『交渉難航』
足クサ皇帝どんだけだろう・・・
モッセマンさんと皇帝陛下が停戦条約及び、捕虜の引き渡しについての交渉は長い時間続いた。
そのうち、足クサのにおいがきつくなってきたので、俺たちは許可をもらって城内の限られた場所のみをうろつくことを許されたのでうろつくことにした。
念のため、護衛兼交渉の終了の連絡係としてスラ太郎の眷属のスライムたちをモッセマンさんのそばにつかせた。
「ふぅ、本当に臭かったな」
『ええ、死ぬかと思いました』
『あんな臭い人間がいるとは・・・』
『クサイヨー』
『アンネルさんと同等、、もしくはそれ以上でしたね』
今は従魔たちは従魔用空間に入れていた。謁見の間を出た後、体調不良を訴えてきたためである。そこまでの臭いって・・・。
従魔用空間は異空間であり、そこならば体調不良でおう吐したとしても外に漏れることはない。というか、そういったごみなんかはどこかに消えるそうである。そう、まるで最初からなかったかのようにである。今更だけどこの従魔用空間って不思議だよなぁ・・・。
うろつくのを許可された場所は最初の城の入り口、一階廊下、中庭だけだった。
ま、別に城の中を観光しに来たわけでもないし、中庭にでもいましょうかねぇ・・・・。
中庭に着いて、俺は言葉を失った。
「中庭・・・ていうけどこれ広すぎじゃやん・・・」
外からは気が付かなかったが、空間拡張魔法でもかけられているのか、中庭は庭というよりも密林のような状態だった。
近くにいたメイドさんに聞くと、確かに空間拡張魔法がかけられていてたまに遭難者が出るとか・・。
遭難したくはなかったので、他にやることもないし、謁見の間に戻った。
戻ってみると、モッセマンさんと、皇帝陛下の交渉は難航しているようであった。
「ですから、今回そっちから仕掛けてきた戦争ですから」
「だが、こちらとてまだ負けを認めたわけではない!!」
「ですが、これ以上そちらが攻撃してきても余計な犠牲が」
「犠牲なくして国は栄えん!!」
結局、交渉は難航し、とりあえず今日のところは引き下がることにした。
いくら帝国軍が捕虜になっていようとも、ここは敵の本拠地。これ以以上食いついていたら確実に何かさえる可能性はあった。
城から出て、モッセマンさんは軽く怒っていた。
「全くなんなんですかあの皇帝は!!どんだけ自分たちが不利になっているのかわかっていないんですか!!」
モッセマンさんがここまで起こるのは珍しい。
「こうなったら青皇帝の何か弱みでも探してやりましょうかねぇ・・」
「なんかもう物騒なこと言ってません?」
「しょうがないでしょ!!こちらとしては最低限まで下げているというのに、これを受け入れたら負けたようで嫌だと一点張りなんですよ!!」
一応、こちらとしては停戦したいのだが、あちら側はあくまで勝利してこちらに勝ちたいらしい、
「でも変だな。何であんなにこだわっているんだろうか・・・?」
そう、変なのだ。いくら何でも帝国軍のほとんどを捕虜にされた時点で状況は不利だとわかるはずだ。なのに、いまだにこちらが有利だと思っているようなあの目つき。
『まるで、何かに憑りつかれておるようじゃのう・・・』
そう、まるで何かに憑りつかれているような・・・・、待てよ?似たような人がいなかったっけ?
「もしかして、黒魔石か・・・・?」
「つまり、皇帝陛下が黒魔石に憑りつかれているようなものだと?」
前にハグエェが暴走して黒魔石に取り込まれたことがあった。あの時は黒魔石の暴走前からハグエェが狂ったかと思っていた。だが、それは違うのではないか?黒魔石とはもしかして人を欲望に忠実にさせるのでは・・・。
『今度黒魔石が騒動を起こす国は・・・・』
あの仮面の男の言葉を思い出す。あの仮面の男の言うように考えると、次に黒魔石が出現するのはこの帝国だと。
そして、今まで黒魔石は貴族という身分が高い人たちのもとにわたっていた。
この帝国で身分が高い人が黒魔石を手に入れるとすれば、皇帝が一番あり得る話だった。
「待てよ、黒魔石が暴走したとき・・・・」
黒魔石が暴走していた時、それは何か強い感情がきっかけで暴走しているようだった。
もし、仮に皇帝陛下が黒魔石を持っていたならば。
もし、何か強い感情を出したら。
条件としては、今の話し合いも含まれる。
戦争に自信がありながらも、ほとんどが捕虜としてとらえられ、戦況が不利になり、先ほどのモッセマンさんとの交渉で感情が高ぶっているはず。
感情が高ぶって、もし、何か欲望を出したならば・・・あの黒魔石は暴走してしまうだろう。
ドズウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!!
「な、なんだ今の爆発は!?」
音がした方向を見てみると、そこには先ほどまでいた王城があり、そこには巨大な黒い怪物がいたのであった・・・。
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「あーやっぱりあの皇帝はだめだったか。感情の起伏が激しいのが原因かな?」
王城から離れた帝国の城壁の上。そこに、仮面をつけた男がいた。
「しかし、あの城を吹っ飛ばしてああなるとはな。あの城には確かメイドとして潜入したやつがいたっけ。ま、彼女のことだ。無事だろうね。それにしても、あの怪物を一体どうやって倒すかな彼は」
まるで映画でも見ているかのように、仮面の男はその様子を見ているのであった・・・。
今回の怪物は一味違うようだ・・・




