四面楚歌
ミストエレナ島の砦に囚われていたレスティーン達の救出に失敗したケント達は本島からの援軍に包囲されていた。
「…察知されてしまったのね…。わたし達の思惑を…。」
「どうやらここの兵どもはかなりの訓練を積んでいるようだな…。でなければかくも迅速に行動出来る筈がない…。」
歴戦の戦士であるムスタンはBBB団の兵質の高さを感じていた。
(今回は失敗してしまった…。いや、それどころかこれが最期になるのか…。)
ケントは周囲を取り囲む大軍に諦め半分になっていた。
「隊長、殿はそれがしらにお任せ下さい!」
アジューリア直属のBT正規兵達が殿を申し出た。
「あなた達…。」
「隊長とAU方はここで死すべきではありません。あなた方にもしもの事があったらそれがしは団長に顔向け出来ません!」
「でも…。」
「シュバリアの戦士よ、隊長とティーンのAUを背に乗せてお逃げ下さい!死を恐れて逃げるのは恥でも、誰かを護りながら逃げるのは決して恥ではありません!」
正規兵はムスタンにアジューリアとケントを託した。
「承知した…。アジューリア…、ケント…、乗られよ…。我々には一刻の猶予もない…。」
「わかったわ…。では、あなた達…、ご武運を…。」
「はい…。(また僕は誰かを犠牲にしてしまうのか…)」
ムスタンはアジューリアとケントを自分の背中に乗せた。
「では…、ぬしらに風の加護を!」
「シュバリアの戦士方に水の加護を!」
ムスタンは正規兵に別れを告げ、盾を敵に構えた。
「お二方…、しっかりつかまっておれ…。ELアーツ!ハヤテぇぇ、アサルトォォ、チャァーージ!!」
ムスタンの盾が四つ葉のクローバーの形をした緑色の光を放ち始めた。そしてムスタンはELアーツ『ハヤテアサルトチャージ』で敵陣に盾を構えながら突進していった。ムスタンの強硬突破に群がる敵兵はことごとく跳ね飛ばされていった。
(これが…、ELアーツ…。いつか僕も繰り出してみたいな…。)
ケントはムスタンの獅子奮迅ぶりを間近に見て憧れを覚えた。
そして砦の外に出るに至ったケント達だった。
「何とか脱出出来ましたね…。」
「あれ?追っ手が来ないわ。」
追っ手が来ない事にアジューリアは違和感を感じた。
「ムスタン様に恐れをなしたかもしれませんね。」
「いや、それは違うと思うな…。彼奴等の兵質は高い…。我に恐れをなす事はまずない筈だ…。」
「なら…、敵の注意がわたし達から別の方に向いているという事ね…。!…今度は包囲している艦が標的に…!急いで艦に戻りましょう!」
ケント達はミストエレナ島に泊めてある自分の艦に戻った。
「隊長、首尾はいかがでしたか?」
艦で待機していた正規兵はアジューリアに首尾について尋ねた。
「それよりも、本島を包囲している艦の救援に向かうわよ!」
「隊長、まずは旗艦の団長に首尾に関する報告が先決かと存じます。」
「悪い報せ程兵の士気を下げる物はないわ!良い報せは即座に、悪い報せは事が終わってから!そうでしょう!」
「仰る通りです。それがしも腹をくくりましょう。」
アジューリアは兵の士気を下げまいとして他の部隊に自分達が救出に失敗した事を隠しつつ、正規兵に直ちにに救援に向かう事を伝えた。
一方、ミストヘルバ島ではBBB団の艦が島から出撃し、島を包囲中のBTの艦に無数の火矢が放たれた。艦は間もなく炎上し、多くの兵士達が海に投げ出された。果たしてアジューリア達の艦は救援に間に合うだろうか?




