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『面倒ごとの予感』

アルテミス(ドラゴンの姿)に関して、気が付いた。どうやってゼロたちは乗り降りしているんだろう・・・。

 王都に戻り、奴隷商人たちを直接王宮に引き渡し、俺たちはエルフの村長とともにまた応接室で待たされていた。ちなみに、アルテミスに乗ったまま王都に降りてしまったが、以前の化け物騒ぎの際にもその姿を見ていた人たちがいたので、特に騒ぎにはならなかった。初めて王都に来た人たちは驚いていたようだが。


「久々にこの部屋に来たな。もうかれこれ1年ぐらい前だっけな?」

「なんと、ゼロ様はここに来たことがあるのですか。ああ、アルテミス様がいますからね。そのためですか」

「いや、アルテミスが従魔になる前にも1度来てるんだけど」

「ほう、アルテミス様がいなかったときにもここに・・・やはり只者ではなかったのですな」


 エルフの長老は驚いているようだった。ゼロ自身としては知らなかったが、この応接間に何度も入る人物は結構稀である。表彰式が行われているのは公の場になかっただけでも200回以上あったが、実はそれらの中でこの応接室に入った人物は数少なかったのである。それゆえ、そのことを知っているエルフの村長は驚いたのであった。


「おお、待たせてしまったなぞい」

「これはこれは国王様、お久しぶりです」

「エルフの村長殿も元気であるようだなぞい」

「国王様、お久しぶりです」

「ゼロ殿も半年ぶりぐらいだぞい。ローズが会いたがっていたから話が終わったら会いに行くがよいぞい」

「なんと、第2王女様ともお知り合いでしたか!!」

「その話は今は置いといて、その奴隷商人たちに関する話をするぞい」


 




 奴隷商人たちに関する話が終わると、国王は難しい顔をした。


「なるほど、貴族の中にもその奴隷商人から奴隷を買ったものがいるかぞい。しかも、帝国に大量の奴隷が集められているということかぞい・・。」

「はい、あのリストを見る限りかなりの数が帝国にもいっているようでした。おそらくですが、戦争を仕掛ける準備のためではないかと」


 リストにあった奴隷の人数のうち、大半がどうやら帝国に売られているようであった。


「わしの村のエルフたちもその中に含まれていまして、どうにも厄介なことになってしまったようで」


 エルフたちの村からこれまでさらわれたものも多い。奴隷にされてしまった者たちが帝国にいるのだ。また、あのエルフの村は帝国とこの国の間にある山のふもとにある。つまり、もし戦争なんかになれば同郷のものと戦う可能性だってあるのだ。


「むう、できれば戦争なんて避けたいぞいが、どうにもならないぞい」

「帝国側の情報が少ないですもんね」


 この国と帝国は一応敵国状態。商人が行き来する以外はほとんど国交がないのだ。


「おそらくなのですが、帝国側が戦争を仕掛けるとしたら2年後ぐらいになるかと」

「エルフの村長よ、どうしてそう思うのだ」

「距離が関係しているのです」


 すっかり忘れていたが、この国からクラィング山までは半年はかかった。帝国側からもあの山に行くには同様の時間がかかるららしい。つまり、あの山を越えてこの国の中心である王都に攻めるまでは最低でも1年はかかる計算になるのだ。


「時間がかかるため、もし今帝国を出たとしてもこの王都までたどり着くのには最低でも1年はかかる。往復で2年の計算。つまり、その間の帝国には国を守るだけの兵力がない。あの国は戦争の際にはすべての兵力を動員させますからな。そのない分を補うために奴隷を購入し、その間の守りにつかせる。しかし、その奴隷たちには戦闘経験が少ないものが多い。そのための訓練期間が最低でも1年はいる。そして、奴隷たちに守らせた後に帝国側から兵を出す。それだけの時間がかかるのだと思います」


 なるほど、戦争にはしっかりと訓練されている兵士たちすべてを使い、国の守りには少し訓練した奴隷を使うわけか。


「あの帝国がこちらに戦争を仕掛けるまでのその間、こちらも十分に軍事力をあげる必要があるわけぞいか・・・」

「でも、ゼロ様がこの国にいらっしゃるなら別にそこまで心配なさる必要はないのでは?」

「そのことなんだけどな・・・」


 できるだけ俺は国の戦争にはかかわりたくない。だいたい17歳になったらこの国を捨てて1国と同じ扱いにしてもらい、できるだけそれぞれの国とのかかわりを持たないつもりでいるのだ。それまでにどこかの国と争ってしまったら、その国と対立する原因となってすごいめんどくさいことになりかねないのだ。


「俺はこの戦争にはかかわりたくないんだよな。国は国同士でしてほしいと思っているからな」

「そういうわけなんだぞい」

「なんとももったいないというか、この戦争で手柄を立てればそれだけで栄誉がもらえるのに」

「あんまりそういう事には興味がないんだよな。これまでにも2回もらっているし、俺としては戦争中はどっかに引きこもっていたいんだよな・・・」

「なんともまあ、無欲なことですか・・・」

「でも、やっぱり今回は戦争になった場合は参加するわ」

「「えっ?」」


 だってローズがこの国にいるもん。婚約者として決められているが、何度もデートしているうちになんか引かれてしまったわけで・・・・。


「えっと、つまり参戦するということでいいのかぞい?」

「ええ、本当はあまり気乗りしませんがこの国にはそれなりに愛着がありますからね」


 恋のためとは言いにくい。


「そうか、それなら戦争になっても安心ぞい」

「とりあえず、今は情報収集をした方がよいかと思いますが」

「うむ、ならばそうするぞい。ゼロ殿、今回もし戦争があったときには協力を頼むぞい」

「はい」


 国王が部屋から出る前に、こそっと耳打ちをしてきた。


(ローズのためぞいか?)

(はい、本音はそうです)

(それはうれしいぞい。しかしいつになったらわしのことをお義父さんとよんでくれるぞい)

(婚約が発表されてからでしょ!!)


 国王のその言葉に少々呆れたのであった。あ、村長はこの話し合いが終わった後はすぐアルテミスに村まで送ってもらったからね。


 それにしてもなんだか面倒なことになってきたなぁ・・・。考えても仕方がないからローズのところへ行って今回の依頼での話でもしてくるか。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「そうか、あの魔物使いが戦争に参加するつもりか」

「はい、そのようです」

「なんとかして戦争になる前に会って話してみたいものだな。どうにかならないのか?」

「何とかなりそうです。ギルドに先ほど指名依頼を出してきましたのでそれでおそらくは・・・」

「よくやった!!褒美にあとでゆっくりその頭を撫でよう!!」

「ありがとうございます!!」


 帝国の城内にある1室でそんなやり取りが交わされたのであった。





 



次回、新章へGO!!

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