『クラィング山を目指しての旅路4』
ちょい短め。
その姿に俺は目を奪われていた。
その青白い肌、背中から生えた大きな黒い翼、そして、口から滴り落ちてきた赤い血。見た目からして吸血鬼かと一瞬思うほどであった。
だが、この世界には吸血鬼は「存在しない」はずである。以前、好奇心から鑑定の能力を使い、いるもの、いないものを調べたことがあり、その時に「吸血鬼」はいないものであったのである。
そして、もう一つのことに気が付く。馬車のすぐそばには護衛として雇われていた冒険者たちが交代制の見張りをしていたはずが、そこには見張りの人がいなかった。
あたりを素早く見渡すと、近くの茂みのそばに足が転がっていた。
それは、人間の足で、そこから上は「ちぎれたように」なかったのである。
『警告!!魔法の発動を確認!!』
再び聞こえた世界の声の警告。見ると、その吸血鬼のような人が俺に向かって魔法を放とうとしていた。
素早く自身の体に「エンチャント」をかけ、素早くよけると、赤い光線が俺のいた場所に放たれた。
その光線が通った後には焼け焦げた地面が残っていた。
「ハクロ!アルテミス!スラ太郎!緊急戦闘態勢!」
身の危険を感じ、俺は素早く素早くハクロたちを呼び出した。が、反応がない。
(召喚ができない!?)
今までこんなことはなかった。その一瞬のスキを突かれた。
「ガッツ!?」
腹部に痛みを感じ、そのまま俺は数メートルほど吹っ飛んだ。どうやら飛び蹴りを食らったようである。
『代理鑑定を実行いたします』
お前そんなことができたの!?というかできるなら早くやってよ!!
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名前:バルゼン・アドラス・グリフォード(元)
種族:人間(現在鑑定不可能状態に陥っています)
MP:鑑定不可能
ATK:鑑定不可能
DF:紙
スキル:「黒魔石の力」「吸血の力」
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はぁ!?なんだこれ!?「黒魔石」が出ていることから考えると、あの化け物と同じようになっているようだけど、ステータス表示がいつもと違う!名前が残っているし、種族名も何とか出ている!いや、そんなことよりなんだよこの強さ!?
さすがにこれをまともに食らったらまずい。さっきの飛び蹴りはどうやらハクロが作ってくれたこの服の防御力で何とか耐えれたようだが、何度も受けるとまずい!!
素早くエンチャントで強化すると同時に、「バルゼン公爵だった」ものは攻撃を仕掛けてきた。
その晩、ハクロたちを呼び出せずに、死闘が始まったのであった・・・。
さあ、この話では珍しく主人公だけの戦いだ!!




