男性とバクット
バクット…ケイブガルドの在来種のカムイで、蝙蝠の翼の生えたバクのような愛らしい姿と淡い紫に光る様から『紫の妖精』と呼ばれる。鍾乳洞の水の中でアメシストを生み出すが、生み出したばかりのアメシストはBEを帯びているため、水でBEを洗い流して初めて紫色に光り出し、稀にアメシストからバクットが誕生する事もある。また、バクットと絆を深めると大抵のアヤカシの襲撃から護ってくれると言われており、アメシストを生み出す事と相まって神聖な存在として扱われる事も少なくない。
墓場でバクットを見た男性は安堵し、バクットに何かを話し始めた。
「俺な…、ティーンの時からたった一人の妹を養う為に自分の村で交易の仕事してたんだよ…、フレッシュオーバーである今までな。うちの村の特産品を仕入れてよそに売って、そこの特産品を買って、うちの村に売って…、を繰り返して金を稼いでたんだ…。村に稼いだ額の8割を納めなければならないけど、村は勿論、向こうも喜んでくれるのが嬉しかったね。だが…、そんな日常をぶち壊したのがアヤカシどもなんだよ…。あのアヤカシどもがうちの村にやって来たおかげで妹は…。」
男性は妹の墓標を指さした。
「そして、妹の死を目の当たりにした時に、上半身だけ這いずってたカムイからこの『V-800』って槍を授かったんだよ…。」
今度はV-800を指さした。
「この槍を手にした時、俺は負ける気がしないと思ったな。何故ならあのカムイからこれを託された際、アヤカシから皆を護って欲しいと…、…ん!?」
バクットが突然外を見まわした。次の瞬間、禍々しい光線が男性に飛んで来た。バクットは男性を庇うようにELフィールドで光線を防いだが、二射目が飛んで来た。バクットは光線を防ぎきれずに爆発と共に破壊され、地面にはバクットのELコアであるアメシストが砕けた状態で転がっていた。
「なっ…、嘘だろ…。」
男性が光線が放たれた元を見てみると、何と見覚えのある相手がいた。
一方、AU屋敷の厩では…
「はっ、あの男性をつけていたバクットの信号が…。」
ジジョッタは一体のバクットの信号が途絶えた事に不穏を感じた。
「ジジョッタよ…、いかがした…?」
ムスタンがジジョッタにどうしたのか尋ねた。
「バクットの信号が途絶えた場所にドクロイドが出現しました。間もなく例の男性との交戦が開始されるのは間違いないでしょう。わたくしはユリアと共に現場に急行します。ムスタン様、あなたはケント様とアジューリア様を乗せてわたくしの後をお辿り下さい!」
「うむ…。」
ムスタンはAU屋敷内に向かった。ジジョッタは一体のバクットにバイオレットナイツ団長サキュバーナの元に向かうよう促した。
「さあ、お父様の元に参りましょう。『ELアビリティ』、『ハイドロブースト』!」
「…ベム兄ちゃん…、どこ…?ユリア…、会いたい…。」
ジジョッタはユリアを抱き抱えて背中の青い箱から雫型の青い光を後方に放ちながら猛スピードでダッシュした。
(お願い…、間に合って…。今どちらが滅んでも…、皆の為にならないの…。)
ELアビリティ…ELアーツに準じる能力。こちらは攻撃に使われず、補助目的で使用される。
「…ベム…、わしの…、倅…。」
上半身と右腕だけのドクロイドが這いずりながら男性に迫って来た。
「な…、何故だ…!?お前は俺が倒した筈だ…!」
以前倒した筈の敵が再び自分の前に現れた事に男性は戦慄した。果たして男性とドクロイドの戦いの結末はいかに?




