『コア変化』
今回はゴーレムネタやや多め
俺たちは今、全速力でゴーレムに乗って掘り進みながら地上を目指していた。
「まさか転送室の転送陣がダメになっているとは思わなかったな」
「おそらくですがすべてダメになっているのではないかと」
このゴーレムはもともと3つのユニットに分かれており、組み合わせによって変わるようで、今は1号機にカトレア、俺は2号機、アルテミスが3号機に座っていた。リーゼは乗っていたゴーレムの大きさから搭乗できずスラ太郎とともに従魔用空間へ、ハクロは縛り上げて引きずっている間にたんこぶだらけになった仮面の男と伯爵をわきに抱えながら俺の隣にいた。地上まで各階層をわざわざ進むよりは掘っていった方が早いからな。
体のサイズと人数的にかなり狭いが、まあこの二人を見張っとくためには仕方がない。というか、この仮面の男の仮面が外れないうえにかなり頑丈なんだが。この頑丈さは某剣士も見習うべきだと思えたぐらいだ。
「痛かったなぁ、もう少しうまく引きずれなかったのかい?」
「黙れ不審者」
そしてたんこぶだらけなのに結構ぴんぴんしていた。
「しかしこの様子だとおそらくすべての転送室がダメになっているだろうねぇ」
「なんでこんな状況になったのかわかるか?」
「おそらくだけど、黒魔石から出ていた黒い霧があるじゃん。あれがおそらく下に浸透していってダンジョンコアあたりにでも憑りついたせいじゃないかな?」
その可能性は一応考えることができていた。前に、洞窟がダンジョン化しかけていたし、デンジャラスボックスの件もあるため、理論上ダンジョン自体にも憑りつくことも可能だろう。
「黒魔石の本体が壊れてしまったことにより、本体の消失による自身の消滅を避けるために、コアにまで行った・・・、とでも考えられるかな」
「仮にコアに憑いたとして、そしたらダンジョンはどうなると思う?」
「・・・黒魔石は今まで人を怪物化させた。となると今度はダンジョンコアの怪物化か」
「その通り!さすがは今まで数々の黒魔石によることを解決してきたことはあるね」
「お前がやっぱ関わっているじゃないか!」
伯爵とのやり取りを見る限り、十中八九こいつがすべての黒魔石の元凶とみて間違いがない。
「ま、その話は今は置いといて、早く地上についた方がよさそうだよ?」
「あのー、先ほどからお二人がが話しているところ悪いんですけど」
「どうしたんだハクロ?」
「もうついてますよ?」
「え?」
いつの間にか地上についていた。見る限りダンジョン都市の一角であろう。
「いつごろから?」
『さっき、「仮に~」と言っていたあたりからです』
『その辺で地上についたのに主殿たちは話していて全く気が付いていなかったのぉ』
1,3号機からのカトレアとアルテミスから呆れた声がした。
「それを早く言えよ・・・」
「ゼロ様!!あれを見てください!!」
ハクロが何かに気が付いたようである。見ると、ダンジョン都市の空中に何かが浮かんでいた。
「ああ、あれがダンジョンコアだよ。黒い霧が付いているところを見るとコア自身が地上まで飛んできたんだね。まてよ、てことはあの音はダンジョンの断末魔でいいのか」
「ダンジョンからコアがなくなるとダンジョンは死ぬんだっけな。となると、ここのダンジョンはもう死んだのか」
「何か変化してきていませんかあれ?」
「「え」」
見ると、まとわりついていた黒い霧がダンジョンのコアに吸い込まれていった。
吸収した後、コアにすぐに変化が現れた。
突然コアから大量の水があふれ出てきた。その勢いはゲリラ豪雨よりもひどく、まるでナイアガラの滝かよと思うレベルで出てきたのだ。
そして、ダンジョン都市の範囲に水が止まったかと思うと、徐々に水位が上がってきた。
「なんじゃこりゃ!?ダンジョン都市を水没させる気かよ!!」
『まずいのぉ、このままではこの都市そのものが水の底になってしまうわい』
『ご主人、その席の右から3番目のボタンを押してください。アルテミスもです』
「これか?」
『これかの?』
ぽちっとな
その瞬間、一気にゴーレムが分離したかと思うと、それぞれの機体の並び方が変わって再度合体し、ゴーレムが水中専用の機体に変化した。
『これでこのまま水位が上昇しても動けます!!今のうちにコアを破壊して止めましょう!!』
「あのさ、今操縦権を誰が持っているの?こっちから全く動かないんだけど」
どうやら、このゴーレムは並び替えすると操縦権が変わるようである。
『あ、今我のようじゃ』
「じゃあアルテミス!!あのコアに接近して破壊しろ!!」
『了解なのじゃ!!』
いつの間にかついていた横のキャタピラが猛回転して、そのままコアに向かって進むのであった。
「って、キャタピラ音うるさい!!」
このゴーレム、まだまだ改良の余地がありそうである。
攻撃手段どうしよう・・・




