クロードの手紙
支度を済ませたケントAU団は別れの挨拶のため、バイオレットナイツ本部のサキュバーナの元を訪れた。
「サキュバーナ様、色々お世話になりました。」
「あなた達がこれからケイブガルドを出発する前に渡すべき物があるの。」
サキュバーナは一通の書簡をケントに渡した。
「これは…?」
「ケントAU団に関する紹介状よ。レッドガルドの『ペンテヘイム』を本拠とする『鉄騎士団』の団長に渡しなさい。」
「ありがとうございます。」
「あと、もう一つあるわよ。プライベートものだけど…。」
サキュバーナはもう一つの手紙もケントに渡した。
「あのはぐれAUからよ。読んでみて。」
「え…!?」
ケントは一瞬戸惑ったが、手紙を他の団員に見せつつ一通り読んでみた。
『ケントAU団へ。この前は皆と敵対してすまなかった。そして、俺と何よりあのドクロイドの魂を救ってくれてありがとう。あんた達がいなかったら俺は今頃どうなってたか想像がつかなかったな。今は囚人として服役中だ。業を全うしたら、俺もいつかあんた達の結成した「ケントAU団」の一員になりたい。例えなれなくても陰ながらあんた達を支えたい。それすら叶わないならば弱者を護りたい。俺は心からそう思う。じゃ、あんた達に闇の加護を。クロード。』
(クロードか…、いつか僕達と共に戦う日が来るといいものだな…。それからユリアの兄ベムとも…。)
ケントはユリアの兄ベムに想いを馳せつつ、クロードと再会するならば今度は味方として再会できるといいなと思った。
一方、ミドルガルドのセントラル地方のモルガナ元老院の執務室では、アスティア王国のレスティーン兵の使者から一通の書状を受け取ったばかりの元老院長が動揺していた。
(な…、アスティア王スパイデルが『娘の命が惜しくば吾輩にお味方せよ』と…。そしてこの絵は…。)
元老院長が絵を見てみると数日前から行方不明になっていた娘の絵だった。その絵は完璧に似ており、常人には到底真似出来ない技術だ。
(間違いなくわしの娘だ…。となれば娘はアスティア王スパイデルに人質に取られたという事か…。)
元老院長は娘が人質に取られたと悟った。
(更に…、『吾輩にお味方するかどうか即座に返答せよ。貴公の血判を本状に押印する事で承諾するものとする。』とは…。)
文面で返答を迫られた元老院長は震えた手つきでナイフを手にし、自分の指を軽く切り、泣く泣く血判を書状に押した。
「承諾したと伝えてくれ…。」
元老院長は血判を押した書状を待機中のレスティーン兵に渡した。
「全てはアスティアの為に!」
レスティーン兵は書状を受け取ると即座に退出していった。
(アスティア王スパイデル…、この元老院を傀儡しようという腹か…。)
元老院長はアスティア王スパイデルのやり様に疑問を抱いていた。この血判が祖国の危機に繋がっていく事をケントは未だ知る由もなかった。
話を戻して、遂にケントAU団が菫の里を出発する刻が来た。
「バイオレットナイツにも風の加護がありますように。」
「皆様にも風の加護がありますように。」
「あなた方に真の業を…。」
「貴殿らにも風の加護を…。」
「みんな、ありがとう!ユリア達行くね~!」
一行はサキュバーナに別れを告げた。
「あなた達にも闇の加護を。」
サキュバーナは一行を見送った。ケントAU団はレッドガルドに出発した。レッドガルドでケント達を待ち受けるのは一体?




