流星騎士団
サンドガルドの国境なき騎士団である流星騎士団本拠は円錐状の建物で、施設内にレプラコーンの泉もある事と相まって『コーンヘイム』と呼ばれている。
応接室に案内されたケントAU団一行の前にステラと一緒に現れたのは両耳に星のイヤリングをした金髪令嬢な雰囲気の女性だった。
「初めまして、わたくしは流星騎士団団長『ヴィーナ』ですわ。うちのステラがお世話になりましたわね。」
ヴィーナは自己紹介をした。ケントAU団もステラにしたように自己紹介をした。
「ヴィーナ様、歯車騎士団団長から書状を預かって参りました。」
ケントはヴィーナにサターナから預かった書状を渡した。
「サターナ様からですわね…。大方察しがつきますわ…。」
ヴィーナは書状に目を通した。
一方、グルンガルドの四つ葉の騎士団では、コンラッドと複数の若手のトラスティア兵士が本拠の応接室でエルフェミス団長と向かい合っていた。エルフェミスは兵士から預かった書状を手にしていた。
「そう…、あなた達はこの四つ葉の騎士団でAUとしての訓練を受けるという事ね。」
「はい。」
「わかったわ。でも、その前に…。」
エルフェミスは何らかの小道具を持って来て、コンラッドの方に歩み寄った。
「コンラッドだったわね…。あなた、見たところ獄中生活を送ってきたそうね。これで髭を剃りなさい。あと、髪も切りなさい。身だしなみが重要よ。」
「はい。」
エルフェミスはコンラッドに様々な身だしなみをするよう促した。身だしなみを終えたコンラッドは幽閉前の若々しい感じの顔つきに戻った。
話を戻して流星騎士団の応接室では…。
「AUとしての訓練の継続ですわね。わかりましたわ。」
書状を読み終えたヴィーナはケントAU団の訓練の継続について了承した。
「それから…、ステラから伺ったお話によれば…、あなた方はあのブラック組織のUD商会に目を付けられていたそうですわね。その一部始終についてお話し下さって?」
ヴィーナは一行とUD商会のやり取りについて話すよう促した。
「街で一泊しようと宿を探していたら…、突然面識のない男性が人懐っこく声をかけてきました…。彼はわたくし達ケントAU団の事を知っていて、どうしてそれを知っているのか尋ねてみたら、シュバリア族の連れに、『志』のマントした団長と言えばわたくし達ケントAU団…と世間ではかなり有名という事です…。彼は団長や副長の鍛え上げた身体を褒めちぎり、握手する形でムスタン様の右腕に触れて義手なのがわかって、質の高い義手を造って貰わないか商談を持ち掛けました。怪しい感じだった為断ったところ、もう一人の連れの鉄仮面の大男がユリアを人質に取って話を聞くようわたくし達に迫りました。それでわたくし達は二人に連れられた郊外の空き家で話を聞く事に…。そこで持ち掛けられた話は鍛え上げられた身体と自分達の技術を組み合わせれば最強になれる事と、義手を兵器に改造する事でした。かなりのBEを帯びているくらい怪しい者達だったためわたくし達はサインしませんでした。」
話したのはジジョッタだった。
「すると…、彼らはユリアの命が惜しくないのか?と迫ってきたのですが、それがしが彼女は既に死んでいると言い放つと二人とも動揺しました。」
「そしてユリアは緩んだところを脱けてすねを蹴って皆の元に逃げ込んだの!それからユリアが蹴ったあの大きなおじさんの脚、鉄のような感じだった!」
「交渉決裂で逆上したUD商会会長ドリーが連れの大男スケロックをけしかけたと同時にステラ様がやってきて…という事です。」
ケント、ユリア、アジューリアが続いた。
「…わかりましたわ…。右腕が義手のシュバリア族の男性はムスタンでしたわね…。」
「…うむ…。」
「見た感じ、義手がまだまだ機能しておりませんわ。わたくし達流星騎士団の光のEL技術で機能するように出来ましてよ。あなたには右腕のリハビリに励んで貰うのは勿論、義手の整備と調整に携わる方は…」
「わたくしとユリアで致します。」
「うん!」
義手の整備と調整にジジョッタとユリアが名乗り出た。
「これで決まりですわ。さて…、残りのお二人には…、当分の間、AU会館で待機して貰いますわ。館内の設備はご自由にお使い頂いて構いませんわ。但し、流星騎士団の外に出るのはお控えなさいませ。UD商会のような物騒な者達に目をつけられているなら尚更ですわ。」
「わかりました。」
ヴィーナはケントとアジューリアにはAU会館で待機するよう伝えた。
「では、ステラ。二人をAU会館にご案内なさい。」
「承知しました。お二方、こちらへ…。」
ステラはケントとアジューリアを流星騎士団管轄のAU会館に案内した。果たして二人にはどんな訓練が待ち受けているのか?
本編に登場する主要キャラの一人『戦の申し子ベム』と『戦女帝』の師弟の絆を描いた短編外伝『ラピスラズリの夏の夜』を投稿しました。
ご愛顧頂けたら嬉しい限りです。




