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将軍王のココロザシ  作者: TAK
第一部第九章~志の学級
123/159

事件の原因

事件から一夜明け、志の学級の教壇に立つケントだった。

「今日はアジューリア先生は別行動で、ロベルトは体調不良の為欠席です。」

ケントからロベルトが欠席と聞いてソールとユリアが動揺している中、一部の学徒がせいせいするような表情を見せた。

(そうか…、ロベルトは相当嫌われているんだな…。)

ケントは一部の学徒の表情からロベルトに対する反発の(いちじる)しさを感じた。

「今日は昨日の件を(かんが)みて、読み書きの講義はお休みとします。代わりに、自分の生い立ちからこの学級の学徒となるまでの事を皆さんの前で語って貰います。まず、ユリアから起立。最初は君からだ。」

ケントは読み書きの講義を休みとする代わりに学徒達に自分の生い立ちを語って貰うと伝え、ユリアに語るよう促し、ユリアは起立した。

「はい。あたしはスラムで生まれました。ママはあたしを産み落として亡くなりました。あたしはパパとお兄ちゃんに育てられました。あたしが言葉を話せるようになった時、パパは仕事から帰る途中で霧の中で誰かに殺され、あたし達の為に稼いだ金を取られました。変わり果てたパパを見てあたしは悲しくなり、パン等を食べようとしても食べられなくなりました。やがてあたしが病気になり、お兄ちゃんはあたしをおんぶしてあちこち医者を回りました。しかし、『スラムの貧者を診る医者などいるものか』等と断られました。お兄ちゃんは『金は俺が何とかする』と言って、あたしを家に置いて出て行きました。あたしは『もう一度お兄ちゃんに会いたい』と何度も泣き叫びました。もう泣き叫ぶ事も出来なくなった時に、ケント先生達に保護されて、一緒に行動するついでに、ここで初めて学校に通う事となりました。終わりです。」

ユリアは自分の生い立ちを語った。学徒達は拍手した。

「有難う、ユリア。着席していいよ。はい、それでは次…」

ケントはユリアに着席を促し、次の学徒に語るよう促した。


本部の医務室のベッドの上では顔が腫れ上がり、全身痣だらけのロベルトが意識を失った状態で横たわっていた。アジューリアは満身創痍の彼を見て動揺した。

(…どうしてこんな事に…。!…ドロップが光ってる…。)

アジューリアは自分の所持している雫の紋章が青い光を放っている事に気づいた。

(これは…、ふふっ…、わかったわ…。)

「ELアビリティ、『アクアヒール』!」

アジューリアは雫の紋章が何故光っているのか理解し、水属性ELアビリティ『アクアヒール』を唱えた。青い雫の形をした光がロベルトの身体を覆った。ロベルトの身体の痣が一部消えた。

「…う…ん…、僕は…。いてててて…。」

ロベルトが目を覚ました。まだ身体が疼いていた。

「ロベルト、わたしよ、アジューリアよ。わかるかしら?」

アジューリアは意識を取り戻したロベルトに呼びかけた。

「…アジューリア先生…。」

「ロベルト、早速で悪いけど、昨日の事について話があるの。」

アジューリアはロベルトに極めて重大な話を持ちかけた。

「昨日の事…?リンチの事ですか…?」

「そうじゃないの。わたしが話をしたいのはその原因についてなの。」

「僕が何でリンチされたのか…、全然わかりません…。」

「じゃあ、あなたはケント先生の話を聞いてたの?」

「何でケント先生が出てくるんですか?」

「あなたがケント先生の話をきちんと聞いてたらあんな事件は起きなかったの。…聞き方を変えるわ。講義が終わった時、ケント先生はあなた達に伝えたよね。その内容わかってたの?」

アジューリアはロベルトにわかりやすく質問を変えた。

「はい。」

「じゃあ、何故すぐ帰ったの?」

「だって…、ケント先生が『講義は()()()()()』って…。」

「あの話には続きがあったの。『皆で清掃してから解散とします』って…。皆ケント先生の指示通り掃除してから帰ったの。なのにあなたは一人だけ掃除しないですぐ帰った。何故皆があなたに怒ったのかわかるかしら?」

「僕が掃除しなかったから…。」

「それもだけど…、何より皆があなたを赦せなかったのは…、ソール級長に対しての事よ…。」

「僕はソール君に何もしてません!」

ロベルトは声を荒げた。

「直接はね…。ソール級長はあなたにも寛大だった。そんな彼の想いをあなたは裏切ったの。だからあんな事件が起きたの。」

「…。」

「ロベルト、あなたはソール級長に以前から良くして貰ってきた筈よ。詫びるならまず、彼からになさい。」

「はい…。」

アジューリアに(さと)され、ロベルトは涙を流した。


「それでは、最後にソール。」

「はい。」

志の学級ではケントの合図で遂に最後の発表が行われようとしていた。

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