焔の里
ヴァリギッドに連れられて焔の里に来たケントAU団。焔の里にはゴブティーン族やブリジット族の人々が共同で生活している。彼らの生活は他のガルド程の華やかさはないが、自給自足の充足した日々で、いわゆる『何もないが全ての物がある』な感じだ。
「ここが焔の里か…、皆生き生きとしてるな。」
「ええ、貧しさを感じさせない程にね。」
「わたくし、この里の皆の力にもなりたいです…。」
「我が故郷の如しだな…。」
「皆幸せそう!」
一行は里の雰囲気にワクワクしていた。
ヴァリギッドは里の奥にある自分の家に一行を案内した。
「まず、訓練を始めるにあたってだ。手始めに一人ずつ話を聞いていきたい。訓練の内容はお前達の話を聞いてから決める。まずは…、ユリアからだが…、レスティーンなのでもう一人と一緒に…。」
「わたくしが一緒に話を…。」
ジジョッタが申し出た。
「わかった。他の者はここの戸を閉めて外で待っていろ。」
ヴァリギッドはジジョッタとユリア以外にお人払いを促した。
一方、ミドルガルドのモルガナ元老院の屋上では一人の男性がターコイズ街道側の空を眺めていた。
「…レスティーンの頃から僕はこの元老院の役人になり、貴族と平民が手を携え合う平和な世界にしたい一心で学問に勤しんできた。だが、実際役人になってみるとどうだ…。院長の娘が失踪して数日後に突然アスティア寄りの政治に切り替わり、そんな偏った政治に異を唱える者がいない…。」
彼の後ろの屋上の扉の内側から小さな影が現れた。
「こんな元老院はどこかおかしいと思うのは僕だけなんだろうか…。!!…」
扉から元老院の監視役として派遣されたアスティア王国のレスティーン兵が走って来て、男性の腕を掴んだ。
「全てはアスティアの為に!」
レスティーン兵はそのまま男性を執務室まで引っ張った。
レスティーン兵に執務室まで引っ張られた男性に元老院長は驚いた。
「!…君は…、フレッシュオーバーの『コンラッド』ではないか。」
「院長…、それがしに何用でしょうか?」
「わしではない…。このレスティーン兵が君に用があるのだよ…。」
「このレスティーンが?」
「全てはアスティアの為に!」
レスティーン兵は元老院長のしたためている書簡を指さした。
「君にこの書簡をあのトラスティア王に渡して欲しいとこのレスティーンが望んでおるのだよ。」
元老院長はコンラッドに書簡を渡した。
「トラスティア…と言えば現在敵対関係の国家ですよね。敵に書簡を渡すという事は何かを要求するのでしょうか?」
「全てはアスティアの為に!」
レスティーン兵はコンラッドの袖を軽く掴んで制止した。
「…わかりました…、院長…。必ずお渡し致します…。」
詮索をやめたコンラッドは承諾し、院長に頭を下げてトラスティアに向かった。
話を戻して、最後に残ったケントがヴァリギッドに呼ばれた。
「お前で最後だな。まず、一つお前に問いたい。」
「はい?」
果たしてヴァリギッドはケントに一体何を尋ねるのか?




