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将軍王のココロザシ  作者: TAK
第一部第五章~アヤカシと戦う者
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青白き肌の少女

バイオレットナイツに向かう途中で青白い肌のレスティーンの女性を発見した一行は、彼女の突拍子もない言動に戸惑った。

「…そうだ…、一つ聞いてみよう。君、お家はどこだい?」

ケントは彼女に自分の家がどこか尋ねた。

「…ベム兄ちゃん…、…どこ…?…ユリア…、…会いたい…。」

「!…なっ…。」

ケントは彼女のちぐはぐな受け答えに動揺した。


一方、夜のアスティア城では、城門で極めて野蛮な男性が門番の胸ぐらを掴んで怒号を上げていた。

「てめえ、このダッグ様の話聞いてんのかよ!!」

「…全ては…、…スパイデル様の…、…為に…。」

「スパイデル様スパイデル様ってフザけてんのか、あぁ!!」

ダッグは門番がまともな受け答えをしない事に激怒していた。間もなく二人を霧が包み込んだ。

「な…、何だァ…!?…ぐっ…!」

ダッグは何者かに霧の中で取り押さえられた。霧が晴れると彼を取り押さえていたのはBBB団から傭兵としてアスティア王スパイデルに雇われたベムだった。

「貴様、門番に狼藉とは何事だ!」

「畜生、離しやがれぇ!」

「生憎だが貴様のような狼藉者をのさばらせる訳にはいかない!門番、すぐ様こいつを拘束しろ!」

ベムは居合わせている門番に拘束を命じた。

「全てはスパイデル様の為に!」

門番は承諾し、ダッグを縄で拘束した。

「な…何で『スパイデル様』しか言わねえのにこんな真似出来んだよ…!」

ダッグは言動と行動が一致していない門番に違和感を覚えた。

「こいつは話す事は出来ないが、相手の話を理解した上で的確に行動出来る。見くびらない方がいいぞ!」

ベムはダッグに忠告した。

「なあ…、頼むよぉ…。スパイデルの旦那に会わせてくれよぉ…。俺、旦那の嫁の居場所知ってっからさぁ…。」

ダッグはベムに自分の目的を伝えた。

「わかった、俺からマスターに伝えておく。門番、この『蛮者(ばんじゃ)』を牢屋に連れてくぞ!」

「全てはスパイデル様の為に!」

「このダッグ様が蛮者なら俺より強いてめえは化物だな!!」

「ほう…、俺が化物か…、蛮者よりはましだな…。」

ベムは門番と一緒にダッグを牢屋に連行した。その後、ダッグはスパイデル王の聴取が終わると例の狼藉の罪ですぐ処刑されるのだった。そして、彼がスパイデル王に齎した情報が祖国の危機に直結している事をケントは未だ知る由もなかった。



蛮者…『心なき者』の中でも極めて粗暴な出で立ちと物腰で、目的の為なら略奪や破壊に殺人さえも厭わない野蛮な者の蔑称(べっしょう)。特に賊の事を呼ぶ事が多い。基本的に強者には従順で弱者を虐げる『従強(じゅうきょう)虐弱(ぎゃくじゃく)』の考えで、自分の都合次第では裏切りも厭わない者も多い。

従強虐弱…ブルドラシルの四字熟語の一つで、強者に媚び(へつら)い弱者を淘汰する事を指す。この考えを持つ者は極端に強い蛮者に限らず、『その他大勢』の形で一般人にも結構多く、迫害や差別が後を絶たない。また、AUは何かと面倒な事が多く、従強虐弱の者はまずなりたがらない。『その他大勢』になれない独特の雰囲気の者、すなわち『好漢(こうかん)』や『ピュアっ()』が周囲から強引にAU等に持ち上げられる事も少なくないため、AUや王侯貴族の世界は『ブルドラシルの芸能界』とも呼ばれている。

好漢…独特の雰囲気を持つ男性で、発音が(なま)って『宝漢(ほうかん)』と呼ばれる事もある。『生ける宝』なまでにAUの才を持つ者が多い。また、アースガルドの「好漢」とは意味が違う。

ピュアっ娘…独特の雰囲気を持つ女性で、好漢同様AUの才を持つ者が多く、好漢と一括りで『ET』と呼ばれる事もある。

ET…「エターナル(Eternal)ティーン(Teen)(永遠の13~19)」を意味する、『好漢』『ピュアっ娘』を一括りにした呼称。



話を戻して、ケントは青白い肌の少女とコミュニケーションを取り続けていた。

「聞き方を変えてみよう。君の兄はベムという名前の人かい?」

今度は『はい』『いいえ』形式で尋ねた。

「…ベム兄ちゃん…、…どこ…?…ユリア…、…会いたい…。」

言動は変わらないが、頷いている。

(頷いているという事は…、『はい』という事なんだな…。)

ケントは彼女に意思が通じて安心した。

「君の兄がベムというのはわかったよ。それから、君の名前はユリアかい?」

彼女の言動を元に今度は彼女の名前を尋ねた。

「…ベム兄ちゃん…、…どこ…?…ユリア…、…会いたい…。」

言動は変わらないが、やはり頷いている。

「わかった、ユリアだね。そうだ、ユリア。君の事は僕達が保護しよう。そして、君の兄に会わせてあげよう。」

ケントはユリアに自分達が保護すると同時に彼女の兄に会わせる事を持ち掛けた。

「…ベム兄ちゃん…、どこ…?ユリア…、会いたい…!」

言動は変わらないものの、無表情ながらも嬉しい様子のユリアだった。そんな彼女を見て一行も喜んだ。しかし、そんな喜びをぶち壊す事が起きた。

「そこの一行!!このアヤカシ娘をこっちに渡して貰おうか!!」

一行が声のする方を向くと、白銀の槍を携えた男性がいた。果たして、ケント達は彼からユリアを護れるのか?

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