『3つ目の理由』
聞かれて困る話というより・・・
「では、3つ目の理由にはいろうか」
氷の部屋の中に入り、氷龍帝が3つ目の理由を切り出してきた。
「吾輩は龍帝の中の一体。龍帝とは、ドラゴンの中でそれぞれの属性に関して頂点に立つものをさす。それは知っているよな」
「ああ、はい。アルテミスから聞いて知っています」
「吾輩は氷系統に関しての頂点に立つ。それゆえ氷龍帝と呼ばれている」
「それも知っていますが・・・なぜ改めてそのようなことを?」
今さら感がある。
「この世の中にいる龍帝は9体。炎龍帝、水龍帝、氷龍帝、木龍帝、雷龍帝、土龍帝、聖龍帝、邪龍帝、そしてそれらの龍帝を束ねる神龍帝がいる。それぞれの名前からしてどの属性なのかはわかるだろう?」
「火、水、氷、木、雷、土、聖、闇はわかりましたけど・・・・神龍帝は何属性なのですか?」
言われてみると、意外に多いような気がする。龍帝はほとんど人前には出ないらしいが・・・。
「神龍帝はな・・・実は属性がない」
「へ?」
じゃあ、何で龍帝?
「というよりも、そもそもドラゴンでなくてもなれる地位なのだ」
「え?どういうことですか?」
「龍帝を束ねるのが神龍帝・・・要は、束ねられればいいと言うことでな、神龍帝の座が空いたときに適当に各龍帝からその候補を出して神龍帝を決めているのだ。その候補はドラゴン以外のモンスターや、亜人、そして人間からも選べる」
あ、なんかめんどくさい予感がしてきたぞ。
「それでな・・・今その座が空いていて、邪龍帝は現在行方不明だから仕方がないとして、他の龍帝はすでに候補を決めている」
「もしかして氷龍帝は・・・」
「ああ、決めておらん。そこで吾輩はゼロ殿を候補に、」
「お断りいたします」
即答。
「なぜじゃ?龍帝を束ねる神龍帝となれるチャンスじゃぞ?魔物使いとしてはある意味ものすごいことになると思うが」
「別に地位とかそういうのは興味はない。ただ、俺は普通の魔物使いとしていたいんだよ。従魔たちと家族のように過ごし、そのまま冒険者として仕事をしていく。ただそれだけを目標にしているんだよ」
「ぬう、まさか断られるとは・・・・だが、まだ想定の範囲内だ」
「え?」
と、思った瞬間に俺の視界は天井を向いていた。氷龍帝が俺を押し倒した形になっているような・・・
「ってなにやっているんですか!?」
「むろん、押し倒して既成事実を作ってやろうかと。そしてそれをネタに候補になってもらおうかと」
「なんでそんな思考になるんですか!?」
「いや~、その候補が見つからなかった場合罰ゲームがあって、それがえぐいのがあるから受けたくないんだよ」
そんな理由で!?
「安心せい、ちゃんと死ぬまで面倒を見てやるから」
「安心できないんですが!?」
逃げ出したくても、人化してはいるとはいえ龍帝。力が強くて逃れられない。あ、これまじでやば、
どがぁぁぁあん!
いきなり氷の壁が爆散した。
「主殿に何しようとしておるんじゃこのピーがっ!!」
「ぐぎゃっぼ!?」
そのままアルテミスが飛び込んできて、飛び膝蹴りを氷龍帝の脇腹に入れた。超痛そう。
「まったく、聞かれたくないとか言っておったのは最初からこれが目的で・・・」
「あ、アルテミスどうやって・・・」
「ん?主殿のマフラーにカトレアの盗聴器をつけておいたからな。それで内部の音声はすべて聞こえておったのじゃ」
いつの間に!?
「い、痛いじゃないか・・・」
脇腹を抑えながら青い顔をする氷龍帝。
「まったく、主殿に手を出そうとしたからじゃ」
「まあ、半分冗談のつもりだったんだけど、」
「『半分』・・・・ですか?」
「!?」
いつの間にか全員いた。
というか、みんな目が殺す目に見えるのだが・・・・怖っ!!
「いやその、なんというか、あの」
「ゼロ様に手をだそうとしたのが半分冗談ということは、半分はやる気満々だったてことですよね」
「イイワケハヨクナイヨー」
「これはゴーレムでつぶしたほうがいいですかね・・・」
「(# ゜Д゜)」
全員手をべきべき鳴らしているんですけど・・・・目が座っているんだけど・・・。リーゼに至っては、わざわざ防水性のボードをどこからか出して怒りの顔文字を書いているし。
その時、俺は氷龍帝の冷気よりもものすごい寒気を感じた。
「あの、吾輩氷龍帝」
「龍帝だろうと何だろうと・・・」
「主殿に手を出そうとしたのは・・・」
「ホントニ・・・・」
「許せないですよ・・・・」
「(# ♢Д♢)』」
皆がゆっくりと氷龍帝を囲む。
「ゼロ様、ちょっと目と耳をふさいでください」
その後何が起きたかはわからない。ただ、視界が戻ったときにはドラゴンの姿の状態でぼろ雑巾のようにボロボロになって土下座していた氷龍帝の姿があった。
みんな何やったの・・・・・・
何があったんだろう・・・・




