主の手紙
『親愛なるケントとジジョッタへ。あなた達がこの手紙を読んでいる頃には、わたしはこのグルンガルドを離れている事でしょう。あなた達の力になってあげられなくてごめんなさい。ケント、あなたはモルガナに向かう途中で賊に囚われたわたしを救って下さいました。そして、その賊の助命を願うわたしに力を貸して下さいました。わたしのお父様である将軍王の「ココロザシ」を体現しているあなたこそわたしの求めていた「未来の英雄」です。ジジョッタ、あなたはわたしに代わってその「未来の英雄」の力になってあげて下さい。あなた達がこのグルンガルドに戻った頃にはわたしもそこに戻りますので大丈夫です。ただ、その時にはわたしはもうあなた達の知るわたしでなくなっているかもしれません。その時は「その時のわたし」として接して下さい。わたしの願いはただ一つ、恩人であるあなた達と一緒に故郷アスティアの土をもう一度踏みたいのです。それでは、あなた達に将軍王のご加護がありますように。ヨシーナより。』
(ヨシーナ様…僕達は必ず戻って参ります。)
ケントは未来の英雄としての決意を秘め、生きる事を決めた。エルフェミスは二人が手紙が読み終えたのを確かめると、
「ヨシーナの心の傷は…、とても深かったの。心に深い傷を負った彼女にはあなた達と同じようにAUとしての訓練は出来ないし、あなた達も賊に狙われている彼女を守りながらの訓練は困難。だからわたしは彼女をインドラの元に連れて来たの。インドラ、続きを話して。」
エルフェミスはインドラに続きを促した。
「心の傷の深い彼女は『穏やかなる地』で魂を育むのが適切と判断し、わたしは彼女をその地へ誘いました。彼女は最後まであなた達の事を気にかけていました。あなた達に無事でいて欲しいと…。未来の英雄よ、あなたの主・ヨシーナの望みによりあなたの為の武器を創ります。」
インドラは羽衣から剣を生み出した。剣は黄緑色の輝きを放った。
「さあ、この剣に銘を打ちなさい。」
インドラはケントに剣を授けた。
「『ココロザシ』…、僕はヨシーナ様の想いが詰まったこのココロザシを生涯の相棒としよう!」
そして、ココロザシの刀身に『志』の文字が刻まれた。
「ココロザシ…、素敵な名前です。その名に恥じぬAUになるよう努めなさい。」
「わかりました。…あの…、インドラ様…羽衣は大丈夫ですか?」
ケントはインドラの失われた羽衣が気になった。
「ええ…、エアロストールですね…。それなら大丈夫です。風でまた生み出せますから…。」
インドラが瞳を閉じて左胸に両手を添えると、彼女の左胸が七色に光り始めた。そして、エアロストールは再び出現した。ケントはエアロストールが戻って胸を撫で下ろした。
「良かったわね、ケント。クイーンガーディアンから武器等を授かる事は滅多にない事よ。」
「ありがとうございます。」
「礼ならば主に仰せ下さい。これからも茨の道を歩むあなたに武器を創るよう頼んだのは彼女ですから。」
「わかりました。それから、これから僕達はどこに向かうべきなのでしょうか…?」
今後自分がすべき事がわからないケントはインドラに尋ねた。
「青の世界・『ブラーガルド』へ向かいなさい。かの地には水のクイーンガーディアン・『グウレイア』がいます。彼女から新たなエムブレムを授かるのです。」
「ブラーガルドとグウレイアって一体…?」
「ブラーガルドはこのグルンガルドに隣接するガルドで、『雫の騎士団』が主として統治する水資源に恵まれた世界なの。それから、グウレイアはそのブラーガルドの守護神よ。」
エルフェミスが横から答えた。
「あと、ドロップナイツって一体…?ここでいうクローバーナイツのような存在でしょうか?」
「ええ、ブラーガルドの国境なき騎士団ね。」
「ちなみに、エムブレムを授かるには依頼をこなせば良いのでしょうか?」
「依頼…といっても、方法ならいろいろあるわよ。昨日あなた達が受けたような事件に関連する依頼は勿論、修行を積む等によって授かる事もあるわ。」
「ありがとうございました。これで僕達が次にすべき事がわかりました。」
ケントはインドラ達にお礼をした。
いよいよ、インドラとの別れの時がきた。
「インドラ様、色々ありがとうございました。僕達はこれで失礼致します。あなたに虹の加護がありますように…。」
「ふふっ、ありがとう…、それではあなた達に風の加護がありますように。」
「インドラ様にも真の業を…。」
「またお逢いするわ。」
「それでは、ごきげんよう。」
一同は大樹の祠を後にした。




