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将軍王のココロザシ  作者: TAK
第一部第四章~ミストヘイムの戦い
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水の聖女の裁定

BT陣営の旗艦の甲板の上に多くのBBB団の捕虜達が引き立てられていた。BT陣営の指揮官マキュリーナの美貌を称えたグラントに彼女は重い口を開いた。

「…褒めて下さるのは感謝します…。…ただ…、…あなた達にとって不本意な処遇が覆る訳ではありません…。」

マキュリーナは褒めてくれる事に感謝するが、処遇について何の影響もない事を捕虜達に伝えた。

「…まず…、…あなた達に問います…。…答えたくないならば…、…黙秘の権利を行使して下さって構いません…。」

マキュリーナは捕虜達に質問をする際に黙秘権を与えた。

「…あなた達が連れ去ったレスティーン達の行方はどこ?」

海戦の決着後、アジューリアから救出作戦に失敗した事を聞いたマキュリーナは捕虜達に尋ねた。

「……」

捕虜達は揃いも揃って黙秘した。大抵の人は黙秘権を与えられたなら遠慮なく行使するのが当然の流れと言えるだろう。しかし、一人が重い口を開いた。

「…このグラント=ゼングがお話し致そう…。」

グラント艦長が申し出た。

「艦長!黙秘権を与えられたなら遠慮なく行使するものでしょう!」

「むざむざ敵を利する真似をするっすか!?」

捕虜達は上官であるグラントの申し出に異を唱えた。

「…良い…、…わしは戻ったら間違いなく処刑されるだろう…。…ならば…、…敵にも真実を伝えて死すのが一番よ…。」

グラントは自分の死期を悟り、真実を伝える道を選んだ。

「…水の聖女よ…、順を追って話そう…。我々BBB団はミドルガルドのアスティア王国と手を携えたのだ…。その(よしみ)でレスティーンどもと我がBBB団最強のティーン兵を傭兵としてそこに送った次第だ…。」

(…ミドルガルド…!?…アスティア王国…!?…まさか…、…BBB団とアスティアが…!?)

ケントはグラントの答えに大いに動揺した。自分側からしたら結構最悪の組み合わせである事も拍車をかけていた。

「ミドルガルドだって!?」

「他のガルドに送られたとなれば…、我々はお手上げだ!」

「ああ…、国境なき騎士団は他のガルドに単独での軍事行動は出来ない制約がある!もし行動するとしたら…、抜けてAUになる以外にない!」

「しかし…、AUの道も平坦ではないぞ…。かなりの年月がかかると言うではないか…。」

「…いばらの道ってやつか…。」

ケントのみならずBTの兵達も動揺した。

「皆、静まりなさい!グラント=ゼング将軍…、私の質問にお答え頂き感謝します…。それでは…、これからあなた達の処遇を…」

「わしに死を…、わし以外の皆の命はお助け頂けまいか…。」

グラントは自らの死と引き換えに部下の助命を申し出た。

「…わかりました…。…捕虜達の命はお救いしましょう…。」

マキュリーナは承諾した。

「団長、良いのですか?BBB団は不倶戴天の敵ですよ。敵を助けるのは明らかに自らを不利にするような物です!」

マキュリーナの処遇にBTの一人の兵士が異を唱えた。

「…わたし、あの時言ったはずよ!…この戦いは相手を壊滅させるための戦いではないと!」

「しかし…。」

「くどい!!…誰かある、この者を独房へ連行なさい!」

「はっ。…ご同行願おう…。」

「団長…!…何とご無体な…!」

マキュリーナの逆鱗(げきりん)に触れた兵士が他のBTに両腕を抱えられる形でつまみ出された。この光景に捕虜達も戦慄した。

(マキュリーナ様…、普段と違う感じだな…。)

ケントもやはり戦慄していた。なお、この兵士は後にBTからポリスヘイムの『ソイルプラント』の保全に左遷されるのだった。



ソイルプラント…ブルドラシルの各ガルドに存在する下水処理施設。プラント内部にある『ソイルリアクター』で汚水を汚泥と水に分離させ、汚泥は手動で回収する必要がある。その汚泥のBE濃度が結構高いため、そこでの作業を望まない者も多く、罪人に回される事も少なくない。

ソイルリアクター…『ELリアクター』の一種で、土属性のELリアクター。『ロードガルド』のカムクリ・『ゴーレム』の動力炉にも使用される。

ELリアクター…自然界の特定の物質から発生するエレメントを増幅させてエネルギーに変えて稼働する。カムクリの動力炉にも使用される。

ロードガルド…いわゆる『地底界』で、古代文明が(もたら)した機械技術に優れるガルド。また、鉱物資源も豊潤で、鉱業・重工業が産業の主流となっている。

ゴーレム…特殊な土を魄とするロードガルドの機械技術により製造されたカムクリ。物々しさとかなりの身体能力から軍事転用される事も少なくない。そのため、国境なき騎士団ではゴーレムに限らずカムクリを軍事利用する場合の取り決めがなされている。



不手際の収拾後、マキュリーナはグラントに尋ねた。

「…グラント=ゼング将軍…、…あなたは…、…どのような最期をお望みですか…?」

「…『サクラの死』を…、…遂げさせて頂きたい…。」

(…サクラの死…?…サクラヘイムの何かか…?)

ケントは『サクラの死』について気になった。

「…わかりました…。」

マキュリーナは承諾した。BBB団ベテラン将軍グラント=ゼングはどのような最期を遂げるのか?

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