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将軍王のココロザシ  作者: TAK
第一部第九章~志の学級
121/159

授業開始

遂に志の学級での講義が開始し、理事長のファノが見ている中、初めて教壇に立つケントとアジューリアだった。

「それでは、本日の講義を始めます。まずは、読み書きからです。」

ケントの合図で読み書きの講義が始まった。


一方、アスティア城の一室でベムは雇われたばかりのフラットから読み書きの講義を受けていた。

「…では、しばらく休憩と参りましょう…。」

フラットは一旦講義を切り上げた。

「…なあ…、あんたは何故俺に読み書き計算を教えんだよ。」

ベムはフラットが何故自分に読み書き等を教えるのか気になった。

「…それがしはただ…、マスターに命じられたからです…。」

「そうじゃなくて、俺が聞きたいのは何で古巣を()けてまで肩入れするのかだ!」

ベムの質問の意図は読み書き計算ではなく、何故古巣を脱けてまで自分に肩入れするのかだった。

「…それがしは…、古巣で読み書き計算の出来ぬレスティーン達を嫌と言う程見てきました…。彼らはカムクリのようにただ与えられた仕事をこなすのみ…。しかし、彼らがそのままオーバーティーンになったら…、その仕事以外では生きていけないようになってしまいます…。見た限りあなたは結構戦い慣れしていらっしゃる…。読み書き計算が出来ぬとあれば平和な世界では生きて行けなくなるでしょう…。それがしは読み書き計算が出来ぬ者達を一人でも減らして参りたいのです…。そして皆が夢を抱ける世界になるように…。何故でしょう…、我ながら夢を語るとは…。古巣では夢一つなかったそれがしが…。」

フラットはベムに読み書き計算が出来ないレスティーン達の事や自分の夢等を語った。

「なる程な…、あんたの目を見ればわかるよ。ただ読み書き計算を教えてる訳じゃないって事がな。実は俺にも夢があんだよ…。誰一人貧困に喘ぐ事のない世界にしたいって夢がな。」

「ならばきちんと読み書き計算を習得する事です…。つまり、あなたの夢とそれがしの夢は両立出来るとそれがしは信じております…。」

「ありがとよ…。あんたとはいい付き合いが出来そうだな。…それから、俺はまだティーンだ。歳ならあんたの方が遥かに上だし…。俺は丁寧な言葉で話されるガラじゃないしな。」

「そうは参りません…。年齢はそれがしの方が上ですが、先にマスターに仕えているあなたの方が序列が上…。となればあなたには敬語を使うのが妥当の筈です。」

ベムは敬語は不要だと述べるも、フラットは仕えている期間の長さから敬語が妥当と主張した。

「わかった。じゃあ、無理しないようにな。」

「お気遣い有難うございます。…おや、時間ですね…。今度は数字の読み書きを始めましょう…。」

フラットは講義を再開した。


話を戻して、志の学級では学徒達に(よろず)語を教える事にケントとアジューリアは悪戦苦闘していた。

「なかなか覚えられないや…。」

「どこかの壁画って感じ…。」

学徒達は初めて文字に触れるのだ。一日や二日で覚えられる程簡単ではないのだ。

「あの…、ケント先生はどうやって読み書きを覚えたんですか?」

一人の学徒がケントに質問してきた。

「僕はね…、専属の講師から教えて貰ったんだよ…。」

「そうじゃなくて、僕は方法の事を聞いてるんです!」

「方法ね…。僕は『学問は心で覚えよ、さすれば忘れる事はない。頭で覚えようとするから忘れてしまうのだ。』とよく教えられたね。」

ケントは学問は心で覚えるものだと語った。

「有難うございます。『心で覚える』ですね。やってみます。」

学徒はケントに教えられた方法で講義に臨んだ。


そして、本日の講義が終わりを告げる鐘が鳴った。

「それでは、本日の講義は()()()()()。皆で清掃をしてから解散とします。」

ケントは講義の終わりの挨拶をした。学徒達は掃除用具で教室や廊下の清掃をしていた。しかし…

「団長、副長。『ロベルト』さんが教室や廊下にいません。」

学徒の一人『ロベルト』がいない事に気づいたジジョッタはケントとアジューリアに伝えた。

「何だって…!?(ロベルトって…、確かソールと同じ12歳の…。)」

「えっ…!?(確かロベルトは…、他人との関わりがかなり苦手な感じね…。)」

ケントとアジューリアは学徒の一人が自分達の指示を守らなかった事に動揺した。これが志の学級の波乱の幕開けとなる事をケント達は未だ知る由もなかった。

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