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将軍王のココロザシ  作者: TAK
第一部第三章~独りで始めるAU生活
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初めての定食

 AU会館併設の食堂『マミーカフェ』に入ったケント。食堂内では色んな人々が食事をしていた。ケントは近くの空いているテーブルに座ると、店員の女性がケントに歩み寄って来た。


「いらっしゃいませ。お客様、『食券』はお持ちでしょうか?」

「ショッケン!?何ですか、それは?」


 ケントは食券そのものが理解できていなかった。


「食券は、ご注文の際に必要な札です。まずは食券をお買い求め下さい。」

「はい。それで、どこで食券を買うんですか?」


 ケントは食券はわかったが、その購入方法についてはわからなかった。


「入ってすぐの所に『券売機』があります。そちらでお買い求め下さい。」

「ケンバイキですね、わかりました。」


 ケントは入口の近くにある橙色の券売機に向かった。しかし、何が何だかわからなかった。


「あの……、この券売機の扱い方がわかりません……。」


 店員はケントの方に再び歩み寄った。


「まず、券売機の台に12ゲルダ載せます。」


 ケントは店員の案内で12ゲルダを台に載せた。


「それから、ボタンを押します。」


 店員はボタンのある方を指さし、ケントがそのボタンを押すと、台が中に沈んでいった。暫くして、小さな札を載せた台が上ってきた。


「この札が食券です。」

「ありがとうございます。(それにしても券売機って不思議な物だな……)」


 ケントは親切な店員に感謝すると同時に券売機の仕掛けに驚いていた。


「少々お待ちくださいませ。」


 テーブルに戻ったケントは店員に食券を渡して、何とか食事の注文に至った。テーブルの端には小さな冊子が立てかけてあった。ケントは冊子を読んでみた。


(『マミーカフェでは、各地域の食材を使用し、「母の味」を意識した家庭料理を提供しております。』……。『母の味』か……、僕の母は僕を産み落としてお亡くなりになったからな……。母の事は全く知らないや……。)


 ケントは『母』という言葉に、生まれてすぐに亡くなった母について思い起こした。



 暫くして店員が料理を運んで来た。トレーにはサラダスープ、焼き魚withサラダソテー、フレッシュサラダ、パン、泥乳(でいにゅう)に茶らしき飲み物とフォーク、ナイフ、2種のスプーンが載っていた。


「本日は生きじめ『ブラックギル』の塩焼きの『リーモン』和え定食です。ごゆっくりどうぞ。」

「ありがとうございます。」


 店員は一礼して他の客の対応にあたった。

 ケントはまず、スープ用スプーンでサラダスープをすくって飲んでみた。


(……これは美味しい……!それも王宮の料理よりずっと……。)


 ケントは自分の故郷の王宮料理よりも美味しい味に驚いた。次はサラダソテーを食べてみるとやはり美味しく感じた。その次にフレッシュサラダを見てケントは何かに気づいた。


(このフレッシュサラダ……、ドレッシングではなく塩みたいな物が振ってある……。)


 ケントが食べてみると、ドレッシングと同じ味がした。そしてもう一つの何かに気づいた。


(しかも、ドレッシングと同じ味なのにベチョベチョしていない……。)


 更に次はメインディッシュを食べてみた。


(小さな骨が気になるけどとても美味しい魚だ……!王宮の肉料理より遥かに……)


 ケントは王宮と比べても美味しいと感じた。今度は見た目は普段と変わらないパンをちぎってみると、中身が赤かった。


(何だ、このパン……、中身が赤いぞ……。しかも少し臭う……。)


 そして食べてると、違和感を感じる味だった。


(!……ちょっと酸っぱいぞ……。でも……、まずくはないな……。)


 ケントは酸っぱいパンに違和感を感じながらも美味しく味わった。今度はデザート用スプーンで赤紫色の半固体の何かが載った泥乳を数回混ぜてから食べてみた。


(酸っぱい……、けど甘味もあって美味しい……。)


 そして、最後に茶らしき飲み物を一口飲んでみた。


(このお茶……、とても香ばしくて美味しい……。水が豊かな地だけの事はある……。)


 ケントは王宮の食事と比べてここまで質の高い料理があるのかと驚きつつ、味わいながら完食した。



リーモン……ブルドラシルでの柑橘類の一種。楕円形の黄色い果実で、かなり強めの酸を帯びた果汁が特徴で、塩辛い料理にかけて使われる。酸っぱくも香りが良く、臭くて酸っぱい酢が苦手な人でも美味しく味わえる。また、皮も香りが良い為、刻んで使用される。アースガルドでは『レモン』と呼ばれるが、ブルドラシルでも訛ってそう呼ばれる事も。

泥乳……乳製品の一種で、乳類を発酵させた発酵食で、やや強めの酸を帯びている。また、泥のような質感から『()()()()』と揶揄される程で、マストフードの一つ。アースガルドでは『ヨーグルト』と呼ばれる。



「ごちそう様でした。」


 完食したケントは、店員に一礼した。


「見事完食されたため、1ポイント付けておきます。」


 店員はケントにポイントカードを渡した。


「ありがとうございます。突然で失礼ですが、フレッシュサラダにかけてあった塩みたいな物は何でしょうか?」

「『フレッシュサラダ用シーズニング』です。ドレッシングと同じ味ながらも顆粒状にしてベチョベチョ感をなくしました。」

「はい。次に泥乳の上に載っていた赤紫色の半固体の物は何でしょうか?」

「『ベリージュレ』といいます。ブラーガルド原産のベリーを使用したジュレをはじめ、様々な加工品があります。」

「それから、あの赤いパンは一体何なのですか?少し臭ってて酸っぱいでしたが。」

「『ナットウメパン』といいます。ブラーガルドの遥か東の『サクラヘイム』のマストフード『イトヒキマメ』こと『ナットー』と『ウメボシ』をペースト状にしてパン生地に練り込みました。」

「最後に、あのお茶は一体どんな茶ですか?紅茶とは全く違う味でしたが。」

「『サクラムギ』を使用した茶です。粒が大きいサクラヘイムの麦はパンではなく、茶に使われます。誰でも美味しく飲める茶です。」

「色々ありがとうございました。(サクラヘイム……、聞いた事のないヘイムだな……。)」


 ケントは店員に改めて一礼して食堂を後にした。



(遥か東のサクラヘイムか……、これから行く購買部に聞いてみよう……。)


 今度は購買部に向かった。購買部にはどんな商品が陳列してあるのか。ケントはワクワクしていた。

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