V-800
紫の世界ケイブガルド…、デッドガルドの入口のガルドかつ、闇に覆われしこの地ではBE濃度もデッドガルドに次ぐ高さで、様々な種類のアヤカシが出現する。アヤカシには巨大な骸骨の姿をしたドクロイドや、死者の身体を魄とするモータロイド等がよく挙げられる。特に前者は極めて凶悪な存在で、アヤカシに有効な虹の力を以てしても破壊するのは至難の業と言われている。ケイブガルドの人々はデッドガルドより襲来するアヤカシの脅威に晒される事も少なくない。そのため、『カミラヘイム』の菫の里を拠点とする菫の騎士団管轄の治安組織『紫苑の刃』も出動する事も多く、AUの需要も結構高い。
これは白銀の槍を携えし男性がケント達と相まみえる前の話である。ケイブガルドのさる村の外れ…、ケイブガルドに巨大アヤカシが出現したのを受けてゴッドガルドから送り込まれたヴァルキリーがドクロイドにその連れの少女型モータロイドと対峙していた。白銀の美しいボディのヴァルキリーの肩には彼女の型番『V-800』のペイントが施され、頭部には羽根の装飾、両瞳は赤く光り、両足に藤色のハイヒールを履き、左手には白銀の盾、右手には白銀の槍が握られていた。ドクロイドは両眼を赤く光らせ、左胸の中にはELコアらしき物体が赤黒い光を放ち、神々しい雰囲気の彼女とは相反する禍々しい雰囲気だ。
「…ベム…、わしの…、倅…。」
「…ベム兄ちゃん…、どこ…?ユリア…、会いたい…。」
二体のアヤカシはそれぞれ虚ろな言動だ。ドクロイドとユリアらしきモータロイドは父娘である事が伺える。
「禍々しきドクロイドよ、覚悟!」
V-800は白銀の槍を携えてドクロイドに迫った。
「ELアーツ!イービルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ、ピアシィィィィィィィィィィィィィィング!!」
V-800は白銀の槍を七色に光らせてドクロイドの左胸を狙い虹属性ELアーツ『イービルピアシング』を全力で放った。しかし、ドクロイドは左腕で防ぎ、七色の閃光が発生した。
「ベム兄ちゃんどこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?ユリア会いたいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
連れのドクロイドの前で発する凄まじい閃光にユリアは叫び声を上げた。閃光が消えると、ドクロイドの左腕はV-800の先程の技で破壊されていた。
「…ベム…、わしの…、倅ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
隻腕のドクロイドは両眼から左右交互に呪詛光線を放ってV-800に反撃した。V-800は一発目を盾で何とか防いだが、二発目は彼女の盾を突き破り彼女の腹部に直撃した。
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
V-800は爆発と同時に悲鳴を上げた。彼女の脚等の破片が至るところに散らばったあたり、凄まじい破壊であった事が伺える。
V-800を破壊したドクロイドは村人達を手当たり次第に呪詛光線で喀血させて次々に殺めていった。村の異変に気付いた男性は喀血しながら倒れている少女を発見した。
「!!…おい、…大丈夫か?(な…、何故妹がこんな目に…?)」
男性は妹を抱きかかえた。
「…お兄ちゃん…、…苦しい…。…骸骨の…、アヤカシが…、…あたし達の…、…村…を…。」
妹は自分の兄の腕の中で息を引き取った。
(が…、骸骨だって…。)
男性は息絶えた妹を片隅に寝かしつけ、辺りを見回すと、上半身と右腕だけの女性が自分の近くに這いながら寄って来た。彼女の右手には白銀の槍が握られていた。
(身体が上半身だけでも動いてる…、という事は人ではないな…。ならばカムイか…?)
{ニュートラル男性:生命反応あり、武器:対象へ譲渡、EL残量:1m分、損傷箇所:左腕、下半身}
先程の戦闘で著しく損傷したV-800の視界には様々な情報が表示された。
「…あなたに…、この『V-800』の槍を…、託します…。…これで…、アヤカシから…、皆を…、お護り下さい…。」
男性が槍を手に取った瞬間…。
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
V-800の背中にドクロイドの呪詛光線が直撃し、そして爆発した。閃光と爆炎の後、男性は傷一つなかった。V-800の槍が虹属性のELフィールドを展開していたのだ。男性の近くには首だけになったV-800が転がっていた。
{武器:譲渡確認、EL残量:10s分、損傷箇所:頭部以外全部}
V-800は自分が槍を託した男性を見届ける形で、穏やかな笑みを浮かべながら両瞳の光が徐々に消失する形で機能停止した。
(カムイよ…、どうか安らかに…。…骸骨のアヤカシめ…、見てろよ…、俺が…、このV-800で…、貴様を…、屠ってやるぜ!!)
男性は槍の名前を『V-800』としてアヤカシの元に向かった。
そして男性は先の戦いで左腕を損傷したドクロイドと彼と一緒にいるモータロイドの少女ユリアと相まみえた。男性はドクロイドの姿から妹の仇であると断定した。
「貴様らか…、妹を殺ったのは…!アヤカシ共め、覚悟しろ!!」
「…ベムわしの倅!!」
「…ベム兄ちゃんどこ!?ユリア会いたい!!」
果たして男性は妹の仇を討てるのか?




