菫の騎士団
バイオレットナイツ団長サキュバーナの案内でバイオレットナイツ本拠のある菫の里に着いた一行だった。
「ここがバイオレットナイツの本拠がある菫の里よ。」
菫の里は真っ暗だが、紫の淡い光があちこち漂っていて神秘的な感じだった。
「この建屋がバイオレットナイツの本拠よ。」
サキュバーナは一行を本拠まで案内した。そして、一行は本拠の応接室に案内された。
「では、自己紹介を。」
「わたくしはジジョッタと申します。」
「アジューリアと言います。」
「我はムスタンだ…。」
「僕はケントで、この娘がユリアです。」
「…ベム兄ちゃん、どこ…?ユリア…、会いたい…。」
一行はサキュバーナに促されて自己紹介をした。
「サキュバーナ様、ドロップナイツ団長マキュリーナ様からの親書です。」
アジューリアはサキュバーナにマキュリーナから預かった書簡を渡した。サキュバーナは親書に目を通した。
「わかったわ。これからあなた達はここでAUとしての訓練を受けるのね。」
「はい。」
一同は頷いた。
「では、先程のはぐれAUとの一件についてお話し頂けないかしら?」
サキュバーナは一行に例の一件について話すよう促した。
「順を追ってお話しします…。ここに向かう途中で、この娘が倒れていたんです。安否を確認したところ、『ベム兄ちゃんどこ?ユリア会いたい。』という言葉しか話さないんです…。何とかコミュニケーションを取ってみたところ、兄がベムで自分の名前がユリアという事がわかりました。僕は彼女の兄と面識があります。それで、彼女を保護した上で兄に会わせようと伝えたところ喜んでくれました。その時に例の男性がやって来て、彼女を渡せと迫って来たんです…。彼は彼女をアヤカシと呼んでいました。」
最初の話はケントからだった。
「この娘がアヤカシ…と言う事は、肌の色や単発的な言動等の特徴からして彼女は『モータロイド』ね。」
「モータロイドって一体どんな存在なんですか?」
ケントはモータロイドについて尋ねた。
「モータロイドは死者の身体を魄とするEL生命体で、BEを帯びている事から手当たり次第他者を害する個体が多いためアヤカシに分類されやすいの。でも、彼女はBEの発生が抑制されているため単発的な言動のみだから黒カムイでもあるわ。」
「じゃあ、彼女は既に死んでいるという事ですか?」
「そういう事になるわね。彼女に限らず人は負の感情を抱きながら死んでしまうとアヤカシになる可能性も大きくなるの。」
「ありがとうございました。」
「では、例の男性との続きを話して。」
サキュバーナは話を戻した。
「今度はわたくしがお話しします…。あの男性の携えた槍は虹のエレメントを帯びていました。あの槍で骸骨型の巨大アヤカシを破壊したという事です…。その巨大アヤカシは彼の話からこの娘の父である事がわかりました。」
今度はジジョッタが話した。
「骸骨型の巨大アヤカシ…、間違いなく『ドクロイド』ね。ドクロイドは死者の怨念が具現化されたアヤカシよ。かなりのBEを帯びた『呪詛光線』で生者をとことん喀血させて死に至らしめるの。呪詛光線はカムイは勿論QGをも破壊してしまう程の威力よ。この真っ暗なケイブガルドでは出現しやすいし、出現してしまったら虹の力で破壊するしかないわ。」
サキュバーナはドクロイドについて詳しく話した。かなり踏み込んだ話に聞き入る一行であった。
「話はまだあるかしら?」
サキュバーナは一同に話すべき事がまだ残っているか尋ねた。
「いえ…。」
「それでは、話はおしまいね。これから『AU屋敷』に案内するわ。あ、その前に…。ユリアだったわね。フードで肌を隠しなさい。あなたがモータロイドである事が他人に知れたら大変な事になるわ。」
「…ベム兄ちゃん…、どこ…?ユリア…、会いたい…。」
サキュバーナはユリアに黒いフードを着せた。ユリアも少し嬉しい様子だった。
「それから、ジジョッタ。ユリアの世話はあなたがなさい。あなたに彼女のBEを抑制する力があるの、わたしわかってるから。」
「はい。」
サキュバーナはジジョッタにユリアの面倒を見るよう伝え、一行を菫の里の中にあるAU屋敷に案内した。
ケイブガルドのAU屋敷は床が畳である事をはじめ、他のガルドのAU会館とは違う雰囲気だった。
「何かいつもと違う雰囲気ですね。」
「サクラヘイムのような感じでワクワクするわ。」
(アジューリア様もサクラヘイムが好きなんだな…。)
その雰囲気にケントとアジューリアはワクワクしていた。その一方で…
「我は下半身が馬だから致し方あるまいが…。」
「大丈夫です。わたくし達もいます。」
「…ベム兄ちゃん、どこ…?ユリア…、会いたい…。」
ムスタンは厩で寝泊まりの始末で、ジジョッタにユリアに一体のバクットも一緒だった。




