悪夢
自分が倒した筈のドクロイドが再び現れた事に男性は戦慄した。
「…ベム…、わしの…、倅…。」
「くっ…、何度来ようが返り討ちにしてやるぜ!」
男性はV-800を構えて再びドクロイドに向かって行った。
一方、ムスタンはケントとアジューリアを乗せて現場へ走っていた。
「ねえ、本当にこの道で合ってるの?」
アジューリアはムスタンに進路について間違っていないか尋ねた。
「ああ…、我がELアビリティ『エアロシーク』でジジョッタ達の通った後が光で把握出来るのだ…。故に間違いない…。」
「相手はドクロイドですよ。一刻も早く着けないでしょうか?」
「そうね、それからあの依頼もあるし…。ムスタン、お願い。速く走れるアビリティはないかしら?」
ケントとアジューリアはムスタンに少しでも早く目的地に着けないか尋ねた。
「うむ…、お任せあれ…。ELアビリティ、『ハヤテダッシュ』!」
ムスタンは身体を緑色に光らせながらより速く駆けた。大地を蹴る度に緑色の四つ葉のクローバーの閃光が地面に迸った。彼の通った後が四つ葉の轍のようだった。
(ジジョッタ…、ユリア…、僕らも今行く…。どうか無事でいてくれよ…。)
話を戻して、V-800を携えた男性はドクロイド相手に苦戦していた。
(くっ…、前より強くなってるのか…。それとも…、相手が上半身だけだからと見くびってたのか…。)
「…ベム…、わしの…、倅ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ドクロイドは呪詛光線を両眼から一斉に男性に放った。男性は横っ飛びで何とか回避したが、呪詛光線は妹の墓標を捉え、木端微塵に破壊した。妹の墓標を破壊された男性は一瞬動揺したが、即座に怒りの感情を露わにした。
「!!…良くも…、妹の墓標を…、赦さない…!貴様だけは絶対に赦さないィィィィィィィィィィィ!!」
男性の怒りに呼応するかのように、V-800が強い光を放ち始めた。
「アヤカシめ…、アヤカシめェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!!」
男性はV-800をドクロイドの左胸のコアを狙って突撃した次の瞬間…、男性とドクロイドとの間に緑色の大きな旋風が発生した。V-800の光が旋風に吸い込まれる形で次第に弱まっていった。
「な…、何だ…!?何が起きてるんだ…!?」
男性は我に返った。旋風の中から現れたのはジジョッタとユリアだった。
「お願いです!これ以上の戦いはおやめ下さい!」
「ベム兄ちゃんどこ!?ユリア会いたい!!」
ジジョッタは男性に、ユリアはドクロイドにそれぞれ戦いを一旦中断するよう働きかけた。
「ベム…、わしの…、倅…。」
ドクロイドは娘の意思を感じ取り両眼の光を弱めた。
「あんたは…、あの一行の…。それからあのアヤカシ娘まで…。戦いをやめろとは一体どういうつもりだ!」
戦いを止められた事に納得できない男性はV-800を突き付けてジジョッタに問いただした。果たして彼女はどんな答えを出すのだろうか…。




