将軍王の娘の涙
ロイ王に自分が祖国を離れる経緯について話すよう促されたヨシーナ王女は語り始めた。
「わたしが…、祖国を離れる…、きっかけは…、アスティア現国王…、スパイデルです…。」
「やはりかのスパイデル王が原因か…。」
「はい…。わたしが…、20歳になった日の…、事です…。アスティア宰相だった…、スパイデルは…、王だった…、お父様を…、傀儡するため…、娘の…、わたしを…、人質に…、取りました…。傀儡を…、拒んだ…、お父様は…、わたしに…、『アスティアを心ある者に託してほしい』と言って…、自ら命を…、絶ちました…。そして…、お父様の…、生前の…、異名だった…、『将軍王』の…、箔を…、目当てに…、わたしを…、自分と…、結婚させたのです…。」
「明らかに乗っ取りだな。」
「はい…。新しい…、王と…、なった…、スパイデルは…、『将軍王の娘婿』を…、自称しながら…、他国を…、手当たり次第…、蹂躙して…、いきました…。中には…、建国当初から…、同盟を…、結んでいた…、国も…、ありました…。わたしの…、目の前で…、同盟国の…、要人が…、皆…、磔に…、された時…、わたしは…、ただ…、彼らに…、謝るしか…、出来ません…、でした…。お父様が…、死んだ…、あの日から…、アスティアの…、人々も…、変わって…、いきました…。皆…、『スパイデル様』しか…、言わなく…、なりました…。まるで…、カムクリ…、いや…、アヤクリの…、ように…、なって…、いきました…。」
ヨシーナ王女は嗚咽しながらスパイデルの所業を話した。
「わたしが…、部屋で…、ふさぎ込んで…、いた時…、この…、ジジョッタと…、出逢いました…。わたしは…、二人で…、スパイデルの…、所業を…、告発するため…、院都モルガナへ…、向かいました…。」
「その途中のコルホ山で賊に遭遇したのだな。」
「はい…。あなた達が…、いなかったら…、わたし…、スパイデルの…、元に…、連れ戻されると…、思うと…、ぞっと…、するのです…。」
ヨシーナ王女は恐怖のあまり身体を強張らせた。
「だから…、助けて…、下さって…、本当に…、ありがとうございます…。」
ヨシーナ王女はロイ王とケンウッドにお礼の言葉を述べた。
「礼ならば、そなたの連れのジジョッタにするが良い。彼女が主人であるそなたの危機を知らせてくれた事が最も大きいとわしは思うがな。」
「はい…。ありがとう…、ジジョッタ…。あなたの…、おかげです…。」
「あ、はい…。」
主人に礼を言われたジジョッタは嬉しいのか恥ずかしいのか少し戸惑い気味だった。
「そなたは良き配下を持ったものだ。これからも大切にするが良い。」
「はい…。」
ヨシーナ王女はロイ王の優しい言葉に涙を流しながら答えた。
「そうだ、ヨシーナ王女よ。そなたの事はわしが保護しよう。我々がそなたを安全にモルガナへ送り届けるとしよう。」
ロイ王はヨシーナ王女に自分が保護して本懐を遂げさせる事を提案した。
「ごめんなさい…、あなた達が…、わたしを…、保護している事を…、スパイデルが…、知ったら…、今度は…、あなた達が…、侵略の…、標的に…。わたしは…、あなた達を…、巻き込みたく…、ありません…。わたし達だけで…、モルガナへ…、行きます…。」
「それはもっと危険だ。道中で心無い者どもにまた出くわす事もあり得るからな。」
「じゃあ…、わたしは…、どうすれば…。」
ヨシーナ王女は不安でいっぱいだった。暫くしてロイ王は口を開いた。
「倅よ、お前がヨシーナ王女を保護せよ。これからは彼女がお前の主だ。ジジョッタと共にしっかり守ってやれ。」
ロイ王はケンウッドにヨシーナ王女の保護を命じた。
「父上…、ごめんなさい…。僕には…、守ってやれる…、自信が…、ありません…。」
ケンウッドは拒んだ。
「何だと…!ヨシーナ王女、ジジョッタ、そなたらは向こうの部屋で一晩休まれるが良い。わしは倅と二人きりで話をしたいのだ。」
「はい…。」
「お休みなさい。」
ロイ王は二人にお人払いを促した。二人が部屋を出た後、ヨシーナ王女が座っていた場所にケンウッドは座った。
「倅よ、何故わしの命令を拒むのか、理由を言うてみよ。」
「父上…、僕は…」
ロイ王はケンウッドに問いただした。果たしてケンウッドは何を答えるのか…。




