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将軍王のココロザシ  作者: TAK
第一部第二章~AUへの第一歩
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心なき者に四つ葉のクローバーを!

ジジョッタを人質にとった男性はケントに要求してきた。

「連れの金髪姐ちゃんはどこだ!」

「…いきなり『連れの金髪姐ちゃん』と言われても…」

いきなりの質問にケントは戸惑った。

「てめえらが連れてたあの姐ちゃんはどこだって聞いてんだよォ!!」

男性は声を荒げてケントに問いただした。

「…何故僕が言わないといけないんだ…」

ケントは男性の質問自体に疑問を覚えた。

「俺はてめえらがあの姐ちゃんと一緒に宿屋に入ったとこ見てんだよォ!!」

(…間違いない…、この声は…、あの日私達の部屋に押し入った男性…。)

ジジョッタははっとした。

「…何故彼女を付け狙うんだ!?」

ケントは男性にヨシーナを付け狙う理由を尋ねた。

「ダッグ兄貴から聞いたんだよォ!あの姐ちゃんを夫に差し出せばいい金になるってなァ!その金を兄貴と山分けすんだよ!」

(な…、ダッグ…、まさか…、あのコルホ山の賊の首領が…、ヨシーナ様の情報を横流しに…。解放された際の『お礼をしてやらねばな』という言葉は…、そういう意味だったのか…。そして今いる男が…、あのダッグの弟か…。)

ケントは『ダッグ』という名前に戦慄した。そして今対峙している相手がその弟である事も拍車をかけていた。

「なぁ…、兄ちゃんよォ…、これが最後だ!姐ちゃんはどこだ!!答えねえならこの嬢ちゃんの首を掻き切ってやるぜェ!!そして置物として売り飛ばしてやるよ!(…と言ってもあの姐ちゃんの方が飛びっきりいい金になるがな…!)」

男性はケントに脅しをかけた。

「ク…(エルフェミス様から言われてるんだ…、ヨシーナ様の居場所を教えるなって…。)」

ケントは口を割りそうになったが、エルフェミスの言いつけを思い出した。

「クッ…、僕は…、貴様のような心無い者には絶対に教えない!!(ヨシーナ様は絶対に守る!!)」

そして思いっきり男性の要求をはねつけた。

「てめえ…!ガキの分際でこの『グッダ様』に『貴様』とは…!この嬢ちゃん殺ってからてめえもブッ殺してやるよォ!!」

ケントの極めて強気な態度に逆上したグッダがジジョッタの首を掻き切ろうとした瞬間、笛の音が聴こえてきた。その美しい音色のする方に目をやると、瞳を閉じながら『デクード』で出来た横笛を奏でるヨシーナがいた。その姿はまさに音楽のカムイのような美しさを湛えていた。



デクード…グルンガルド原生の樹木で、緑のEL粒子の含有量が高い。木材としても高価で、木炭にするとBEを吸収するため浄化能力も高い。グルンガルドの建造物の多くがデクード材で出来ている。強度も高いため、武器・防具の材料にも使われ、扱い手によっては岩や鉄を切り裂いたり穿ったりできると言われている。楽器も美しい音色が出るため、音楽家や吟遊詩人からの支持も高く、実は食用油や松明に機械系の潤滑油等の用途がある万能なEL資源だ。



(ヨシーナ様…、音楽ができるのは意外だけどとっても綺麗だ…。)

ケントはヨシーナの姿に恍惚とした。

「へっへっへっ…、これで聞き出す手間が省けたぜェ!」

目当ての女性を見つけたグッダは卑しい笑みを浮かべた。次の瞬間、ヨシーナはグッダの元に歩み寄りながらケントに微笑みかけた。

(待てよ…、ヨシーナ様は笑みを浮かべるような方じゃないはず…。こんな場面だったら尚更…。)

ヨシーナの笑顔にケントは少し違和感を覚えた。ヨシーナがグッダに近づいた瞬間…、ヨシーナは衣をグッダの頭に投げつけた。グッダは視界を一瞬奪われ、ジジョッタを離してしまった。ジジョッタはその隙を逃さず反撃に出た。何と大柄な体躯のグッダを押さえつけたのだ。グッダの前には何とエルフェミスが立っていた。エルフェミスはヨシーナに変装していたのである。エルフェミスが四つ葉のクローバーをあしらったオブジェを掲げるとエルフッド率いるGRが一斉にグッダを取り囲んだ。そしてエルフェミスはグッダの頭の衣を取った。

「クソッ…、姐ちゃんの分際で生意気な真似しやがって…!」

「残念だったわね!あなたのお目当ての女はここにはいないわ!」

エルフェミスはグッダに言い放った。

「じゃあ…、あんたらは一体何なんだ!」

「我々はクローバーナイツ!不法侵入並びに器物損壊の罪であなたに然るべき沙汰を下します!GR、この者に四つ葉のクローバーを授けなさい!」

「はっ!」

エルフッドが四つ葉のクローバーの形をした拘束具を取り出した。

「君はラッキーだ。何故なら、この四つ葉のクローバーを両手両足につけるのだからな。」

グッダの手足に拘束具がかけられた。

「畜生ー!!どこがラッキーだァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

かくして犯人・グッダはGRによって本部に連行され、武器の斧は恫喝行為の証拠として押収された。ジジョッタは証人として立ち会い、犯人は容疑を認め、間もなくクローバーナイツ内の刑務棟へ移送された。


クローバーナイツ本部には犯人が拘束されたという朗報を聞きつけた宿屋の主人もやって来た。

「宿屋の部屋の鍵をお返しします。」

ケントは宿屋の主人に鍵を返した。

「ありがとう。確か君は…、うちに剣を預けていたね。」

「はい。」

「クローバーナイツ本部にいると聞いたから持って来たよ。」

「ありがとうございます。」

ケントは宿屋の主人から預かっていた剣を受け取った。


AU会館に戻ったケントとジジョッタは依頼の窓口で報酬4KGを受け取り、自室で床に就いた。

「僕…、結局何も出来ずじまいだったな…。」

「ケント様も良くやったと思います。『貴様には絶対に教えない』と犯人に言い放って相手の名前を引き出したじゃないですか。」

「いやいや、その犯人を押さえつけた君には及ばないよ…。(ジジョッタ…、君は一体…、何者なんだ…?)」

ジジョッタの正体について気になるケントであった。

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