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適当に生きたいただの魔物使い(重要)ですがなにか?  作者: 志位斗 茂家波
スライム・スライム・エリクサー編
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閑話 カトレアの一日

カトレア以外の意外な事実も隠れています。

「ん・・・もう朝ですか」


 カトレアの朝は少し早い。ほぼ日の出とともに起きるのだ。


 以前は従魔用空間で寝ていたが、ゼロが家を手に入れてからはその自分に与えられた部屋で寝泊まりをしている。


 彼女の部屋はほとんどが植物で埋め尽くされている。そのため、夜寝るときには全植物が呼吸だけになって息苦しくなるのだが、彼女自身も植物に近いので気にはならない。


 朝起きると思に、日の光を浴びて光合成をする。


 見た目は艶めかしい大人のダークエルフの女性のようだが、それでもドリアードの性質的に光合成が可能なのだ。とはいっても、体全体で光合成をするわけではなく、足から生えて腰かけている木の部分でしているのだが。


 ちなみに、光合成があるので本来彼女は食事を必要とはしない。だが、味覚なんかも一応はある。そのため料理を食べるのもひそかな楽しみとなっている。森にいたころは木の実だったり、体を目当てに襲ってきたオークなんかの肉だったりしたからね。しっかり返り討ちにしております。焼いてもいます。


 その辺はね、寄生虫とかの心配があったからね。木の根の部分にでも住み着かれたらいやだもん。



 なお、この家の料理は今はワゼが行っている。ワゼ以前は交代制であったため、それぞれの特徴が現れた料理だった。この家全員の意見で一致しているとすれば、ハクロにだけは料理を作らせない方がいいという意見であるという事である。


 カトレアがゼロの従魔になったときにはすでにハクロがいたのだが、彼女が作るクッキーなんかはまだよかった。お菓子作りなら安全である。だが、なぜか料理を作るときだけは本当にやばいようなドジをするのである。砂糖と塩を間違えたり、焼き加減をみすって焦げたり、一度シチューを作っていて鍋を持ち上げたときにこけて、あつあつなのがゼロにかかったときがあった。あの時はさすがに全員が慌てた。


 あそこまで見事なドジをしているが、なぜか「メシマズ」とか言った称号やスキルはない。ゼロが鑑定いて何度も確認しているから間違いない。



 とりあえず、今日の朝食は和風定食とかいう物だった。ワゼの魔道具としてのデータとやらの中に記録されていたものらしく、ゼロが一番気に入っている物であった。こっそり写真を撮れるミニゴーレムでゼロを撮影して後で眺めているとかはみなには内緒であった。



今日は冒険者業をお休みする日らしく、全員が思い思いに過ごす日である。夕食までには全員家に戻るのは原則にしているけどね。


 カトレアはまず、地下に作っておいた工房に行くことにした。ここでたまに新しく新作のゴーレムなどを作るようにしている。溶接などはそれ専用に作ったゴーレムによる作業でできる。


 一応、服が汚れないようにここでは主に作業着という物を着ている。肌の安全のためにと思って買ったことがあるのだ。


 


 そこである程度作業をしたあと、後片付けをゴーレムに任せた。



 そのあと、昼前なので王都に行って昼飯でも食べようかと思って馬車型ゴーレムに乗って王都に入った。


 なお、普通王都に入るには、従魔は本来は魔物使いと一緒であることが原則である。だが、ゼロの従魔はどれも人並みの知性を持ち、見た目が近いためその辺は顔パスで済むようになっていた。彼女のスキルには「傾国の美女」・・・、意識しなくても異性を魅了状態にしてしまうものがあるが、意識をしてOFFにしてはいる。まあ、意識してもしなくてもその見た目から見とれる人が出るが。


 一応彼女はモンスターだからと考える男性が数多くいるが、それでも求婚したくなるレベルである。ゼロの従魔というのは知られているため手を出そうとする輩はいないが。ハクロと同じくらいのファンクラブがいるけどね。


 なお、木の椅子に乗って移動しているため彼女自身は歩いてはいないとも言えないような、木の椅子も彼女の一部だから歩いているといえるようなややこしさもある。


「今日はここにしましょうかね」


 カトレアが店に入ると、その姿を見ようとした人たちによって店があっという間に満席になった。ハクロやアルテミスの時と同じ現象である。


 そのため、ゼロの従魔が入った店は利益が上がると喜び、入らなかった店は嘆くということが起きてはいるが、これは知られていないのであった。


 従魔は食事したりしたら一応領収書をもらって、後日魔物使いに払ってもらうというシステムになっているので、基本お金を従魔が払うことはない。だが、ゼロの従魔は何かしらのことをしていたりして自分で金を作って払っていた。全員ゼロのことが大好きだからね。


