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閑話 とある男とハーピーの話

ちょっと過去みたいな感じ

  偶然道端に転がっているのを見つけたスイカサイズぐらいの卵。


 男は最初、何の悪意もなくただ普通にでかい鶏の卵と思って温めた。


 ヒヨコが孵ったら育てて、雄鶏だったら肉に、雌鶏だったら卵を産ませて商売でもできるかなと思ってである。


 だが、生まれてきたのはモンスターだった。それも、翼が黒いハーピーだ。


 三大伝説モンスター『黒翼のハーピー』の話のことを、このワポーンで育った男は知っていた。


 どうやら黒翼のハーピーはいつしか出産していたらしく、どこかの森のなかにあった巣に卵があったようだが、ハーピーが死んでからは温められず、そのままコロコロ割れることもなく転がっていき、男の手元に偶然たどり着いたのである。



 その事実は男は知らなかったが、黒翼のハーピーはとにかくやばいものだと男は思った。


 どうせモンスターだからここで殺しても大丈夫だと思った。


 だが、そのハーピーは男を純粋なまなざしで見つめた。






男は殺すのを止めた。いくらモンスターとはいえ、さすがに生まれたばかりの幼子のような視線がものすごくつらかったのだ。


 だが、ほおっておくわけにもいかない。


 しかし、男は冒険者でも、魔物使いでもなく、この国のただの農民だった。


 従魔として扱える魔物使いがいそうなものだが、この国の三大伝説モンスターの話は有名だ。


 下手にこの子を人目にさらしたら、黒翼のハーピーの再来だと言って討伐される可能性がある。


 



 男は、その子を近くの山に連れて行き、そこに身を潜めさせた。


 山ならば、木の上や茂みの中などハーピーなら身を隠せそうな場所がある。


 男はそこでひっそりと村の人にも内緒でハーピーの子を育て始めた。


 とはいっても、農民である男の懐は貧しい。


 だが、この子はどうやらモンスターなだけあって、山の獲物をしとめて自分で食力確保をしていた。


 時折男と遊び、そして仕留めた獲物を男に渡し、男はそれをさばいて町に行って売って金を稼いだ。


 おかげで、男の懐は少し潤った。生活に余裕ができ始め、ハーピーに服を買ってやれたりした。


 だが、金が手にはいると中には心が狂っていく者がいる。


 男はその者となった。


 これまで手を出していなかった賭博などに手を出し始め、荒み始めた。


 そのうち、男は美しく育っていくハーピーを見てふと思った。


 娼館にでも売れるのではないかと。


 ハーピーにしては体つきがよく、顔も悪くなく、見た目が美しい。


 だが、売ってしまえば今の獲物をもらって売ることができなくなるのでいつかは困ることになる。


それに、心が荒れてきたとはいえ、娘の様に愛情を注いできたこのハーピーを売るというのも・・・。



 そんな時であった。


 ある日、村にやってきた旅商人が、「願いがかなう壺」だとかいうのを持ってきたが、誰も信じて買わなかった。

 

 男としても半信半疑だった。なので、ちょっと使い方を聞いてみた。


 願いは叶うことは叶う。だが、それ相応の対価をこの壺に入れる必要があるらしい。


 男はふと思いつき、その壺を購入した。







 男はとある娼館に来ていた。男のハーピーをここでちょっと働かせてやれないかと聞き、黒い翼のハーピーだと驚かれたが、見た目が美しかったので、責任者は稼げるならと良いとして黙った。


 そして、ある日ハーピーの方に客が来た。男はその部屋に隠れていた。


 そして、ハーピーにあらかじめ言っておいた指示をだし、客の男を気絶させて、壺に入れた。大きさに関係なく入れられるようである。


 この時に、男が願ったのは「今の客の失踪がばれない」と言う事である。


 人一人分の対価のおかげか、ばれなかった。客が出てこなかったのに、なぜかもうここから出たということになっていた。


 それを繰り返して何度も試すうちに、男はハーピーがどうやらサキュバスに近い能力を持つことに気が付いた。


 そして、精気をハーピーが吸って、それを入れたほうが人一人入れるよりも効果が高いことに気が付いた。そのことで、男にはとある野望が宿った。


 男は農民なので、これまで勉強ということをしてこなかったが、計算の勉強を必死に学んだ。願いで代わりに計算してくれという手段が取れたが、まあ、これくらいは真面目にというちょっと残っていた性分であった。


 そして、計算の方法を良く学び、そこからあることの計算をした。


 人一人分の精気ににつき、どれだけまでの願いがかなうか。




 計算し終え、男は導き出した。男が計算していたのは、「このワポーンを自らの手中に」という願いの対価である。


念のため、間違いがないか願いで調べちょっと修正した。



男はその願いを叶えるため、ハーピーに精気を搾取させ、壺に入れ続けさせた。途中、圧縮したやつのほうがより効率が良くなることに気がつき、計算し直した。





ハーピーの方としては、父親の様な男のいうことなので聞いていた。


ただ、昔の男は優しく、頭を撫でて褒めてくれたりした。


しかし、今では己の欲のために、自分を道具の様にしか見ていない気がする。


だか、父親の様なものなので逆らいにくかった。


昔の様な、優しい人になってほしい。


だが、壺はハーピーの願いは叶えなかった・・・











 


 



「願いが叶う壺」

魔道王国にて失敗作の烙印を押された魔導具。

願いを叶えるのにそれ相応の対価を求めるが、次第に所有者の心を狂わせていくという副作用が判明したために廃棄処分される予定だった。

だが、開発者がもったいないと思い、廃棄されない様にと願ったら盗みに入られ、様々な経緯を通して旅商人の手にまで渡った。

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