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将軍王のココロザシ  作者: TAK
第一部第四章~ミストヘイムの戦い
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ケント VS ベム

レスティーン達の救出の任務を受けたケントはレスティーン達を自分達の船に誘導しているベムに遭遇した。

「ベム、そこをどけ!今お前にかまけている暇はない!」

ケントは剣をベムに突き付けて言い放った。

「俺も今貴様にかまけてる暇はない!俺に命令した挙句剣まで突き付けた事後悔させてやるよ!」

ベムは言い返し、矢継ぎ早にケントの剣を短剣で払って突進し、もう一方の短剣でケントの顔めがけて切りつけた。

「くっ…!(何て速さだ…)」

ケントの頬に微かな出血が出た。ケントは自分の頬の血を手に取って見てみると戦慄した。

(!…これが…、本当の戦い…)

「今のは小手調べだ!俺を見くびると死ぬぞ!」

(な…、まだ本気ではないだと…)

ただでさえ戦慄しているケントは相手のかなりの実力にますます戦慄した。

「貴様に聞きたい事がある。アクアヘイムで一緒だったあの女とあの変わった剣はどうした?」

ベムはケントにジジョッタとココロザシについて尋ねた。

「…置いてきた…。」

「何故だ?ここは誰もがいつ死んでもおかしくない所だぞ。」

「だからこそだよ…。大切な者に危険な真似はさせられないし…、あの剣を血で汚したくないからな…。」

「そのこだわりが貴様の命取りだ。いや、そもそも貴様はあの時俺の誘いを受けるべきだった。俺の誘いを受けてたら生き永らえるだけでなく、最強の英雄になりえたものを…。どこまでも救いようのない貴様に俺が引導を渡してやるよ!」

ベムは正面から突進した。

(くっ…もはやこれまでか…、…あれ…!?)

ベムは突進と見せかけてケントの頭上を跳んだ。

「貰ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ベムが降下と同時に短剣でケントの(うなじ)を斬りつけようとした瞬間、ベムに向けて矢が飛んで来た。矢に気づいたベムは咄嗟に短剣で矢を弾き落とした。着地したベムが矢が飛んで来た元を見てみると弓を構えたアジューリアが立っていた。

「くっ…、またしてもあのBTの女か!」

「あなたに…、ケントを…、()らせはしない!!」

アジューリアはベムに言い放った。彼女の極めて強気な一言にベムは一瞬うろたえた。

(!…今だっ!)

ケントは一瞬の隙を突きベムに斬りかかった。ところが、ベムはすかさずケントの手に蹴りを放って反撃し、彼の剣を蹴り落とした。

(…くっ…、やはり一枚上手だったか…。)

ケントはベムにとどめを刺されるのではないかと思った。しかし、ベムは追撃をしなかった。彼の実力ならばもし追撃したら間違いなくとどめを刺せただろう。

「ケントとか言ったな!もうすぐ本島から地下通路を伝って援軍が来る!貴様らは間違いなく蹂躙されるだろう!俺の手を汚すまでもなくな!さらばだケント、二度と貴様と会う事もないだろう!」

ベムはケントに吐き捨てた後、自らを霧に巻いて退散した。


ベムが退散して間もなく雑兵相手に奮戦していたムスタンに数人のBT兵もケント達の元に駆けつけた。

「大丈夫か?お二方…」

「ええ…。」

「はい…。」

ムスタンの呼びかけに二人は応じた。

「レスティーン達はどうした…?」

ムスタンは目的の首尾について二人に尋ねた。

「それが…、先を越されました…。」

ムスタンの問いに答えたのはケントだった。

「何ですって!?」

アジューリアは不首尾に終わった事に狼狽した。

「僕がここに来た時、さっきのティーン兵がレスティーン達を率いていたんです…。近くに泊めてあった自分達の船に皆…。」

「まさか…、今向こうの遠ざかっている船にか…?」

ムスタンは水平線の船を指さしてケントに尋ねた。

「はい…。あのティーン兵の『かまけている暇はない』という言葉から、さっきの戦いはレスティーン達を船に乗せるための時間稼ぎだったんです…。」

「明らかにしてやられたわね…。不本意だけど…、撤退するしかないわ…。」

「ところがそうもいかぬようだ…。」

ムスタンは周囲を本島の援軍に取り囲まれている事に気づいた。果たしてケント達はこの窮地を脱する事が出来るのか!?

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