって展開されるバトルフィールドの一種。痛みはあるが、出血を伴わない為『フィジカルダメージ』がなく生命への危険がない。

フィジカルダメージ…斬撃等での出血を伴うダメージで生命の危険に直結している。『ELシールド』が消耗したカムイやカムクリもフィジカルダメージで損傷や破壊に至る事も。

ELシールド…カムイやカムクリに搭載されている防御機能。フィジカルダメージを防ぐ働きがある。



話を戻して、真っ赤な夕映えを背景にお互い殴り合うメフレックスとヴァリギッドは肩で息している状態だった。

「ふっ…、そろそろお互い腹に一発で終わらせるぞ…!」

「ええ…。」

そして、二人は突進し、互いの腹部めがけて拳を放った。

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

腹部に拳を喰らったのはメフレックスだった。メフレックスは身体の中心から()ぜるような痛みのあまり悲鳴を上げ、ヴァリギッドの腕の中で意識を失った。その表情はさっきまでの猛々しさと対をなすように穏やかで儚げだった。岩山からさるブリジット族の女性が双眼鏡で二人の決闘を一部始終見ていた。


「あれ、今女の人の悲鳴が…。」

「…確かに…」

「獣かアヤカシにでも襲われたのでしょうか…?」

「ユリア、怖いの!」

メフレックスの悲鳴は焔の里のケント達の方にも聞こえていた。

「日が暮れるから今日はここまでなの!ご苦労様なの!」

ジビエラの合図で花壇造りが済んだケント達は暫くして驚きの光景を目にした。精悍な腹部に(あざ)があり、意識を失ったメフレックスがヴァリギッドにお姫様抱っこで運ばれたのだ。その光景に一行は動揺した。

「ジジョッタ、急いで彼女の手当てを頼む!」

「…はい!(メフレックス様…、どうしてこんな無残な姿に…)」

ジジョッタはヴァリギッドからメフレックスをお姫様抱っこで受け取ってジビエラの家で手当てをした。果たして、彼女の安否は…?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