容赦なき訓練
一夜明け、ケントAU団一行はジビエラも交えてヴァリギッドの元で訓練の指示を仰いだ。
「では、今日の訓練についてだ。当面の目標はヒノハナの栽培は変更なし。まず、アジューリア以外全員ヒノハナの花壇の土造りだ。篩にかけて石を取り除いたた土に先日狩猟で採取した炭・灰を肥料として混ぜて一晩ねかせる。ジビエラ、今日はお前が指揮を執れ!良いな、者共!」
「了解なの!」
ヴァリギッドは訓練の内容を全体に伝え、ジビエラは了解した。
「ヴァリギッド様…、何故アジューリア以外なんですか…?」
ケントは訓練にアジューリアを外した理由について尋ねた。
「お前達は黙って事にあたれ!!要らん詮索はするな!!」
ヴァリギッドはケントの問いに激昂した。彼女の激しい言動に一同は沈黙した。
「…アジューリア、お前に話がある。お前に科す訓練はその後だ。」
「…はい…。」
「では、解散だ。」
アジューリア以外全員訓練にあたった。
一方、トラスティア王城の地下牢に監禁されたコンラッドの元にロイ王がパンを運んでやって来た。
「…すまぬな、コンラッド…。暫くの辛抱だ…。」
ロイ王はコンラッドに詫びると同時にパンを差し出した。
「…ロイ様は何故それがしを監禁しながらこうも親切になさるのです?」
コンラッドはロイ王に何故親切にするのか尋ねた。
「貴殿を見ると倅の姿を感じるからだ…。」
ロイ王はコンラッドに自分の息子の姿を重ねていた。
「…今…、あなたのご子息は…、どうしていらっしゃいます?…いえ、答えたくないならば…」
「ここを巣立ったよ…。さる大切な者との出逢いを機にな…。今頃はブルドラシルのどこかの国境なき騎士団の元でAUとしての訓練に勤しんでおる筈だ…。大切な者達と共にな…。わしは、倅が国に戻って来た暁には迎え入れてやりたいと思うておる。だが…、元老院がアスティアと繋がっている限り夢のまた夢なのだろうな…。」
「いいえ、例えよその国でも、親子の絆は断ち切れはしない筈です。きっとあなたのご子息も自分の成長した姿をあなたに見せてあげたいと思っていらっしゃる筈だと思います。」
「そうか…、コンラッドよ…、感謝致す…。では、来るべき刻に備えてゆっくり休むが良い。」
ロイ王はコンラッドの真摯な言葉に感謝し、囚人にかける言葉とは程遠い気遣いの言葉をかけて牢を後にした。
話を戻して、アジューリアはヴァリギッドから何かを言い渡された。
「えっ…!?そんな…。いくらなんでもその訓練はあんまりです!」
アジューリアはさる訓練の内容に不服だった。
「じゃあAU辞めるか!?荷物まとめて国に帰るか!?」
「…そ…、そんな…。」
ヴァリギッドはアジューリアに辛辣な言葉を浴びせた。
「言った筈だ!お前に皆と同じような訓練は出来ないと!明らかに短剣の訓練以前の問題だ!今のお前に適した訓練はあれしか無いんだよ!」
「…どうしてあの訓練なんですか…?」
「お前のメンタル面がからっきしだからだ!それを克服しない限り、お前は皆の足手まといになるだけだ!」
「…。(ヴァリギッド様…、何もそこまで言わなくたって…。)」
ヴァリギッドはアジューリアに続けざまに辛辣な言葉を浴びせ続けた。アジューリアは涙目になりながら黙って聞いていた。
「今更だが、お前がAUになった経緯は何だ?」
今度はAUになった経緯について尋ねた。
「私…、ある任務に失敗してしまいました…。その失敗の清算をする為に…、AUの道を歩みました…。」
アジューリアはミストヘイムの戦いでのレスティーン救出任務の件を引き合いに出して答えた。
「ならば、つべこべ言わずに私の科す訓練を受けよ!このままじゃいつまで経っても清算出来ないぞ!」
「はい…。」
アジューリアはようやく承諾した。
(焔の里…、久しぶりね。皆いきいきとしてるわ。さて、皆の訓練状況はどうなっているのかしら?…って…、何かしらこの異臭…。!!…あれは…。)
焔の里に赤塗りの馬車でケントAU団の訓練状況を視察に来たメフレックスは道中で異臭を感じ、その先に里の民の服装に、髪をシニヨン状にまとめ、両手に手袋、鼻と口を布で覆い、両肩に棒を担いでその両端に屎尿を汲んだ桶を載せているアジューリアを発見した。
(…まさか…、アジューリア…!?ヴァリギッド…、あなたは一体何を考えてるの…?訓練とはいえ、見眼麗しい女性にあんな物扱わせるなんて…。)
メフレックスはアジューリアの光景に違和感を感じた。何か一悶着ありそうな予感だ。




