アヤカシ父娘
ジジョッタは男性にV-800を突き付けられるも、全く動揺しなかった。
「…このドクロイドとモータロイドは父娘なんです…。アヤカシとはいえ大切な者と心を通わせないまま滅んだら…、またアヤカシとなってしまいます…。だからお願いです…。戦う前に父と娘が心を通わせる機会をお与え下さい…。それからでも遅くはない筈です…。」
ジジョッタは必死で男性に訴えた。
「…ああ…、あんたらがただ止めるだけじゃないって事はわかったよ…。だが…、こいつらは俺の妹の仇なんだ!これだけは絶対譲れないな!」
男性はジジョッタ達が戦いを一旦止めた理由に納得するも、アヤカシ父娘が妹の仇である事を主張し続けた。
「…ベム…、わしの…、倅…。」
娘に何かを説得されたドクロイドは男性に語り掛けた。
「ドクロイドの方は『もう人は襲わない』と言っています。」
ジジョッタはドクロイドの言葉を訳して男性に伝えた。
「…ベム…、わしの…、倅…。」
「『しかし、例え自分が人に危害を加えないとしても、この禍々しい姿からいずれ討伐されるだろう。だから…』」
「…ベム…、…わしの…、…倅…。」
ドクロイドは右手でユリアを遠ざけ、男性のV-800を指さした後、親指から光線を発して左胸の肋骨を切り開いてコアを露出させ、そこに親指を指した。
「『あなたのその槍で止めを刺して欲しい』と仰せです。」
ジジョッタはドクロイドの意思を男性に伝えた。
「…わかった…。ドクロイドよ、光栄に思え!この『クロード』が、このV-800で葬ってやろう!!」
クロードの手にしたV-800が七色に光り始めた。
「受け取るがいい!V-800ォォォォォォォォォォォォォ、アサルトォォォォォォォォォォォォォ!!」
クロードは奥義『V-800アサルト』をドクロイドの左胸のコアに叩き込んだ。ドクロイドが爆発した瞬間…
「パパァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
モータロイドのユリアが「ベム兄ちゃんどこ?ユリア会いたい」以外の言葉を初めて口にしたのだった。ドクロイドの頭部がユリアの前に転がってきた。
「…パパ…。」
ユリアは変わり果てた父を見て悲しみでいっぱいになった。
「…ユリアよ…、わしはベムやお前が成長した姿を見るのが夢だった…。だが給料日のあの日…、わしの周りに突然霧が立ち込めてきて、わしはその霧の中で殺された挙句給料まで奪われたのだ…。もしもベムに会ったら伝えてくれ…。わしらの子に生まれて来てくれてありがとうと…、な…」
頭部だけになったドクロイドはユリアに自分が人だった頃の最期の経緯と息子への遺言を伝えた後、口元に笑みを浮かべながら両眼の光を消失させ、永遠の眠りについた。
「…パパ…、…パパァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
父の最期にユリアは思わず叫んだ。そんな彼女をジジョッタは抱擁した。
「…さて、俺はこの辺で…。!!…」
ドクロイドを破壊したクロードがこの場を後にしようとすると、矢が彼の方に飛んで来た。クロードがV-800で矢を弾き返すと、矢から網が広げられ、網が彼を包み込んだ。
「な…、何だこれは!?」
網で身動きがとれないクロードに複数の影がやって来た。そして影は彼を取り押さえた。
「すまぬがその槍は我々が預かろう…。」
「悪いけど、僕らははぐれAUのあなたを拘束する依頼を受けているんでね。」
「今わたしが放った矢は殺傷力のない『捕獲用の矢』よ。」
クロードを捕らえたのはケント、ムスタン、アジューリアだった。
「な…、何であんたらが…!?」
クロードは動揺した。自分を拘束した相手が以前相まみえた一行であった事も拍車をかけていた。




