96 座敷わらしとロックチョウの卵 2
センターで岩鳥の巣の場所を調べると四か所ほど確認されていた。
同じ巣からは年に一個しかとってはいけない決まりになっていたが、ありがたいことにここ三年ほど誰も採取できておらず、卵さえあれば最高四個の卵を持ってくることが出来るかもしれない。
そしてタイミングよくこれからちょうど子育ての季節になるそうだ。
今日は一番近い巣へ行ってみることにした。この前風猿と争ったあの場所の先だ。
とりあえず岩鳥の縄張りには入っていない比較的安全だと思われる場所までやって来た。
ラトレルさんと十也とは一旦ここで別れて、これから私とネコとで巣まで近づく予定だ。
「ここからは妖精体で行く。二人は狼たち、とくに影狼に気をつけるんだぞ」
「そっちこそ気をつけてね」
「無理しないで、ダメだと思ったら合流地点にすぐ帰ってくるんだぞ」
今日はあえてウォーハンマーはもってきていないので、これからはスルスル山の中を進むことが出来る。
だいたいの方向をラトレルさんに教えてもらい木の上から猫に案内してもらいながら岩鳥の巣を目指した。
岩鳥の巣は切り立った断崖の岩場にあることが多いのでかなり起伏のはげしい場所にある。樹木が少なくなった場所に大きな渓谷があり、情報通り向こう側の岩場に岩鳥の巣があるのを発見。
一度こちら側を降りていかなければいけないのが面倒だったので、私は岩場から一気に飛び降りることにした。
妖精体でも重力に従い地上へ向かって私の身体は落ちていく。バンジージャンプってこんな感じか? なんてことを考ているとすぐに地面に到達する。
きれいに着地することはできず、私は何度かぼよーんとバウンドしてからようやく止まることができた。
上を見上げると、ネコはさすが猫だけあって岩場を簡単に下りてきている。
「童大丈夫ですか。結構すごいことになってましたよぅ」
「妖精体だったら、もっとフワッと落ちるのかと思っていた」
「我も無防備に飛び降りれば、たぶん同じようににゃりますけどねぇ」
今度は逆側を登らなければいけない。ネコを下で待たせ、ひとりで巣まで行く。
妖精体の今は、体重がないので足場になる場所さえあれば崖を登ることにまったく問題はなかった。
ロッククライミングをしながら巣までたどり着いてみると、そこには羽の生えそろった岩鳥のヒナが二羽いて親鳥の帰りを待っていた。
私より二回りも大きい。
卵は残っておらず、タイミングが少し遅かったようだ。仕方がないのでさっきと同じように巣からジャンプして渓谷の底まで下りて行った。
「また派手に転がってきましたね。そろそろ空飛ぶ練習した方がいいんじゃにゃいですかねぇ」
「練習する時間ができたらな。今回は空振りだ、急いで戻るぞ」
その日、岩鳥の卵は手に入らなかったので、帰り道にあるマイノ(魔猪)の生息場所で一頭捕獲してから町へと帰って行った。




