失意の団長
アジューリアと共にAU会館の宿舎の自室に戻ったケントは不安にも似た感情を抱いていた。
「僕は…、あの格納庫で…、スケロックと戦ったんだ…。」
ケントは身体を震わせながらスケロックと一戦交えた事を伝えた。
「ケント…、スケロックと戦って何を感じたか…、わたしに話して。」
アジューリアはケントにスケロックと戦って感じた事について話すよう促した。
「スケロックの身体…、ヒッタイトで出来ているんだ…。あなたも見た筈だ…。」
「ええ、一瞬だけど見たわ。あの時いたわたし達が束になってかかってきても物ともしないくらい強そうな感じだったわね。」
アジューリアも機械の身体のスケロックを一目見てかなりの強さと感じた。
「実際に戦って…、わかったんだ…。剣で斬り付けても創一つないだけでなく…、繰り出される拳は剣を破壊する…。どんなに身体を鍛えても…、全身兵器の彼には勝てない…。アジューリア…、僕達のあの訓練は無駄だったのかな…?」
ケントはアジューリアにスケロックと一戦交えた件を話すついでに、自分達が身体を鍛えてきた事が無駄だったのだろうか尋ねた。
「無駄だなんて言わないで!!…わたしね…、あの訓練に出逢って…、良かったと思っているの…。自分に自信が持てただけでなく…、より皆の力になってあげられたのが…、何より嬉しかったの…。」
弱音を吐くケントにアジューリアは強く言い放った。そして、自分は例の訓練に出逢って良かったと涙を流しながら語った。
「ねえ…、ご存じかしら…。クイーンガーディアンって…、『守護神』って呼ばれているけど…、実際はAUや他のカムイ達から護られているって事を…。それは何故だかわかるかしら…?」
今度はクイーンガーディアンの事を引き合いに出した。
「いや…。」
「心ある者だからよ…。心ある者の力にならいくらでもなろうという気持ちになるものなの…。わたしがあなたの力になりたいと思うようにね…。わたしだけじゃないわ…。ムスタンもジジョッタもユリアもあなたの力になる事を望んでいるの…。団長だからじゃない…。心ある者だからよ…。」
アジューリアは皆心ある者の力になりたいと望んでいる事を伝えた。
「あなたの強さはスケロックのような相手を造作もなくねじ伏せる強さじゃないわ…。あなたのマントの『志』の刺繍が語るように…、誰よりも真摯で心ある…、そんなココロザシを持つあなたの力になりたいというココロザシを持つ者が自ずと集まってくる…。それがあなたの強さだとわたしは信じているの…。」
アジューリアは続けて、ケントの強さとはねじ伏せる強さではなく、一つの小さな志に多くの志が集まって大いなる志が生まれる強さだと語った。
「…有難う、アジューリア…。な…、何故涙が出てくるんだよ…。ティーンの男がみっともないところを…。」
ケントはアジューリアの真摯な言葉に感激するあまり、自分の目に涙が出てくる事に気づき拭おうとしたが…
「…今は泣いていいわ…。あなたの辛さは誰よりわかっているつもりだから…。」
「…僕の主もそう言ったんだ…。父の元を巣立った際、涙を拭おうとしたら『泣いていい』って…。」
「そう…、あなたの主も心ある方なのね…。あなたを見れば何となくわかるわ…。いつかわたしも逢ってみたいわね…。」
アジューリアはケントから自分の主の事を聞いて本人に逢いたいと語った。その後、二人は暫く一言も語らず一睡した。
一方、トラスティア攻めの不手際からアスティア城に軟禁され、城の外に出る事を禁じられたベムは城の一室で月夜を眺めていた。
(スパイデル…、まさかあんな狭量な奴だったとはな…。まあ、奴はこの月夜を見ても何も感じないんだろうな…、BBB団にいた頃の俺のように…。)
ベムが月夜を見てスパイデルの事を考えている中、扉をノックする音がした。
「誰だ!?」
ベムはノックする者が誰か尋ねた。
「私だ。」
声の主はベムにとって聞き覚えのある気高い女性の声だった。ベムが扉を開けると戦女帝が入ってきた。
「久しぶりだな、戦の申し子よ。今宵は共に語り明かそう。ラピス山脈の頃のようにな。」
「ああ…。…って…、あんたは奴の元に戻らなくていいのか?」
「彼奴はグリーン地方や元老院の事で忙しいのだ。それで私はブルー地方とパープル地方を任されただけの事だ。」
戦女帝は公務の次いでと語った。
「わかった…。」
果たして、戦女帝とベムはこれから何を話すのか?
エルトリア様原作『リトルパラディン ~田舎娘だけど、聖剣に選ばれたので巨大ロボットに乗って騎士団長をやります!~』(略『リトパラ』)にて、サカキショーゴ様企画【シャルマエシリーズをエルトリア嬢に贈っちまおう企画!!】に便乗し、
自作ファンタジー群像劇シリーズ『レインボーボンズ』(略『RB』)とコラボした『シャルマエ in アクアポリス最深部~水の聖女大仰天!』を投稿しました。
RB主要キャラ『水の聖女マキュリーナ』は突然現れた『リトパラ』の主要キャラとの出逢いで感じた事は…、を描いた短編小説です。
ご愛顧頂けたら嬉しい限りです。




