クロードの決意
刑務棟の面会室でジジョッタとユリアは囚人のクロードに一瞬動揺した。
「あの…、クロード様…。」
「俺は囚人だ。囚人に敬称は要らない。『クロード』でいい…、いや、『クロード』がいいな。」
「わかりました…。クロード…、この前はごめんなさい…。わたくしとした事が出過ぎた真似を…。」
ジジョッタは彼とドクロイドとの間に割って入った件について謝罪した。
「いや、あんたは悪くないよ。寧ろ悪いのは俺の方さ。」
「え…、それはどういう…?」
「あの時の俺はただ妹の仇討ちしか考えてなかった。あんたが必死で止めてくれたおかげで自分の過ちに気付く事ができたよ。ありがとな。」
「…はい…。」
クロードに感謝されたジジョッタは複雑な気持ちだった。
「なあ…、嬢ちゃんは恨んでるよな…。あんたの親父をやったこの俺を…。」
クロードはユリアに彼女の父を討った自分の事を恨んでいるか尋ねた。
「…ユリア、恨んでない。パパとっても安らかだった。おっきな骸骨になったパパは他の人にやられるくらいならお兄ちゃんの手にかかる道を選んだだけなの。だから…、ありがとう…。パパの魂を救ってくれて…。」
ユリアもクロードに感謝の言葉を述べた。
「そうか…、これで俺も救われた気がするよ…。ところであんたら…、これからどうするんだ…?いや、答えたくないならいいぜ…。」
「ユリア、このお姉ちゃん達と一緒にベム兄ちゃん捜すの。」
「俺をはぐれAUとして捕らえたあの一行とか…。」
「…はい…。彼らもわたくしの大切な仲間なのです…。」
「そうか…、一行の的確な行動と結構な統率力はあんたの支えがあるからなんだな…。これからも一行を支えてやってくれ。それから嬢ちゃん、一日でも早く兄貴と再会できるといいね。」
クロードはジジョッタに今後も一行を支えて欲しいと伝えると同時に、ユリアが兄と再会できる事を願った。
「ありがとうございます…。」
「ありがとう、お兄ちゃん!」
ジジョッタもユリアもクロードに感謝した。
「クロード…、わたくしからもあなたに伝えたい事があります…。」
「何だ?」
「わたくし…、あの七色に輝く槍を携える者に悪い人はいないと信じています…。」
「そいつは買い被りだな…。何せ俺はこの様だ。」
「いいえ、あなたはわたくしの見てきた者達の中で最もAUたる資質を秘めています。あの時ははぐれAUだったからこのような不本意な形になってしまったけど、これからのあなたは違うと信じています。」
「!!…」
クロードはジジョッタの真摯な言葉にはっとした。
「ここで業を全うしたら今度こそAUとして皆をお護り下さい。妹もきっとそれを望んでいる筈です。」
「…ありがとう…。…俺…、…いつか…、…あんた達と一緒に…、…戦いたいな…。…何で涙が出てくんだ…、男が泣くのはみっともないって…、親父が生前言ってたのに…。」
クロードは感謝した途端、突然涙を流した。
「泣いていいんです…。本当に大切なものを手にする事程嬉しい事はないですから…。そう…、その気持ちです…。その気持ちを大切にこれからを生きて下さい…。あっ…、偉そうな事を言ってしまいましたね…。」
「…いや…、…あんたのその言葉が嬉しかった…。…改めてありがとう…。」
クロードは改めて感謝の言葉を伝えた。
「こちらこそありがとうございました…。それではあなたに真の業を…。」
「お兄ちゃんも頑張ってね。」
「…ああ…、…達者でな…。」
ジジョッタとユリアは面会室を後にした。
一方、ミドルガルドのアスティア城の塔の牢獄の夜、ベムは先日自分が拉致した女性に牢屋越しにパンを与えた。
「パンだ。念のためだが、毒は入ってないぞ。」
ベムは無作為にもう一つのパンを取って食べた。女性は毒が入っていないと安心して食べた。
「食べながらでいいから聞いてくれ。」
ベムは女性にこれから何を話すのだろうか…?




