事情聴取
荒らされた部屋に唖然呆然としているケント。そこにGRの数名が踏み込んできた。
「君、大丈夫か?」
GRの一員の中の耳の尖った男性がケントに尋ねた。
「あ…、はい…。」
「どうしたんだ?」
「僕が酒場で情報収集をしている間に…、『客室が大変だ!!』という声を聞いて戻ってみたら…、僕らの部屋がこの有様です…。」
ケントは荒らされた室内を指さしてクローバーナイツに説明した。
「わかった。詳しい話は下で聞こう。」
尖り耳の男性はケントを一階に連れて行った。
一階では、受付の係員と酒場のマスターに宿泊客の一人が別のクローバーナイツから事情聴取を受けていた。
「不審者らしき者は見かけなかったか?」
「はい…。」
「それがしも見かけませんでした。」
「僕は…、隣の部屋で男が『今朝までここに泊まってた人で忘れ物を取りに来た』とノックするのと、ドアを蹴破って『金髪の姐ちゃんはどこだ』と騒ぐ声しか聞いていません…。その時は鍵をかけてベッドの下に隠れていました…。物音がしなくなって隣の部屋に来てみたら…、部屋が荒らされていました。」
不審者について答えたのは宿泊客だった。
「では、例の事件が起きたのはいつ頃だ?」
「男性一人と女性二人の三人連れの一行の男性が併設された酒場に行って間もなくの事です…。二階でしきりに扉を叩く音と別の男性の怒鳴り声が響き…、その音が次第に大きくなっていき…、しまいには何かが壊れる音がしました…。」
係員が詳細を話すと、ケントを連れたGRが階段から降りてきた。
「このニュートラルのティーンも一緒に事情聴取を。」
「この方は、三人連れの一行の一人の男性です。」
「では、この宿屋で例の事件が起きる前の行動について話して頂こう。」
尖り耳のGRはケントに事件が発生する前の行動について尋ねた。
「僕は…、客室で連れの女性二人に留守番をして貰って…、酒場で情報収集をしていました…。その最中に…、『部屋が荒らされている』と聞いて…、部屋に戻ってきたら…、二人がどこにもいないんです…。」
「では、その二人の名前は?」
「ヨシーナとジジョッタです…。」
「!…君は…、あの二人の連れか…?」
「二人をご存じなのですか?」
「ああ、ティータヘイムにある我々クローバーナイツの本部に華奢そうなメイドがカムイな美しさの女性をお姫様抱っこしながらものすごい勢いで駆け込んできたからな。あのメイドの身体能力…、まるでカムイの如しだな…。」
「では、二人は無事なんですね。」
「ああ、今本部で保護している。」
「良かった…。(…それにしてもジジョッタがあんな凄い力を持っているとは…)」
二人の無事を聞いてケントは安堵した。同時にジジョッタの意外性に内心驚いた。
「お願いがあります。僕らは三人で四つ葉の騎士団に行く途中なんです。父から預かったこの書状を団長に渡す目的で参りました。どうか、ティータヘイムまでお連れ頂けないでしょうか?」
ケントは例の親書を尖り耳のGRに見せた。
「わかった。二人を保護しているからな。それでは、引き続き現場の調査を頼む。」
「はっ、隊長。」
ケントは尖り耳のGRに連れられGRの馬車によってティータヘイムにある本部に向かった。
「そう言えば…、名前を聞いてなかったな…。」
「『ケント』と申します。改めて宜しくお願い致します。」
「ケントか…、僕は『エルフッド』、種族は『エルフ』で、クローバーナイツの治安部隊『グリーンレンジャー』の一隊長だ。」
「エルフッド様、エルフとは一体どんな種族でしょうか?」
「エルフか…この尖った耳が特徴の種族だ。それ以外は君達ニュートラルと変わらないよ。」
「それから、グリーンレンジャーは一体…どんな事をするんですか?」
「GRはこのグルンガルドの各ヘイムをパトロールしているんだ。『RQ』ことクローバーナイツ団長も兼ねる姉『エルフェミス』の元で活動している。姉自身は勿論、相棒のQG『インドラ』様も頼もしいぞ。」
「インドラ様って一体どんな方ですか?」
「インドラ様はグルンガルドの守護神にて風のクイーンガーディアンだ。極めて美人で、風属性カムイの中で最高位の存在なんだ。君も彼女からエムブレムを授かって風の加護を受けてみるといいだろう。」
エルフッドは四つ葉の形をした風のエムブレムをケントに見せた。エムブレムは緑色に光り、ケントも思わず恍惚とした。
「はい、とっても綺麗なエムブレムですね。」
「ありがとう。あっ…、本部が見えてきたよ。」
エルフッドはてっぺんが雲に隠れている大樹を指さした。この大樹が四つ葉の騎士団の本部、何よりそこに二人がいる思うとケントは胸を躍らせた。
一方、クローバーナイツ本部では、ヨシーナとジジョッタが例の事件での事情聴取を受けていた。




