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73 座敷わらし、何者かの存在を知る

 実験は成功した。


 魔力の補充さえできれば十也も魔法が使えることはわかった。が、今のままでは実用的ではないこともわかった。


 何か他に方法が見つかるまで魔法は諦めるしかない。


 私が考え事をしている最中にエウリュアレ様が十也に近づき突然足にしがみついた。


「うわ、びっくりした。えっと……」


 驚いた十也がエウリュアレ様を見下ろしながらオロオロしている。


「あなた、他に人外の仲間はいるの」

「お楽とネコちゃん以外知り合いはいないですけど」


「そう、ならいいわ」


 エウリュアレ様はそう言うと、すぐに十也の足から離れ、顎に手をやって何か思案しているようだった。


「エウ何してるのよ。いきなりそんなことしたらダメなんだからね」

「わたくしに抱き着かれて喜ばない男はいなくってよ」

「変な言い訳しないで。ごめんね、トーヤくん」


「僕はかまわないから気にしないで」


 そう言いながらも十也の顔は引きつっていた。今は女児でも十也は本体を知っているから変な行動は本当にやめて欲しい。




「うーんとね。アドバイスって言っても私の場合は物心ついた時には当たり前に魔法が使えていたから、私が教えてもみんな全然わからないって言うんだよね。高度な魔法は呪文とか必要だって聞くけど、私の場合はいつもあまり何も考えてないよ。炎でろ、水でろ、風でろ『はあ!』ってやってるだけなんだ」


 私たちが孤児院から帰る際、フェルミとエウリュアレ様が表通りまで見送っくれた。


 十也とフェルミとネコが魔法の話をしながら歩いている。


「それ、ちょうど昨日試したばかりですよねぇ」

「うん。僕たちにはそれじゃダメみたい」


「ネコちゃんも妖精さんなんだよね? それでも使えない?」

「我は不才ですからねぇ」



 そんな三人の会話を聞きながら歩いていると

「あの子、何かに憑かれているわよ」


 私にだけ聞こえるようにエウリュアレ様がささやいてきた。


「え?」


 エウリュアレ様が歩く速度をゆるめ十也達から距離をとり始め、こちらへ来いと手で合図をしたので、私もエウリュアレ様にあわせてゆっくり歩き、話を聞くことにした。


「巧妙に隠されているから、正体はわたくしにもわからないわ。悪いものではないようだけど、そんなこと人間に告げたら気を病むでしょう。その何者かをお前が知らないなら、注意していた方がいいのではないかしら」


 結局何もわからないままだが、エウリュアレ様の助言は胸にしっかりと刻んだ。


 いつの間に十也がとり憑かれたのだろう。


 確かにこの世界には私たち以外にも人外が潜んでいてもおかしくはないのだが……。


 悪いものではないにしろ、そのままと言うわけにもいかないので、ネコと相談して今後のことを考えなければいけない。


 次から次へと頭を悩ませることばかりが増えていく。


 悩みすぎて禿げたらどうしよう。


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