 カトレアの場合はゴーレムの仕組みを売っているのである。とはいっても、馬車の乗り心地をよくする系統だが。あと、最近進化したことによって得た夢を見せるスキルで不眠症治療も行っている。


昼食の後、カトレアは適当に王都を散策することにした。新作ゴーレムのアイディア探しのためである。


 森にいたころは、そんなことはほとんど考えていなかった。だが、ゼロの役に立ちたいという心から作っているのである。


「ストーカー」という称号が付いていた時点でちょっと病んでいたような気がしなくもないが・・・・。



(鉄、銅、金、銀、・・・・)


 王都の市場(いちば)にもいって材料探しもする。スラ太郎の眷属たちの体の一部から同じものが取れるが、まず安全のためには試作品を作ってからというのがモットーであった。


 少し進むと、この市場(いちば)唯一の本屋の主人に声をかけられた。


「おや、カトレアさん。今日はいい魔道具本が入っているよ」

「そうなんですか。では、見せてください」


 彼女は一応魔道具にも興味があったのでそういった本も買っていた。そのため、本屋の主人とも仲良くはなっていた。ゼロたちが「スライムクラブ」を買うのもこの本屋である。この本屋は結構な掘り出し物が多い穴場でもあった。たまに呪われた本が混じるが。


 ちなみに、魔道具にも興味があるのは、彼女が製作できるゴーレムとも関係があるためである。


 ゴーレムはモンスターか魔道具かという議論が実はある。モンスターとして認識はされるが、人にも製作できるものがいるからである。そのため、その知識を生かして魔道具も作れないかと研究もしていた。


「これとこれをお願いいたします」

「あいよ、まいどありー」


 アルテミスと同じように空間収納が使えるので荷物運びの手間がない。そのスキルがあってよかったと思える瞬間でもあった。分厚い本だったからね。



 そろそろ時間的に家に帰ろうとした時だった。


「おい、そこの変な女。こっちを向け」


 何やら汚いような声が聞こえたので無視した。カトレアがモンスターだとわかっていないのだろうか?見た目がほぼダークエルフに近いのためわからなかったのかもしれないが。


「聞けって言ってんだよそこの女!」


 さすがにうるさいのでその方向を見たあと少し後悔した。野暮ったいようなでっぷりとした脂ぎったどう見てもかつらをかぶったおっさんがそこにいた。周りは護衛の騎士だろうか?どう見てもまたかという顔で疲れ切っている。


 なお、周りにいた人たちはその光景を見て恐怖した。おっさんが貴族だということにではなく、その声をかけた相手がカトレアだったからだ。カトレアがゼロの従魔であることはこの王都に住んでいる住民は全員が知っている。その従魔に何やらいやなことをしようとしているおっさんに早く逃げろと言いたくなったぐらいだ。どういう悲劇が起きるかが目に見えているからな。


 だが、おっさんは知らなかった。彼は8年ぶりに王都に出向いてきた、王国のはるか辺境の方にある領地を持つ辺境伯だった。しかも、金と女のことにしか興味がなく、ゼロの従魔についての情報なんて知らなかったのだ。これは彼の身から出た錆ともいえよう。他の貴族たちはしっかりと確認しているのに、彼は全くしていなかった。辺境伯、つまり、辺境にいたこともあり、情報が手に入りにくかったことも言える。


