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将軍王のココロザシ  作者: TAK
第一部第六章~ケントAU団始動
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過酷なる訓練

ヴァリギッドはジビエラとケントAU団一行を自分の家に召集した。

「今日よりお前達の訓練を始める。当面の目標は…、『ヒノハナの栽培』だ。」

「え?…それって…、子供でも出来そうな訓練だと思いますが…。」

「ヒノハナは危険な花…。それを栽培するのも立派な訓練ね。」

「何だ…、力仕事を伴う訓練ではなかったのか…。てっきり狩猟かと思ったが…。」

「ヴァリギッド様の意図…、何となくわたくしにはわかります…。」

「ユリアお花だーい好き!お花育てるのって楽しいね!」

ヴァリギッドの方針に賛否両論の一行だった。

「まず、今日すべき事をそれぞれ伝える。ジジョッタとユリアはヒノハナの栽培のやり方について里の者に教えを乞え。」

「はい。」

「うん!」

ヴァリギッドはジジョッタとユリアにヒノハナの栽培方法について学ぶよう指示した。

「アジューリアは今回は休みだ。…と言っても訓練の事ではない。お前はジビエラから短剣を扱った戦闘訓練を受けよ。ジビエラ、良いな!」

「はい。」

「了解なの!」

アジューリアにはジビエラから短剣による近接戦闘の訓練を受けるよう指示した。

「最後に、ケントとムスタンは私と共に『テツノキ』の森の伐採に向かう。台車はケントが運べ。」

「…。」

「お任せあれ。」

ケントとムスタンには自分と共に伐採に携わるよう指示した。

「どうしたケント。私のやり方に不服か!?」

ヴァリギッドは返事のないケントに自分の方針に不服か尋ねた。

「ジジョッタ達は栽培に直結していて、アジューリアは別の訓練なのはわかります…。でも、僕達の伐採は例の栽培に関係しているのでしょうか?」

「つべこべ言わずに…!」

「伐採は木材資源を得る事です…。その木材を花壇の仕切りに使う…。ヴァリギッド様の言いたい事はこういう事だとわたくしは思います…。」

激昂したヴァリギッドを制止するかのようにジジョッタはケントに彼女の意図を代弁した。

「そういう事なら理解出来ます。ヴァリギッド様、申し訳ありません。」

ケントはジジョッタの説明に納得した。

「では、それぞれ訓練にかかれ!以上だ!」



テツノキ…レッドガルド原生の樹木で、赤のEL粒子を含有している為、『赤デクード』と表現される事もあるEL資源だ。鉄並みの強度と錆びた鉄の匂いがする事からこう呼ばれる。



ケント達はヴァリギッドに率いられてテツノキの森に来た。

「ここで伐採だ。但し、伐採すべき樹とそうでない樹がある。既に折れているのと明らかに傾いているのは伐採だ。それ以外は伐採せずに残す。良いな!」

「はい。」

「承知した…。」

ムスタンは慣れた手つきで大きく傾いたテツノキを斧で次々に切り倒していった。グルンガルドで狩猟だけでなく林業の心得もある彼ならではの手つきと言える。ヴァリギッドとケントはムスタンが切り倒したテツノキや既に折れているテツノキを台車に運んでいった。


伐採が終わり、一行が撤収しようとした時…。

「!…うっ…、重い…。」

一人でかなりの量のテツノキを台車で運ぼうとするケントが重いと音を上げたのだ。

「…我も一緒に運ぼう…」

「いいや、それでは奴の為にならぬ!!」

ムスタンの申し出をヴァリギッドは一蹴した。

「…何故だ…?我ならともかくまだ身体も大きくない団長にとことん重い物を運ばせるのはあんまりかと…。」

ムスタンはヴァリギッドのやり方に疑問を投げかけた。

「ムスタン、これはケントだからやらせているのだ!」

「…なっ…」

「ケントのフィジカル面のなさはお前もわかってる筈だ!フィジカル面の強化には重い物を持たせるのが一番なんだ!ケント、もう一度弱音を吐いてみろ!台車に私もムスタンも一緒に乗るからな!!」

ヴァリギッドはムスタンにケントのフィジカル面の弱さを指摘すると同時にケントに弱音を吐いたらさらに台車をさらに重くすると脅しをかけた。

「…はい…。」

ケントは僅かながらも台車を押して一歩一歩進んで行った。


一方、ミドルガルドのラピス山脈の雪山では、女性騎士との手合いの訓練中のベムが()()うの(てい)の状態だった。

「…なっ…、何という強さだ…。」

「私に小細工は通用せぬ!勿論お前のお家芸(いえげい)とする霧仕掛けもお見通しだ!」

女性騎士は槍をベムに突き付けて小細工は通じないと言い放った。

「なるほどな…、なら…、あんたに勝つには正々堂々とやるのが一番ってな…!」

ベムは自分の身体に鞭打って二振りの短剣で女性騎士に向かっていった。しかし、女性騎士は避ける素振りを見せなかった。次の瞬間、ベムは彼女の近くで前のめりの状態で倒れたのだ。女性騎士はベムをお姫様抱っこして山荘のベッドに寝かせた。


話を戻して、ケント達が里に着いた頃には東の空には既に朝日が昇っていた。そして疲労困憊(こんぱい)のケントは朝日の下で意識を失った。彼が目を覚ましたのは一週間後の事だった。

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