『VSモー神』
今回は珍しく黒魔石の関与がないな。
電撃がはしり、俺たちはやられ、
「そうはいきませんヨ」
やられていなかった。
いつのまにかワゼの腕が変形し、パラボラアンテナみたいなものが出ており、そこから発生しているバリアーのようなもので俺たちは守られていた。
ついでにアルテミスも人化してバリアー内に入っている。
「わ、ワゼそんなことができたのか」
「ええ、戦闘も一応できますのデ。まあ、攻守同時にはできず、どちらか片方にしか集中しかできないんですけどネ」
つまり、片方に集中する分もう片方ができないってやつか。矛と盾の片方ずつしかないみたいな感じでいいのだろうか?
「まあ、どっちにしろ助かった。よくやったなワゼ」
「マスターのためデスカラ」
『ぬう、我が攻撃をしのぐとは・・・・だが、これならどうだ!』
モー神が右手を空にかざすと、その手に巨大な斧が握られた。
『神の一撃を食らうがよい!!「|粉砕波」!!』
げっ!?
技名からして衝撃波でも飛ばしてくるのか!?
『ぬぅぅぅぅン!!』
と、思ったら斧を投げてきました。って、冷静に考えている場合じゃないじゃん!!
「ワゼ!!もう一度今のバリアーみたいなのを」
「あ、魔力切れで出来ませン」
なんですと!?
「『ウッドマン』出てきて!!」
カトレアが叫び、ゴーレムの巨大な腕が斧を受け切った。
「ウッドマン」はカトレアが持つ最大級のゴーレム。しかし、あんまり目立った活躍はしていないため、これが初めてまともに戦闘した瞬間であった。
「カトレアナイス!」
「しかし、今のでゴーレムがまた壊れました・・・」
なんかホントごめん。何回も盾にしたりとかにしていて本当にごめん。
「ワゼ、魔力を再補充するぞ」
ワゼに起動時と同じように魔力を入れた。
「魔力満タンになりましタ」
「今度は全部攻撃に回してみろ」
「了解デス」
ワゼの腕のパラボラアンテナが引っ込み、今度は巨大な大砲のようなものが出てきた。そのまま反動に備えるためか、足が変形して地面に突き刺さる。
『ふん!どんな攻撃だろうともこの神を傷つけることはできんわ!!』
「それはどうですかネ。・・・魔力充填135%!!『魔道砲』発射デス!!」
一気に魔力が集中したかと思うと、ものすごいエネルギーの本流が打ち出された。
ドギュゴゴオッォォォォォ!!
『なに!』
さすがの自称神野郎のモー神でさえもこれには驚いたようである。そのままエネルギーがモー神の胴体をぶち抜いた!!
『がっつ!?この神の体を・・・!?』
腹に大穴が開きながらも、まだ生きているようである。しかし、自身の体に攻撃が通ったことに強いショックを受けているようであった。
「マスターからいただいた魔力を135乗にして打ち出す『魔道砲』デス。135%とか言っていたのは単なるノリなのデス」
えらく中途半端な値だな!!
「しかしすっごい攻撃力だな」
「マスターの魔力の分がありますからネ。1度撃つと加熱のために少し冷却しないといけないので続けては打てませんガ・・。それに、また魔力が切れまし・・」
あ、また固まった。どうもこれらを使うとすぐに魔力切れになるようだな。本分が家事の方だからか戦闘にはあまり向いてないのかな?でもこの威力・・これってさ、魔「道具」というより魔「兵器」だよね?なんかとんでもない奴ゲットしちゃったのかな・・・。
『ぐぬぬ・・・だが、この程度では我はまだ負けぬ!!』
腹に向こうが見えるほどの大穴が開きながらもしぶといな。生命力だけならアンデッドを超えているんじゃ?
