志にそぐわぬ者
学徒用寄宿舎に真っ先に帰り着いたロベルト。
「ふう…、今日も無事に終わったね…。」
一息ついたロベルトはこれから事件に巻き込まれる事を知らずにいた。暫くしてソールとユリア以外の志の学級の学徒達が宿舎に戻ってきた。学徒達はロベルトに白い視線を投げかけた。ロベルトは彼らが自分を白眼視している事に全く気付かなかった。間もなく学徒の一人がロベルトに怒りの声を投げかけた。
「ロベルト、ちょっと面貸せ!」
「えっ…!?僕が何か…?」
ロベルトは何故学徒達が自分に怒っているのか全然気づかず、そのまま彼らに倉庫に連れ込まれた。
「へっへっへっ…、こいつらは俺達が頂くぜェ!」
農村から仕入れた農産物を台車で運んでいるステラとムスタンを斧等を携えた賊共が取り囲んだ。
「生憎だがお前達にむざむざ渡すわけにはいかない!」
「うぬらに…、渡しはせぬ…!」
ステラとムスタンもそれぞれの得物を構えて賊共に抗う姿勢を見せた。
「おもしれェ!野郎共、実力行使だァ!」
賊達はステラとムスタンに一斉に襲い掛かった。
「キング、出番だよ!」
ステラがキングアーマーのELコアを天に掲げるとキングアーマーが光で化身した。
「マスターよ…、わしの相手はどこだ…?」
キングアーマーはクライアントのステラに相手がどこか尋ねた。
「この積み荷を取り囲んでる賊共だよ!」
ステラは相棒のキングアーマーに賊共が相手と伝えた。
「承知した…。『ボルテェェェェェェェェェェェック、スラァァァァァァァァァァァッシュ』!!」
キングアーマーは巨大な剣を振りかざして光属性ELアーツ『ボルテックスラッシュ』を繰り出すと大きな黄色い星の閃光と共に、雷が発生し、賊共を捉えた。雷を浴びた賊共はなす術もなく地面に倒れていった。
「なっ…、何だこいつは…、黄金の化物かよ…。」
唯一残った賊はキングアーマーの物々しい威圧感に恐慌した。
「…神妙にせよ…。」
ムスタンは賊のその隙を逃さず、左手で何とか取り押さえた。
「悪いが本部まで来て頂こう!」
ステラはムスタンが取り押さえた賊を縄で拘束し、交易のついでに流星騎士団本部の刑務棟に連行した。この賊共が新たなブラック組織と繋がっている事をムスタン達は未だ知らずにいた。
学徒用宿舎でジジョッタとユリアが自室に向かう途中、倉庫の扉が開いた。そこからロベルト以外の志の学級の学徒達が出て来た。彼らは怒りに満ち溢れていた。
「…あなた達…、これは一体…?」
ジジョッタが学徒達に尋ねた。
「僕の口からは言えませんね…!」
「うん…。」
「僕らは前からあいつのせいで散々な目に遭わされまくってますから…。」
「級長も級長ですよ!あの時だってそうです!何であいつに甘いのか、訳わかんないっす!」
「あいつがソール兄貴の想いを蔑ろにして何食わぬ顔してんのが気に入らねえんすよ!」
学徒達はジジョッタにロベルトに対する愚痴を言い、ふんぞり返りながら去って行った。
「一体この部屋で何が…?ELアビリティ、『サイコスキャン』!」
彼らが去ってすぐ、ジジョッタは闇属性ELアビリティ『サイコスキャン』で両眼を紫色に光らせて外から扉の向こうを凝視した。
「!!…えっ…、そんな…。」
「ジジョッタ姉ちゃん、どうしたの?」
「…寮長を通じて救護班を呼ぶよう伝えなさい…。とにかく一刻を争います…。わたくしは団長と副長に…。」
「うん!(皆何か物騒な感じだった…。ユリア恐い…。)」
異変に気付いたジジョッタはユリアに寮長に知らせて救護班を呼んで貰うよう伝え、自分は教員用宿舎にケントとアジューリアに事の次第を伝えに向かった。
「何だって!?ロベルトが!?」
「何ですって!?まさかそんな…。」
ケントとアジューリアは教員用宿舎に来たジジョッタからロベルトの事について聞かされて動揺した。
「身体中痣だらけで満身創痍の状態です。今、担架で本部の医務室に運ばれています。事件現場から出た志の学級の学徒達の話によればソール級長は事件に直接関わっていないとの事です。」
「それで、ユリアは…?まさか事件に加担したんじゃないでしょうね!?」
アジューリアはユリアが事件に加担していないか気になった。
「大丈夫です。学徒達が現場から出た時、ユリアはわたくしと一緒でした。」
「そう…。(良かったわ…。)」
アジューリアはユリアが事件に関わっていない事を聞き安堵した。
「ジジョッタ、報告有難う。宿舎に戻って学徒達のケアにあたってくれ。」
ケントはジジョッタに報告の礼を述べ、学徒用宿舎の学徒達のケアにあたるよう伝えた。
「はい。」
ジジョッタは承諾して学徒用宿舎に戻って行った。
「アジューリア…、あなたは明日ロベルトのケアを…。僕は明日彼らに特別な講義を科したい。こんな状態じゃ読み書き計算どころじゃない…。とにかくこの事態を収拾しなければ…。」
「ええ、わかったわ。皆の事頼んだわよ。(何故なの…、同じ場所で働いていた者同士が…、そんな…。)」
ケントは明日の計画についてアジューリアに伝え、アジューリアは承諾すると同時に、同じ場所で働いていた者同士で何故事件が起きたのか動揺していた。




