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閑話 昔話

いつもより遅いですがすみません。

 昔々、あるところに一人の人間がいました。


 彼はとてつもない強大な力を持ち神々よりも強かったのですが、たまに人々の手助けのためにその力をふるう程度で、その力を別に誇示したりせずに穏やかに過ごしていました。


 そのうち彼自身のその心に()かれるものが集まり、いつしか彼を中心とした国が出来上がりました。


 さらに、当時から人々を襲ってきたモンスターの中には人々と同じように彼に惹かれて彼の従魔となるものが出てきました。


 その従魔たちは皆同じように強大な力を持ち、様々なモンスターを従えるようになった彼を人々は「魔物(モンスター)達の王」と敬意を示して呼び、いつの間にか「魔王」とされていました。彼自身はそう呼ばれても気にはしませんでした。


 従魔たちの中には、魔王に恋心抱くようになるものが出始めました。


 魔王はその従魔たちをも受け入れ、皆平等に交わりました。


 魔王は人間でしたのでモンスターと交わった場合はその子供はモンスターとなるはずでしたが、魔王自身の力とその相手の従魔の特徴を受け継いだ子供が生まれました。


 その子供たちは、普段は人とあまり変わらない姿なのですが、魔王のように魔法やモンスターとしての力を使う際に体の一部がモンスターのように変化したことから次第に「魔族」とも呼ばれ始めました。



 そのうち、魔族の数が増えてその国の人間は魔王だけになってしまいました。


 ですが、魔王は皆を平等に愛して皆が幸せに過ごせるように血のにじむような努力をいたしました。魔王は皆が大好きだったからです。


 

 ですが、力を持つ者に引き寄せられるものがいるということは、逆に寄り付きたくないものが出始めるという事です。




 魔王が気に食わない者たちが集まり、その者たちだけで国も作られました。


 その者たちは魔王のことを悪しき存在などと言い、その子供にあたる魔族に対しても差別をし始めました。


 魔王はできる限り自分で各地を回り、その考え方を捨てさせていくつかの国と平等に交流できるように何とかしてきました。


 しかし、魔王はもともと人間です。魔王自身の力があまりにも強大だったため、その影響で老化がとても遅かったのですが次第に魔王自身衰えていきました。


 次第に、差別をする人々も増えて魔王自身嫌になってきました。そのため、その負の感情が集まってその感情が彼にまとわりつきました。


 ですが、その負の感情は別に魔王を悪い方向へ向かわせるのではなく、魔王自身を守る衣へと変化していき、魔王の存在を保つためのものとなっていきました。


 そのため、魔王は寿命が尽きてもその存在を持ち続け、いままで以上に積極的に人々に働きかけました。


 

 しかし、人間のある国が勇者召喚とやらをし、その勇者とその呼び出した国が腐っていたため、魔王は念のために一旦人々と縁を切り、国そのものを別の場所に転移させて、その勇者召喚した国を避けて他の国々とまた魔族の差別や迫害を除くために活動しました。



 ある日、魔王はいつものように人々から魔族の偏見などを取り除くために活動して、疲れたので久し振りに家に帰ってきていました。


 その時、偶々(たまたま)魔王の弟がその家にいました。魔王の弟は研究者で、魔王の衣のように寿命が尽きても生きていられるような物を研究していて、その臨床実験を自らの身体に施していたことにより魔王のように生きながらえていました。


 ですが、完全ではなく次第に邪悪な心に飲まれていったのです。


 弟は、魔王と食事をとろうといいました。


 魔王は久しぶりだしと思い、弟と食事をとりました。ですが、その食事には弟によって研究の途中偶然できていた毒薬が含まれていたのです。


 魔王は次第に眠くなり、そのまま寝て帰らぬ人となりました。魔王の衣はあくまでその存在を保たせるものであって、毒に対しては無力でした。


 弟は、魔王を殺してその衣を奪い取り、寿命が尽きても生き永らえようとたくらんでいたのです。


 ですが、その企みは失敗に終わりました。魔王の衣は魔王と共にあったのか、魔王が死亡すると同時に消え去りました。




 しかし、この弟はそれではあきらめきれません。


 自らを次の魔王とし、代わりに国を乗っ取りました。そして魔族全員の力を使い、人々を恐怖で陥れてその恐怖の感情で同じような衣を作ろうとしました。


 念のために戦力がより必要だと考えた弟は、偶々近くに住み着いていたエンシェントドラゴンに下僕になって従えと言いました。


 弟は魔王の兄のように自分に簡単に従うだろうと思っていました。魔王だった兄には魔物が自然に従っていたのですから。


 しかし、あっけなく食われて死にましたとさ・・・・・。




 魔王と交わった従魔たちや、他にいた従魔たちはどうなったのかは誰にもわかりません。魔王が死んだ時以来姿を見せなくなったそうです。


 ですが、いつの日か魔王が復活した時・・・もしかしたら姿を現すかもしれません・・・・






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「・・・・そして、自分たちを愛してくれた魔王に再び従い、再び国に舞い戻るでしょう・・・・」



 黒魔石で改良しようとしたがそのアイディアに詰まった3人組は、偶然立ち寄って手伝うことにした孤児院の子供たちに魔族の国で昔から伝わっている昔話を話し終えたのであった。



「えー、そんな結末なのー?」

「もう少し面白い話をしてよー」



 孤児院の子供たちからしてみれば、面白みがなかったようである。


「あれー、結構面白い話だと思うんだけどな?」

「あはは、子供たちはもっとドキドキするような話が好きですからね」


 孤児院の園長は苦笑いをした。園長はこの話を単なる作り話と思っているようだが・・・・・。


「ま、とりあえず子供たちの相手もしたし、僕らは仕事があるのでもう行きますね」

「また遊んでやるYO」

「できれば次は絵本を持ってきてあげますからねー」


 そういって、三人組はその孤児院から去っていったのであった・・・・。




「・・・そういえば不思議に思ったところがあるんだYO]

「ん?何かあるかな?」

「魔族ってこうしてできたという感じなのはわかりましたけど・・・人間とモンスターが結ばれている感じなのに、その例として聞きませんよね」

「その辺は僕もわからないな。まあ、魔族の国で聞く話だけどそこ以外では聞かないからその例として出ないんじゃないかな?」

「モンスターと人間で魔族ってそんな簡単になるのかYO?」

「普通はないね。オークなんかの例でいえば生まれた子はオークといった具合になる。だけどね・・・多分この魔王の方に何らかの原因があったのではないかと思うんだよね・・・・・」



魔王ね・・・・・・

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