『こうなったら・・・』
モー神が小さくなっていったかと思うと、そのまま向きを変え、神殿から走っていった。
「どこに向かう気だ・・・?」
「ん?あの方角はダンジョンでっせ?」
モウカリさんの言葉でそっち側にダンジョンがあるのを思い出した。
「ダンジョンなんかに行ってどうするつもりだ・・・?」
何かイヤな予感がする。急いで俺たちはそのあとを追いかけた。
「いた!!あそこだ!!」
追いかけていくと、モー神がダンジョンに向かって何か魔法を行使したようだった。というか、足速いな。
『ぬっふっふっふっふ、今頃来たってもう遅い。貴様らは神の怒りに触れたのだ!!』
何やら不敵に笑うモー神。腹に大穴があきながらも何か余裕あるその顔に警戒した。
「何をするつもりだ?」
『これが何かわかるか?』
魔法を行使し終えたモー神が掲げた右手には何かがのっていた。何か赤黒い球体・・・ん?
「まさか『ダンジョンコア』か!?」
『ご名答』
ダンジョンコア・・・前にダンジョン都市で見たことがあり、その容姿を覚えていた。
「なんやて!?つまりあの自称神はんはここのダンジョンから抜き取ったということかいな!?」
ダンジョンはコアがなくなると3日ほどで消滅する。それはまだいい。だが、なぜコアを抜き取ったのかがわからない。
『メイドの土産に教えてやろう。ダンジョンコアはダンジョンを形成するものだ。つまり、コア自体にはダンジョンを形成するだけの力を持っているということだ。そして、そのコアを我が取り込めば・・・』
「あ」
一気にコアをモー神は飲み込んだ。
飲み込んだ瞬間、変化が起きた。
『ぐ、ぐぉぉぉぉぉっつ!!きたきたききたぁぁぁぁぁ!』
「なんだ!?」
モー神の姿が変化していく。額にはダンジョンコアを思わせるような赤い宝石のようなものが付き、殻つきもよりがっちりと逆三角形に、顔は牛の頭からさらに化け物じみた者に変容していった。
さらに、1周り小さくなったかと思うと、そこで変化は止まったようであった。
『・・ふっ。力がよりあふれてきた・・・今のこの我こそが世界最高の神!!貴様らにもうこれで負けはせぬぞ!!』
自信満々により化け物と化した姿で指をさすモー神。腹に空いていた穴もふさがり、もはや筋肉の化け物のように見えた。だが、
『これでき・・ぬ?なんだ?か、からだが・・』
モー神が気が付くと、その体はだんだん膨張してきた。筋肉がより盛り上がり、手足や頭までもが飲み込まれていく。
「な、なんじゃありゃ・・・?」
『なっ!!体がいう事を聞かぬ!!おいこらからだよ!!我のこの最高神である我のいう事を聞け!!』
だが、どんどん膨張していく筋肉になすすべはないようであった。
「何が起きているんだ一体?」
「ふむ、主殿、おそらくじゃがダンジョンコアが原因じゃな」
アルテミスは何かわかったようである。
「どういうことだ?」
「説明は後にした方がよさそうじゃから、今はさっさと逃げたほうがよさそうじゃぞ?」
みると、どんどん筋肉の塊が膨れ上がっていた。
『おい!!誰か!!とめてくれぇぇぇぇ・・・』
モー神が助けを叫ぶも、その頭は筋肉の中に飲み込まれていった。
「全員この場から退避!!」
その掛け声とともに、俺たちはその迫りくる筋肉から逃げた。
「カトレア!!馬車人数分頼む!!」
「了解です!!」
人の足では逃げ切れない。そう判断するぐらいの筋肉の波が迫ってきた。
そのためカトレアに馬車型ゴーレムを出してもらい、それに走りながら乗った。止まっていたら飲み込まれそうだからね。
この場で一緒に逃げていた冒険者たちのぶんも旧型の馬車に乗せ、足りない分はハクロに糸で巻き付けてもらって俺たちは全力で逃げた。
何とか筋肉の波を振り切って、振り返ってみてみると今度は筋肉が溶け始めた。
「こんどはなんだ?」
どんどん溶けていき、最終的には消滅していった・・・。
「いったい何が起こったんだ?」
「おそらくじゃが、ダンジョンコアに耐えきれなかったのであろうな・・」
次回にアルテミスによる説明入りまーす。




