四つ葉の騎士団
クローバーナイツ本部の応接室で、ヨシーナとジジョッタは金髪ポニーテールで、四つ葉の髪飾りに緑装束の吊り目の美しいエルフの女性から例の事件での事情聴取を受けていた。
「…順を追ってお話し致します…。わたくし達が宿屋に向かう途中…、誰かに後をつけられているような感じがしました…。」
「宿屋に入る前から怪しい気配を感じていたという事ね。」
「はい…。チェックインした後…、もう一人の連れである『ケント』という男性が一階の酒場で情報収集に行く際…、この者を一人にしてはいけないため一緒に留守番していた時の事です…。」
「つまり犯人はあなた達女性だけで留守番していたところを狙ったという訳ね。」
「はい…。彼が部屋を出て間もなく…、扉をノックする音がしたのです…。その者は男性で、『今朝までここに泊まってた人で忘れ物を取りに来た』と言ってました…。わたくしは『忘れ物なら受付にお申し付け下さい』と返事しましたが…、『そんな面倒な事するより直接来るのが手っ取り早い』としきりにノックし続けました…。不審に思ったわたくしは…、忘れ物を取りに来たのではなく、この者そのものが相手の目的だと感じました…。それで、わたくしはこの者を連れて窓から飛び降り…、こちらへ駆け込んだ次第です…。」
「わかったわ…。あなた、何か自分が狙われる心当たりはないかしら?」
エルフの女性はヨシーナに尋ねた。
「わたし…、以前…、このジジョッタと一緒に…、賊に囚われた時…、彼女を逃がして貰うために…、『自分を夫に差し出せばいい金になる』と…、言いました…。その賊が…、ある軍に鎮圧された時に…、わたしは…、贖罪の機会を…、絶ってはいけないと…、その軍に…、賊の助命を嘆願しました…。解放された賊は…、後ろめたい様子だった人もいれば…、悪びれる様子もない人も…、いました…。」
「賊に出自を明かした…、ということは犯人はその悪びれる様子もない賊自身か、その賊と同業の者の可能性があるわね。もし後者だとしたら、前者があなたの情報を後者に口外した可能性が高いという事よ。いずれにせよ、あなたはいつ賊に狙われてもおかしくないという事なの。」
「!!…わたし…、怖いのです…。賊に捕まったら…、あの夫の元に…、連れ戻されると思うと…。」
ヨシーナは突然泣き出した。
「大丈夫よ。このクローバーナイツ団長の『エルフェミス』があなたを守るから、何も心配いらないわ。」
エルフェミスはヨシーナを抱きしめた。
「エルフェミス様…、ありがとう…、ございます…。」
暫くして応接室のドアからノックの音が聞こえた。
「姉上、僕です、エルフッドです。例の一行の男性が団長である姉上にお渡ししたい物があるとの事です。」
「いいわ、入りなさい。」
エルフェミスは席に戻って弟のエルフッドに入るよう促した。
「失礼致します。」
エルフッドはケントと一緒に応接室に入ってきた。
「ヨシーナ様、ジジョッタ!ご無事でしたか。」
「ケント様こそご無事で何よりです。」
「ケント様…、良かったです…。」
三人は再会を喜んだ。
「初めまして、ケントと言います。あなたが『四つ葉の騎士団』の団長ですか?」
「ええ、そうよ。わたしは『エルフェミス』というの。」
「エルフェミス様、早速ですが、父からこの書状を預かって参りました。」
ケントは父から預かった親書をエルフェミスに渡した。エルフェミスは親書の中身に目を通した。
「わかったわ。ケント、ジジョッタ、二人にはこれからはAUとしてしっかり研鑽を積んで頂きます。ただ、AUの道は決して平坦な道ではありません。しかし、その道の先に大いなる何かが待っている筈です。」
「はい。」
「エルフッド、早速で悪いけど、二人を『AU会館』に案内して貰えるかしら?残りの一人はわたしに任せて。」
「承知しました、姉上。」
(何故ヨシーナ様は違うんだろう…?)
ケントとジジョッタはエルフッドの案内でAU会館に案内される事になった。




