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*完結* COYOTE   作者: Terra
Waning Gibbous
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10




 車の進みは緩やかだった。目的地の近くまで来ると、アクセルは、パーキングに入るブルースと別れ、後の2人の元へ向かった。もうすぐ着くという連絡をジェイソンに入れるも、すぐの返事はなかった。




 歩いていると、電化製品ショップのテレビの前に、人だかりができていた。その後ろを通過しながら覗うと、あの失踪者の情報が再び大きく映されていた。騒ぎ声のせいで、アナウンサーの声は聞こえない。



「この内容も、WANTEDに変わりそうだな」



 飛び込んだ声に、アクセルは思わず足を止める。



「被害者が撮った動画から、本人だってのが濃厚らしい」



「奥さんの職業が職業だし、結局、夫婦で騒ぎを起こしたって事なの」



「とんだ動物愛護だな。夫を愛していられる理由がそれか」



 浅はかな考えだったのだろうかと、アクセルは、足先から冷たくなっていく。どんなに考えても引っ切り無しに捻じ曲げられ、疲労感が押し寄せた。目まぐるしい速さで、情報に幾つもの手足や羽が生え、移動してしまう。



「医者なら、動物に妙な薬を入れて襲わせたのか?」



「生き物を想うんだとすりゃあ矛盾だらけね」



 夫婦が持つ資格は、ちょっとやそっとでは取得できない。自分は、そんな重いものをまだ持った事はないが、この様な事態を引き起こすために、そこまでするのだろうか。



「罪を犯す奴の考えは分からんよ」



 心の問いに応えてくる様に誰かが呟くと、人だかりが散っていく。




 そこが空白の様になる頃には、別の番組に切り替わっていた。時間にして3分あったかどうかの内に、随分と胸を揺さぶられている。長く、深く考えた今までの時間は、ただ弄ばれていただけなのだろうか。



「今夜はピーナッツバターチキンカレーか、アックス。止めとけ、1週間は臭いが取れねぇ。シンクもそこら中ギトギトだ」



 振り返るなり、レイデンが肩に大きく凭れかかってきた。前髪をコーム付きカチューシャで綺麗に上げた彼は、不愛想な目で料理番組を眺めていた。



「いや、うちは大胆にローストチキンで攻める」



「ケツにブチ込むのがお好みとはな。気をつけろ、ハニーが驚くぜ」



 会話の方位磁針が狂ってしまうのも構わず、アクセルはレイデンの背中を叩くと、ライブハウスに向かった。

 ジャズのリハーサルの仕事を終えていたレイデンは、自販機の飲み物を買いに出ており、紫色をしたエナジードリンクを手にしていた。



「荒波が立ってる内は何も考えるな。どいつもこいつも、急に沸騰しちまう。動物の方が賢いぜ」



 呑気な様子ではあるが、しっかり情報を掴んでいる。レイデンは喉を鳴らしながら歩いていくところを、アクセルは早足に追った。



「被害者の行動があまり言及されないのは、どうかと思う」



 まるで子犬の様に忙しなく歩くアクセルだが、レイデンは気にも留めず大股で進みながら鼻で笑った。



「可哀想な奴等だ。教育の機会も得られねぇまま、見たモンに片っ端から飛びついて、てめぇだけ楽しむタイプは、碌なイき方してねぇ。俺等のダディを見習った方がいい」



 冷静沈着で警戒心のあるジェイソンを、レイデンはいつも称賛している。遠目でしか見た事がないが、ジェイソンのパートナーへの自然な振る舞いにはジェントルさがあり、3人にとっては羨ましい部分だった。








※WANTED=指名手配・おたずねもの情報



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サスペンスダークファンタジー


COYOTE


2025年8月下旬完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
お疲れ様です( ・∀・)っ旦 例の事件を視聴している人たちも、その事件に釘付けなんですね! 憶測や推測が飛び交うなか、アクセルも他人事ではないと再確認しているかもしれません! 家族や友人が、被害者にな…
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