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*完結* COYOTE   作者: Terra
Waning Crescent
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6




 アクセルと母が病院を出ると、キャシーが立っていた。父にソニアを任せ、その車で迎えに来ていた。

 母は一睡もできないまま事情聴取に入り、身体が石になっていた。後部座席を倒し、(ようや)く一息つくと、スイッチが切れた様に寝てしまった。



「何ともなかった!? 信用できるの!? そもそも、何であんな時に限ってデカい声出さないのよ!」



「出してたっつの! 何で誰も来ねぇんだって思ったさ!」



 当時は、家族の誰1人、庭での騒ぎを聞いていなかった。

 キャシーは困惑を浮かべながら、眼鏡越しに、皺ができた目を瞬く。




 車内が静まり返ると、アクセルは、なんとなく外に目を向けた。そうしている内に、景色の流れに乗って、記憶が引き出され始める。



「……なぁ、父さん来てるなら、ガレージにあるトロフィー、回収させようぜ」



「何なの急に。ガレージ片して何しようってのよ。スタジオにするんじゃないわよ」



「ああ理想だな。トロフィーがあるよりよっぽどいい。……違う、真面目な話だ。あんなもんがあるからかもしれねぇんだよ……」



キャシーは、弟にただただ首を傾げてしまう。弟が、父が狩って作った野生動物の装飾品を気にするなど、珍しかった。それらはガレージにあり、不都合はなかったため、家族は処分する事など考えていなかった。




 アクセルは、当時のコヨーテの騒ぎを思い出し、身体の冷えを感じた。また、狩猟をする父を想うと、鼓動が速まっていく。



「俺が会った奴が本当に、ハンターを狙うあの男だとしたら……」



 声低く呟く弟を見たキャシーは、後部席の母を振り返った後、声を落とす。



「……こんな事考えるべきじゃないけど、仮にそうだとして、何であんたが襲われんのよ」



 強張る表情をする姉を、アクセルは横目で伺い、はっとする。



「講師をしてたホリーって人は、どんな話をする人……?」



 それもまた珍しく、キャシーは耳を疑いながらも、淡々と答えた。



「私のカリキュラムや仕事は、犬や猫に纏わる事が殆どだった。だから講義のメインは、ハンティングの歴史に絡む犬の改良の話や、昔にどんなハンティングが行われていたかについてだった。例えば、弾を当てやすくするために、囲いに動物を集める方法。或いは、そこに仕掛けた罠で、わざと動物を宙に打ち上げて射殺するとかね。いかに楽に、簡単に仕留められるようにするには、どうすればいいか。そんな事が考えられていた背景があるって話よ」



 信号待ちになると、キャシーは指でハンドルを叩く。疲れていながらも、顔は、仕事や勉学に集中する時のそれだった。



「猟犬は、決まった獲物を追う事だけが許された。別の獲物を追いかけようものなら、それは飼い主の飼育の悪さが指摘される事に繋がったの。そういった犬は、すぐに処分された。酷い場合、その場でね」



 一呼吸を置くと、車が速度を上げていく。



「今じゃ考えられない話よ。だけど、今は今で、虐待してそのまま命を奪う人がいる。そういった事は、なくなるべきだと思う」










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サスペンスダークファンタジー


COYOTE


2025年8月下旬完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
こんにちは&お疲れ様です( ・∀・)っ旦 キャシーが言うように、何故アクセルは狙われたのか? 一度すれ違いで横切っておいて、アクセルの家に来たのは何故か? この前の話だと、不審者は誰かを探していたよう…
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