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将軍王のココロザシ  作者: TAK
第一部第六章~ケントAU団始動
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ケントの目的

焔の里の長ヴァリギッドから聞き込みを受けたケントだった。

「お前は今、AU団団長の立場にある。団長として何が自分に足りないと思う?」

「僕は…、ジジョッタ程の『知』もなければ、ムスタン程の『武』もないんです…。」

「知も武もないか…。なら、何故今までやって来れたと思うのだ?」

「心ある者達の支えがあったからです。彼らと出逢わなかったら僕は既に死んでいたと思います…。」

「なる程…。では、お前は何を目的としているのだ?AUとなって何を()したい?」

「僕には…、主がいるんです…。自分が未熟だったが故に多くの命を犠牲にしてまで救った主が…。その主を…、今度は自らの手で護りたい…、そして…、主の望みを叶えたい…。これが…、僕の目的なんです…。」

「わかった…。それで、今その主はどうしてる?連れを見たところ主らしき雰囲気の者は見られなかったが。」

「預けました…。心なき者の手の届かない場所に…。だから…、僕はAUとしての訓練を積んで…、主を迎え…、そして護りたいんです…。」

「『心なき者の手の届かない場所』とはどこだ?」

ヴァリギッドは主を預けた場所について尋ねた。

「ごめんなさい…。いろんな事情があって、こういう表現しかできないんです…。」

ケントはヴァリギッドの質問に答えられない事を謝罪した。

「わかった。とにかくお前は主を自らの手で護りたいんだな…。では、話は終わりだ。ジビエラの家で一晩休むよう皆に伝えよ。」

「ありがとうございました。それでは、失礼致します。」

ケントは一礼してヴァリギッドの家を後にした。


一方、ミドルガルドのブルー地方とパープル地方の境を通り、アメシスト街道を横切る『ラピス山脈』上の雪の降る山荘で、ベムと一人の女性騎士が机に向かい合っていた。女性騎士は全身漆黒装束でハイヒールに丸みを帯びた胸甲と真っ赤な眼をしていた。

「ベムよ、まずはお前の生い立ちについて話すがいい。」

「俺はブラーガルドのスラムで生まれた。妹が産まれた時におふくろを亡くし、妹が物心ついた時に親父を殺され、間もなく病気になった妹がスラムの貧者ってだけで医者に診て貰えず、妹を置いて薬を買う金欲しさに富裕層の邸に忍び込み盗みを働いてしょっぴかれそうになったところをカモン兄貴に助けて貰ったんだ。」

「妹の名は何と言う?」

「ユリアだ。」

「そうか。(やはりな…。)」

女性騎士はニヤリと口元に笑みを浮かべた。

「それからカモン…、お前と同期の傭兵だな。奴は今頃モルガナ元老院の監視役として大忙しだろうな。まあ、お前はその間私の訓練を受けるのだからな。お前の活躍の場が残る事をせいぜい願うがいい…。」

「訓練を受ける前に一つ聞かせてくれ。何故俺に肩入れするんだ?」

ベムは女性騎士が何故自分に肩入れするのか気になった。

「私はお前に魂の伸びしろを感じているのだよ。カモン以上にな。」

「俺に魂の伸びしろを…」

「ああ。私がお前とカモンを洗脳しなかったのは何故だかわかるか?洗脳は眷属(けんぞく)を作るのに確実だが、魂の成長を阻害(そがい)するからだ。カモンにおいては一人でもきちんと話が出来るようにしておかないと『()()将軍王の娘婿』が困るからな。」

「じゃあ、俺と一緒に来たレスティーンや兵士に民が『~の為に!』とひたすら連呼するのはあんたの仕業って事か?」

ベムは女性騎士に問いただした。

「だとしたらどうするのだ?私を滅ぼすのか?」

女性騎士は漆黒の槍を光らせながら答えた。

「いや、逆だ。あんたとスパイデル王ではあんたの方が器量が上なのは明らかだ。どっちかをマスターに選べと言われたら俺は迷わずあんたを選ぶな。」

「わかっているなら話は早い。お前の()()()()()()はこの私だ。その事は絶対に奴の陣営には努々(ゆめゆめ)触れ回るなよ。」

女性騎士はベムの真のマスターが自分と述べると同時にスパイデル側には伏せておくよう釘を刺した。

「ああ。マスター、それからもう一つ尋ねていいか?あんたがスパイデル王と今共にあるのは何故だ?スパイデル王を『奴』呼ばわりするって事は何か目的がある筈だ。」

「欲望を絵に描いたような者だからだ。己の業と向き合わぬ者の業は増幅させるに限る。そして、破滅へ一直線…、何と面白い限りよ。」

「マスターの気持ち…、わからなくもないな。俺は喜んでマスターに手を貸そう。マスターの為ならば例えデッドガルド行きだとしても悔いはない。俺の目的である貧困の根絶も実現出来そうだしな。」

「感謝するぞ、『戦の申し子』よ。では早速訓練を始めるとしよう。」

女性騎士とベムは外に出て雪が降る中で訓練を始めた。そして、ベムは『黒きAU』の道を一歩踏み出すのだった。



ラピス山脈…ブルー地方とパープル地方の境をなす山脈で、極寒の地で冬は大雪が降るため、『離れてみれば絶景、接してみると地獄』と表現されるくらいの過酷な環境だ。

黒きAU…目的の為ならば手段を選ばない『ブラックAU』とは意味合いの異なるAU。こちらは黒きカムイとただならぬ関わりを持つAUの事を指す。



話を戻して、一夜明けた焔の里でケントAU団一行は里の皆に挨拶した後、ヴァリギッドの家でジビエラも交えて訓練に関する指示を仰いだ。果たして彼女が科す訓練とは一体?

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