ドロップエムブレム
アクアポリス最深部に着いた一行を待っていたのは、大きな水槽から巨大な上半身のグウレイアと彼女のクライアントのマキュリーナだった。
「マ…、マキュリーナ様…。この大きな女性は…、カムイですか…?」
ケントは大柄なグウレイアに驚いていた。
「ええ、彼女は水の女王グウレイア。水のクイーンガーディアンよ。わたし、彼女のクライアントのため、『水の聖女』とも呼ばれているの。」
「初めまして、ムスタン、ケント。あなた達の事はマスターから聞き及んでいます。」
「グウレイア、二人にエムブレムを授けてあげて。先の戦いでレスティーン達の救出には至らなかったけど、ムスタンは追撃してきた艦を撃退する等獅子奮迅の活躍で、ケントは海に投げ出された兵士達の救助に携わった功があるの。」
マキュリーナはグウレイアにムスタンとケントの功を伝えると同時にエムブレムを授けるよう促した。
「ふふ…、わかりました…。ムスタン、ケントの両名に『雫の紋章』を授けます。これであなた達も水の加護を受ける事ができます。」
グウレイアは左胸に両手を当てると左胸が青く光り出し、二個の青い雫型のエムブレムが現れた。グウレイアは二人にそれぞれエムブレムを与えた。
「感謝いたす…。」
「ありがとうございます。」
二人は礼を述べた。
「ところで…、ジジョッタには…?」
ケントはジジョッタがまだエムブレムを授かっていないのか気になった。
「わたくしなら既に頂きました。この背中に雫の紋章が…。」
ジジョッタはケントに背中の箱らしき物を見せた。
「ところでマキュリーナ様、ココロザシはどうされましたか?」
今度は愛剣ココロザシについて気になった。
「ジジョッタの背中の箱の中にあるわ。ジジョッタ、背中の箱を開けてみて。」
「はい。」
マキュリーナに促されたジジョッタが背中の青い箱を開けるとココロザシが差し込まれていた。
「ケント様、ココロザシが本当に必要な時はわたくしにお申し出下さい。」
「うん。その時は宜しく頼むよ。」
ジジョッタは箱を閉じた。ケントは愛剣ココロザシがある事を喜んだ。
「ケント、それからジジョッタの事だけど…。例え彼女が何者だとしても、仲間や相棒として接してあげて。それが後に彼女を救う事に繋がる筈だから…。」
「はい。」
マキュリーナはケントにジジョッタとの接し方について説いた。
エムブレムの授与等が一段落し、マキュリーナはアジューリアに今後の事を話すよう促した。
「アジューリア、あなたの今後について皆に伝えて。」
「はい…。ケントとムスタンは既にご存知でしょうが、BBB団に連れ去られたレスティーン達を救出する筈が失敗した結果、ミドルガルドのアスティア王国に傭兵として移送されてしまいました…。それで…、私はBTを抜け、AUとなって彼らを救出する任務を続行致します…。どうか…、あなた達のお力を…、お貸し頂けないでしょうか…?」
「皆、都合はどうかしら?」
「…アスティア王国は僕もいつか戦わねばならない相手です…。喜んで引き受けましょう…。」
「わたくしも…、ケント様と同じです…。」
ケントとジジョッタは快諾した。
「ムスタン、あなたは?」
「我は…、護るべき者を護り…、戦うべき相手と戦うのみ…。故に…、お引き受け致そう…。」
ムスタンも承諾した。
「ありがとう…。」
アジューリアは感激した。
「これで決まりね。ではアジューリア、この親書を『ケイブガルド』の国境なき騎士団『菫の騎士団』の団長にお渡しなさい。」
マキュリーナは書状をアジューリアに渡した。
「承知しました。」
アジューリアは承諾した。
「では、グウレイア。アジューリア達をケイブガルドへ送り届けてあげて。」
マキュリーナはグウレイアに一行をケイブガルドへ送るよう伝えた。
「ふふ…、わかりました…。」
グウレイアは快諾すると、ケント達を泡の中に包み込んだ。そして、泡を抱くと一行は彼女の身体の中に吸い込まれた。
「ドロップナイツにも風の加護がありますように。」
「あなた方にも真の業を…。」
「皆に風の加護があらん事を…。」
「団長…、いえ、マキュリーナ様…。お達者で…。」
「あなた達に水の加護がある事を願っているわ…。」
一同が別れの挨拶をした際、アジューリアとマキュリーナは互いに涙を流した。グウレイアが水槽の下に潜ると水槽は青い光を放った。かくしてケント達はブラーガルドを出発し、新天地ケイブガルドに向かった。ケイブガルドでケント達を待ち受けるのは果たして…?




