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68 座敷わらし、魔道具屋へ行く 1

 十也の準備が出来たので三人で静水館に戻ることにした。

 ネコはうしろからついて来ている。


 治療のおかげで十也は杖がなくても普通に歩けるようになっていた。痛みは全くないそうだ。


 静水館の受付にベルナさんがいたので、十也に何か栄養があるものを食べさせて欲しいと伝えると、食堂へ案内され、すぐに野菜と肉が細かく刻まれた消化のよさそうな具沢山のスープを持ってきてくれた。


 ラトレルさんは食堂に入る前に『食べたらゆっくり休めよ』と自分の部屋のある二階へと上がっていった。


「私は仕事にもどるけど食べ終わったら器はそのままでいいからね。足りなかったらオラク君が厨房に声をかけてもらえるかな」


「ありがとうございます。スープすごく美味しいです。あと心配かけちゃってごめんなさい」

「そんなこと気にしないで早く元気になりなさいね」


 ベルナさんが食堂を出て行ってから私は食事をしている十也に話しかけた。


「私はこれから出かけるが十也はちゃんと寝ておけよ」

「え、もしかして狩りに行くの? 治療費がすごく高かったとか?」


「いや、治療費はもう支払った。今日は魔道具を見て回ろうと思っている。それに大蛇が規格外でかなり報酬が良さそうだから金の心配はない」


「それならいいけど。今の僕が言うのもおかしいけど気をつけてね」

「ああ、大丈夫だ」


 十也はスープ一杯で満足したそうなので、厨房にいると思われる相変わらず姿が見えない静水館の主に食堂からお礼を言ってから部屋に戻った。


 十也のことはネコに任せて私は以前ラトレルさんに教えてもらった町の魔道具屋へ行こうと思う。


 他にも店があれば回るつもりだ。


 出掛ける前に、最近はかなり霊力を使っているので念のため大銀貨一枚を奉納してもらっておいた。




 魔道具屋はセンターや貴族から魔道具の依頼が直接入りそれを主な仕事としている店が多く、安価で購入できる物も少ないので、看板をちゃんと出している店が少ない。


 一般人相手に商売をする気がないようだ。

 どうやら窓から覗いて変な物が並んでいる店がそうらしい。


 とりあえずこの前通り過ぎた魔道具屋に入ってみた。そこは髭もじゃの武器屋に比べたら広さが半分もない狭い店だ。


 壁際の棚に並んでいる小さな魔道具は何に使うのか全くわからなかったので、キョロキョロしながら見て回っているとカウンターに座っていた老人が話しかけてきた。


「気になる魔道具があったら儂が説明をしてあげるからこっちに持っておいで」

「触っても大丈夫なのか」


「そこに置いてある魔道具は試作で作ったガラクタみたいなものじゃから問題ない」

「ガラクタ? ――私は水差しを探しているんだが」


「お主が言う水差しとは、水を出す魔道具のことじゃろうね。ネオや、水と炎の変換筒を持ってきてくれ」


 老人はカウンターの奥へ声を掛ける。


 しばらくすると真っ白な髪をした十歳くらいの少年が金属製の筒のような物を二本、黒く汚れた手に持って店へやって来た。


 老人も髪が白いが白髪なのかもともとなのかはわからない。二人とも目が黄金色で、すごく薄いが緑の混ざった肌の色をしていた。老人の顔色が悪いのかと思っていたが少年も同じなので違ったようだ。


「あ、いらっしゃい。爺ちゃん、はいこれ」

「手も洗わずに持ってきたのか」

「そんなことしてたら依頼品の納期に間に合わないよ。お爺ちゃんも手伝ってよ」


「それではお前にためにならん。一人前になるには経験が多いほど良いのじゃ。あんな簡単な回路で弱音を吐いているようでは、ワシの技術は継がせられんよ」

「だったら徹夜して頑張るからいいよ」


 そう言って少年はまた奥へと引っ込んで行った。


「これは筒に属性変換の魔法図を組み込んだもので、水魔法が使えない者が水を生み出すための魔道具じゃ」


 そう言って私に直径が一センチ、長さ二十センチほどの金属の筒を渡してきた。


 筒の中は空洞で片側だけが塞がっていて、側面にはとても細かい青色の模様が入っている。模様の部分は少し浮き出ているので手触りはボコボコしていた。


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