 そのため、おっさんはカトレアのことをたまたま見つけた極稀な上玉の女としか見ていなかった。


 その目線にも気づいていたのでカトレアはおもいっきり不快な顔をした。


「なんのようでしょうか?」

「おまえ、いくらで来る?」

「は・・・?」

「俺の女になるにはいくらがいいって聞いているんだ」


 明らかにカトレアのことを自分の欲望を満たすだけにしか見ていない。そうはっきりとわかりやすく感じ取れた。


「生憎ですが、私はあなたのような人と一緒にはなりません」


 はっきり言ってやった。内心「何言っているんですがこの豚が」と言おうとしたが、変な性癖を持っている人だった場合逆効果になりかねないのでやめた。


「な、このワシを誰だと思っているんだ!!辺境伯フミニ・トッタタ・クイブだぞ!」

「知りませんねそんな名前。それに、こうして勝手に人を買おうとするのは法律違反ではありませんか?」


 というか、確実に法律違反である。貴族のこんな行動をさせないために法律はしっかりと作られていた。


 だが、彼は自分の領地では結構好きかってやっていたためそんな法律は無視していた。


 そのため、そういい返されたことに怒った。


「黙れこの(自主規制)が!!いいからワシのものになれい!!騎士どもコイツを捕まえろ!!」

「・・・私に手を出すつもりですか」


 このとき、カトレアは思いっきり怒気を放出した。その気迫は見た目の美しさとの相乗効果で見るものすべてが背筋を凍らせた。


 忘れられがちだが、ゼロの従魔はAランクのリーゼを除いて全員がSランクの実力の持ち主である。もちろん、カトレアもSランククラス。昔、ゼロの従魔になる進化前には、その見た目からとらえようとした人たちを簡単に薙ぎ払える実力があるのだ。


「ひ、ひぃぃぃぃぃぃ!」


 護衛の騎士たちが悲鳴を上げる。彼らはおろかな主人とは違い、それなりに実力差が分かってしまったのだ。中には腰を抜かすものまで出た。


「な、何をしているんだ護衛ども!!相手はたかが(自主規制)ではないか!!」

「誰の従魔がそうだって?」

「それはあの・・・ってお前は誰だ!!」


 いつの間にかゼロがカトレアのそばに立っていた。彼は今日はローズとのデートをして、ちょっと時間が余ったので散策していたら、たまたまこの騒ぎに気が付いて来たのだった。


「ご主人!」


 カトレアは目を輝かせた。こんな汚らしい豚みたいな男なんかよりもゼロの方が比べ物にならないほど、いや、失礼なほどよかった。


「俺はゼロ、冒険者魔物使いだ」

「なぜ冒険者風情がワシに逆らう!!」

「冒険者風情ね・・・だったら何であんたは辺境伯風情でこんなことをしようとしたんだ?」

「な、何っ!?」


 このときのゼロのランクはS。実はこの時点で下手な貴族よりも力があるのであった。ゼロはそれを知ってはいたが、今まだあえて使っていなかった。権力をかさに着るような真似をしたくなかったからだ。だが、カトレアがこんな男に無理やりされそうなことに怒っていた。それは声からも読み取れた。


「く、おい護衛ども!!こいつをころ「遅い」」


 その瞬間、護衛たちは華麗に宙を舞った。ゼロがカトレアにアイコンタクトで指示して木の根を護衛の下めがけて上に飛び出させたからである。


「そこまでだ!!」

「だ、だれだ!!」

「あ、メタドンさん・・ん?」


 そこに現れたのはこの王都のギルドマスター、メタドンだった。が、ゼロが気になったのはそこではない。なぜか彼は子供の手を引きながらだった。2,3人ほどの男の子たちである。


「め、メタドンさん?その子たちは?」

「ああ、息子たちだ。今日は休暇をとってたまにはと思って一緒に親子でここを散策していたのだよ」


 カトレアも驚いていた。というか、この場にいたメタドンさんのことを知っている全員がこう思った。


((((妻子持ちだったの!?))))


 なお、彼は別居中である。察してくれ。



「えっと、そこの貴族!先ほどからのやり取りはすべて見させてもらったぞ!!」

「な、貴様は何者なんだ!!」

「はあっ?知らないのか?ここのギルドマスターだぞ」


 どうやらこのおっさん、その情報までも知らなかったような感じである。



「明らかにいくつもの法律違反を行っていたからな。現行犯で送検する!」

「な、ぬぅわぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃ!!わ、ワシを誰だと思って」

「余罪がまだまだありそうだな。下手したら貴族籍没収かもな」


 その言葉で完全におっさんは言葉を失ったのであった。


 おっさんはいつの間に来ていたギルド職員に連行されていった。


「あー、メタドンさんありがとうございます」

「べつにいいてってことよ。ここのギルドマスターとして仕事しただけだ」


 そういったあと、メタドンさんは子供たちとともにその場を去っていった。


「あ、あのご主人・・・来てくれてありがとうございます」

「何言っているんだ。お前は俺の従魔、つまり家族のようなもんだろ?家族を助けなきゃ誰が助けるんだ?」


 ゼロのその言葉と、先ほどの行動にカトレアは熱い鼓動が胸の中に再度なったのであった。





 まあ、いろいろあったものの、ゼロと一緒にカトレアは家に帰った。


 そのあと風呂に入って、ゼロの事を思いながら寝たのであった・・・。









ちなみに、おっさんはもちろん貴族籍剥奪となった。

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