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将軍王のココロザシ  作者: TAK
第一部第九章~志の学級
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フラットの過去

UD商会の会議室で物々しい感じの会議が行われていた。

「レスティーン雇用に異を唱えるつもりはありません!しかし、何度も申し上げるように、レスティーン労働者達にはやはり研修が必要です!」

レスティーン労働者達に研修が必要だと主張したのはフラットだった。

「却下です!何故わたくし共が生産と全然関係ない事に時間を割かねばならないのです?そんな無駄で効率を悪くする案に誰も耳を貸しませんよ!」

ドリーは冷徹に却下した。

「決して無駄ではありません!読み書き計算が出来ない状態で働かせている事が寧ろ問題かと存じます!ロベルトの失敗もそうです。数量を間違えたり、ボルトとナットを間違えたりという失敗も読み書き計算で克服出来る筈です!何卒お聞き入れ頂けないでしょうか?研修は彼らの為にもなり、何よりUD商会の為になる筈です!」

フラットは却下されても諦めず真摯に主張した。

「わたくし共が欲しているのは読み書き計算が出来るのではなく、単純に()()()()()()()ですよ。ロベルトは『ああせよと言えばこうする…、かといって、こうせよと言えばああする』…とわざと失敗してるという報せがわたくしに寄せられてます。読み書き計算が出来ないから…!?茶番ですね…。働くふりをしてるようにしかわたくしには見えませんね…。きっと皆も同じ考えでしょう…。」

「ロベルトは一生懸命なんです!自分の失敗で皆の足を引っ張りたくないという一心で毎日頑張っているんです!しかし…、その気持ちが空回りしてまた失敗してしまう…。ソールはそんな彼が鞭打ちにされるところを庇ったり、彼が罰としてパンを与えて貰えなかった時、自分のを分けたりしています!レスティーン達の真摯な姿勢を蔑ろになさるおつもりですか!?」

「もういいです!!…スケロック…、ただちにフラットをつまみ出しなさい!」

「承知した…。」

「会長!…どうか…。」

ドリーはスケロックにフラットを強制退室させるよう命じ、スケロックはフラットを無造作に会議室から放り出した。


アスティア城の一室で読み書き計算の講義の合間の休憩に雑談をしているベムとフラットだった。

「それがしは古巣で…、レスティーン労働者に読み書き計算が必要だと説いたのですが…、聞き入れて貰えなかった挙句放り出された始末です…。しかしここは…、研修の必要性をマスターが理解していらっしゃる…。実にそれがし好みです。」

「ああ、確かにマスターは俺も気に入っている。だが、ここの王様はちょっと失敗しただけで首が飛ぶ位だ。マスターが庇ってくれなかったら俺は間違いなく粛清されただろうな。」

「ふむ…、心ある者の元ならばいくら失敗してもやり直せる…。逆に心なき者の元だとどんな些細な失敗でもやり直しが利かない…。やはり人の運命は心ある者に恵まれているかどうかで決まる物なのでしょうね…。」

「確かにな…。俺もマスターの元でそれ感じたよ。」

「有難うございます…。おや…、そろそろ時間ですね…。では、今度は計算の講義を始めます。」

フラットは話を切り上げ、ベムに計算を教え始めた。


モーカリズムの頭取(とうどり)の執務室に書簡を携えたUD商会の使者が頭取の男性と対面した。

「リスト様、UD商会より商談を持って参りました。」

使者はモーカリズム頭取のリストに書簡を渡した。

「うむ、ご苦労。…何々…。(何!?カムイの角を10BG(ビーゲルダ)で買い取って欲しいと…。)」

リストは書簡の中身を読んでみると、角の形をしたキリコーンのELコアを10,000,000,000ゲルダで買い取って貰えないかという事だった。

「承知した。但し、偽物を持って来たら承知しないと伝えよ。それから、取引はオアシスの街の郊外の空き家で行うとしよう。」

リストは承知したが、偽物を持って来るなと釘を刺し、取引場所をオアシスの街の郊外の空き家に指定した。

「はっ。」

使者は退室し、UD商会に戻って行った。この計らいが自分達への災いとなる事をリストは知らずにいた。

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