雫の騎士団
アクアポリス…見るからに神聖な雰囲気の大理石の神殿で雫の騎士団の本拠地だ。ケントとジジョッタはアジューリア達の案内でアクアポリスに着いた。
二人はアクアポリス内の応接室に案内された。応接室に団長であろう、腰まで伸びた青髪の白装束で雫のチョーカーで吊り目の美しい女性がアジューリアと共に現れた。
「ケントにジジョッタと言ったわね。わたしはドロップナイツ団長の『マキュリーナ』よ。配下のアジューリアがお世話になったわね。」
「初めまして。早速で失礼ですが、クローバーナイツ団長エルフェミス様からの書状です。」
ケントはマキュリーナとお互い挨拶をかわした後、エルフェミスから預かった書状を渡した。マキュリーナは書状に目を通した。
「わかったわ。クローバーナイツからのAUとしての訓練の引継ぎという事ね。」
「ありがとうございます。」
二人はマキュリーナに一礼した。
「アジューリア、これから二人と大事な話をするの。お人払い願えるかしら。」
「はい、団長。」
マキュリーナはアジューリアに応接室を一旦出るよう促した。
「アジューリアから話は聞かせて貰ったわ。あなた達はこのアクアポリスに来る前にBBB団の襲撃に遭ったそうね。その一部始終について聞かせて貰えないかしら?」
マキュリーナは二人にBBB団の襲撃について尋ねた。
「はい…。アクアヘイムの道中で不穏な感じがしたのです…。誰かに後をつけられているような気が…。暫くして突如霧がわたくし達を覆ったのです。霧の中で何者かがケント様を狙っている事に気づいたわたくしは身を挺して…。」
最初に答えたのはジジョッタだった。
「霧の中から仕掛ける…、BBB団の典型的な手法ね。どうして気づいたのかしら?」
「わたくし…、視界の悪い場所でも物体を捉える事が出来るのです…。」
「それだけではないですよ。二階から飛び降りても何ともなかったり、お姫様抱っこしながら真っ暗な森の中を猛スピードで駆けたり、大柄な男性を押さえつけたり…と色々やってましたから…。ね、ジジョッタ。」
「ケ…、ケント様…!」
人間離れした自分の能力にジジョッタは恥ずかしい思いでいっぱいだった。
「ふふ…、なるほどね…。では、続きについて話して貰えるかしら?」
マキュリーナは続きを話すよう促した。
「霧が晴れたら僕の上にジジョッタがいて、BBB団のベムというティーンの男性が僕に『運がよかったな、連れがいなければ連れ去られていたところだ』と言い放ちました。そして僕にBBB団に入るよう勧誘してきました。断ったら彼は僕の命ごと僕の持っている剣を奪ってやると両手に短剣を構えて向かってきました。そこにBTがやって来て…、という事です。」
今度はケントが答えた。
「ケント、ベムとかいう者の狙っていた剣について出して頂けるかしら?」
マキュリーナはケントにベムからターゲットとされた剣を出すよう促した。
「はい、このココロザシという剣です。」
ケントはココロザシを鞘から抜いてテーブルに置いた。
「いかにもカムイの祝福を受けた感じの美しい剣ね。」
黄緑色の輝きを放つココロザシにマキュリーナは恍惚とした。
「はい、インドラ様が僕に創って下さいました。」
「インドラ様!?」
「ご存じなのですか?」
「ご存じも何も…、わたしも彼女からクローバーエムブレムを授かっているの。だから風の力も使えるわ。」
マキュリーナはクローバーエムブレムを見せた。
「それから、わたしは彼女のクライアントのエルフェミスとも親友なの。あなた達から見た彼女はどうだったかしら?」
マキュリーナは二人に自分の親友エルフェミスについて尋ねた。
「エルフェミス様のあの知性と統率力…、一介の騎士団を束ねる者に恥じない器量だと思いました。それから、僕達がグルンガルドを後にする際も、騎士団総出で見送って下さいました。僕は気丈さと優しさを兼ね備えたエルフェミス様のようなリーダーシップを持ちたいと思いました。」
「そうね…。わたしの知っている彼女で安心したわ。」
マキュリーナは親友が出逢った頃と同じで胸を撫で下ろした。
「あ…、最後だけど、このココロザシについて貸して貰えないかしら?大丈夫、必ず返すから。」
「はい。」
ケントはココロザシを鞘に戻してマキュリーナに渡した。
「アジューリア、もう話は終わったわよ。応接室に戻って来て。」
マキュリーナはアジューリアに応接室に戻るよう伝えた。
「戻りました、団長。」
アジューリアが応接室に戻ってきた。
「アジューリア、ケントをAU会館へ案内して。わたし、ジジョッタと話したい事があるの。」
「承知しました。」
ケントはアジューリアの案内でAU会館に向かった。
(マキュリーナ様はジジョッタやココロザシをどうするつもりなんだろう…。)
ケントはマキュリーナのジジョッタへの待遇と愛剣ココロザシがどう扱われるのか少し気になった。




